パーキンソン病については、薬剤が開発されていますが、歩行障害や転倒に対する効果は、報告されていません。今回はPierre et Marie Curie大学のChantal Francois博士らの研究のポイントを紹介し、それについて考えていきたいと、思います。
パーキンソン病の症状の多くは、ド―パーミンをターゲットとした薬剤で軽減することはでき、その薬剤は、脳の神経細胞の伝達作用を有します。しかし、そのような薬剤は、パーキンソン病の重篤で、進行した形を伴った患者に見られる歩行障害と転倒を改善しません。
Chantal Francois博士らの研究によると、パーキンソン病患者の歩行障害とパーキンソン病に罹った、年老いた猿での歩行障害は、pedunculopontine nucleus(PPN)として知られている、脳の領域の神経伝達物質アセチルコリンを産生する、神経細胞の消失と結び付いていることを、確認しました。これと同じく、これら神経細胞の消失は、猿に歩行と姿勢の障害をもたらしました。
PPNのアセチルコリン産生神経細胞をターゲットとすることは、パーキンソン病の患者の歩行障害や転倒を軽減する方法を提供できるに違いないことが示唆されます。このアセチルコリン産生神経細胞の賦活をもたらす天然物質の検索が、いろんな研究機関で行われており、期待されています。なお、現在、ビタミンB6,ビタミンB12,葉酸、ビタミンD,ビタミンC,それに、グルタチオン、Q10などの併用療法が、パーキンソン病の栄養療法として、米国で臨床に用いています。
References
Parkinson's.New clues to alleviating gait disorders and falls: ScienceDaily. July 26, 2010
Carine Karachi et al: Cholinergic mesencephalic neurons are involved in gait and postural disorders in Parkinson disease. Journal of Clinical Investigation,DOI:10.1172/JC142642