医科栄養学・栄養医学ブログ

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アルツハイマー病(認知症)対策とビタミンB3(ナイアシンアミド)の効果について 日本ビタミンC研究会 栄養医学ブログ 藤井毅彦

2014-04-17 20:30:01 | 健康・病気

ビタミンB3(ナイアシン、ナイアシンアミド)は、以前はニコチン酸、ニコチン酸アミドと呼ばれていましたが、タバコのニコチンと間違うので、ナイアシン、ナイアシンアミドと呼ばれるようになりました。ビタミンB3は、米国やカナダの自然医らが、統合失調症の治療に用い、寛解作用を確認しています。そのビタミンB3が、認知症のアルツハイマー病の寛解に効果を有する、という研究が増えていますので、そのポイントについて考えていきたい、と思います。

ナイアシンアミドは、サーチュイン阻害とThr231ホスホtauの選択的減少を含む、アルツハイマー病の遺伝子移入マウス認知機能を回復させることが、カリフォルニア州立大学のGreen KN博士とSteffan JS博士らの研究グループで明らかになりました。この研究に続くいくつかの研究でも、同じような結果でした。

記憶喪失はアルツハイマー病のサインで、その始まりを予防したり、遅らせたりする治療法は、日本でも喫緊の課題となっています。ヒストンデアセチラ―ゼ(HDAC)阻害剤は、ヒストンのアセチル化を高め、記憶とシナプスの可塑性を高めます。Green KN博士らの研究によると、3xTg-ADマウスでのサーチュイン、あるいはクラス3のNAD(+)依存性HDACsの競合的阻害素であるナイアシンアミドの効果を評価し、症状に伴った認知機能の低下を回復させることを発見しました。

また、SirT1の阻害とよく似た方法で微細小管の解重合(depolymerization)に伴うtau(Thr231)の特異的ホスホ種を選択的に減少させます。そしてナイアシンアミドは、SirT2とMAP2cの一次性基質であるアセチル化アルファータブリンを劇的に増強します。なお、両者は微細小管の安定性の強化と結び付いています。

還元化されたホスホThr231-tauは、monoubiquitinと結合したtauの減少と関係し、この翻訳後の修飾されたtauは、急速に分解される可能性があります。in vitroでのThr231-phospo-mimic tauの過剰発現は、ワイルドタイプのtauと比べて、クリアランスの増強とtauの蓄積の減少をもたらしました。

これらの前臨床での発見では、ナイアシンアミドは、アルツハイマー病と他のtauの混濁化に対し、安全な治療法であることを示し、Thr231tauのリン酸化は、tauの安定性を調整する可能性を有することを示しています。これらの分子病態生化学的説明に対し、臨床での効果の蓄積が望まれます。なお、ナイアシンアミドの500mg/カプセルは、インターネットで米国から
栄養サプリメントとして、通販で入手できます。また、抗コレステロール薬との併用は、抗コレステロール薬の副作用を強めるので、禁忌です。長期大量摂取は肝臓障害を発症する可能性があるので、時々、肝機能検査が必要です。1000mg/日の摂取は安全ですが、5g/日以上の長期摂取は肝障害を起こすラインです。なお、これらに関しては、薬剤師、管理栄養士などナイアシンアミドに詳しい専門家に相談下さい。なお、ナイアシン(ニコチン酸)の摂取は、フラッシュ症状などの不快な副作用を生じるので、ナイアシンアミド(ビタミンB3)の方が使いやすいようです。更なる研究が待たれます。

References

Can niacinamide cure Alzheimer's desease? http://www. earthclinic. com. Jan 20,2014

Green KN ,Steffan JS et al: Nicotinamide restores cognition in Alzheimer's disease transgenic mice via a mechanism involving sitrtuin inhibition and selective reduction of Thr231-pphosphotau. J neurosci. 2008 Nov 5

Morris MC , et al: Dietary niacin and the risk of incident Alzheimer's disease and of  cognitive decline. J neurol Neurosurg Psychiatry. 2004 Aug;75(8):1093-9

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