医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

癌でのTNF-α対策とビタミンD3の作用について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2015-10-02 11:28:02 | 健康・病気

TnF-αの分泌過剰は、がんを始め、潰瘍性大腸症候群など自己免疫疾患の病態と関係しています。このTNF-αをうまくコントロールできれば、癌を始め難病に苦しまなくてよくなるのではと考えます。今回は、このTNF-αの制御と関係しているビタミンD3の作用を、外国の研究を参考に考えていきます。

Dadaei T博士らの研究によると、炎症性腸炎患者でビタミンD3を3か月間、総計50,000国際単位、経口摂取すると対照に比べ、血清ビタミンD3値が著しく高まり、血清TNF-α値も減少しました。これらの結果から、炎症性腸炎患者へのビタミンD3の補給は有益と、博士は考えているようです。

また、Kuo YT博士らの研究によると、ビタミンDの経口摂取は、喘息や自己免疫疾患の治療において、有益な可能性を有するけれども、法外な使用は、Th2アレルギー疾患患者では適切でない可能性がある、と博士は述べています。ちなみに、ビタミンDは脂溶性なので過剰摂取は副作用のリスクをもたらします。しかし、米国では、ガン患者に5,000国際単位/日から10,000国際単位/日を経口摂取させている医師もいるようです。2,000国際単位/日ぐらいまでは、腎臓や肝臓にトラブルを抱えていなければ安全と考えますが、医師、薬剤師、管理栄養士などビタミンDに詳しい専門家に相談下さい。

次に、Golovko O博士らの研究によると、ビタミンDとTNF-αは協働して、前立腺ガンにおける癌細胞の増殖のコントロールにおいて、重要な役割を演ずる可能性があると報告されています。かように、ビタミンDはTNF-αの働きや分泌過剰に関係していることが示唆されます。また、ミズリーコロンビア大学のLatherine A Peterson博士らの研究によると、健康な婦人では、血清TNF-αの濃度は、血清25(oH)D濃度と負の相関が有り、そのことは、ガンや潰瘍性大腸炎症候群など炎症性疾患の予防と治療におけるビタミンD3の役割の説明に、インパクトを与える可能性が有ります。そして、これらの疾患への最適のビタミンD3の状態を決めるための、生物学的基礎を再検討する必要性があります。どの程度のビタミンD3の量が、TNF-αを最適にコントロールできるかが今後の課題です。更なるロングスパンの研究を期待しています。

References
Gatherine A Peterson et al: SerumTNF-α concentrations are negatively correlated with 25(oH)D concentrations in healthy women. journal of Inflamation.2008.5:10
Golovko O et al: VitaminDーinduced up-regulation of TNF-α in prostate cancer cell. Life Sci.2005 Jun17
Kuo YT et al: Effect of vitaminD3 on expression of TNF-α and chemokines by monocytes. J Food Sci.2010 Aug 1
Dadaei T et al: Effect of vitaminD3 supplementation on TNF-α serum level and disease activity indexin Iranian IBD patients. Gastroenterol Hepatol Bed Bench. 2015 Winter,8(1):49-55