グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

ウミガメとジオパーク

2016年11月24日 | 海の生物
大島で20年以上ウミガメの保護活動を続けている成瀬氏から連絡をもらい、今年は2回、ウミガメの産卵巣調べを見学しました。

1回目は10月19日、“砂の浜”(さのはま)の南側で。


母ガメは、台風でできた3m位の急斜面を上がって卵を産みに来たようです。


成瀬さんはいつものように、集まった人達にカメについて説明をし、穴を掘って孵化率を調べていきます。


ウミガメが産卵する砂の色は、かなりバラエティに富んでいるようです。


卵のサイズは、これぐらい。


子ガメが無事巣立った後の卵もあれば、亀の形にまで育たなかった生卵の状態もあり…


卵の中で死んでしまっている子ガメもいました。


生き残っていた子ガメは数匹。

ヒレと目が大きくてカワイかったです(^_^)

日没間際、子ガメが自力で海に泳ぎ出すのを皆で見守りました。

この日は1匹が何度も何度も波で戻されて、みんななかなか帰れませんでした(^_^;

2回目は11月3日、“砂の浜”の北側で。


今年最後の産卵巣調べです。


この日は目が見えない白い子ガメが1匹、出てきました。

成瀬さんも初めて見るとのこと。

ちょっと動きが弱いけれど、でも頑張って仲間に混ざってヒレを動かしていました。


そして子ガメたちは、日没ギリギリに海へ。


この日の子ガメたちは少し元気がないのか、何度も何度も波で元に戻され、なかなか海に泳ぎ出せませんでした。


「あ〜!また戻って来た!」という声と共に、なかなか立ち去れない我々(^_^;

結局、日没後、暗くなるまで見守りました。

今日巣立った子ども達が無事に大きくなって戻って来ることは、ほとんど無いかもしれません。
でも…子ガメ達は生きるために大波と戦って、さらに大きな試練の待つ大海原へ旅だって行きました。

成瀬さんから、ウミガメについて聞きました。

「今年のウミガメ産卵回数はアカウミガメ3回(2巣は台風で流出)、アオウミガメ4回の合計7回。今まで大島では、年ごとにより違いがあるが、年0〜11、12回産卵している。1頭の母は3〜4年毎に生むらしいが、生んだ次の年にくることもある。産卵期間の2〜3カ月はあまり食べずに卵を産み続けるので、かなり体力を使うのだろう。1頭の亀が1年に6回生むこともあるらしい。
 亀は気に入った海岸で生む習性があり、それが生まれた海岸なのではないかと言われている。子亀が海流に乗って回遊しやすくするため、海流が早くなるあたりで卵を産むと言われ、北太平洋でウミガメが産卵するのは日本のみとなっている」

「伊豆大島では、沢の砂防が進み、砂が海に供給されなくなったため、“砂の浜”の砂もどんどん減っている。砂浜の浸食を防ぐため、地曵浜などでは砂の流出を防ぐ目的で水中に潜堤(せんてい:水面下の離岸堤)を入れたが、減りにくくなった分、台風などの大波で一度砂が外に出てしまうと戻って来られず、結局砂浜がなくなっていく…ということがおきている。
 この“砂の浜”も、筆島海岸や地曳浜(湯の浜)のように、潜堤(せんてい)やコンクリート護岸を造る計画があった。皆さんに自然な砂浜の貴重さを知って頂き、時々足を運んで下さればと、巣穴しらべ(産卵巣調査)を公開している。卵のカラや死んだ子ガメばかりでは、来ていただけないので、子ガメが少しだけ残っていると思われる日を選んで、巣穴を掘る。なので当てが外れて子ガメがいないこともある。
 研究者が推奨している巣穴しらべ(産卵巣調査:孵化率・脱出率の調査)は、巣の中で死ぬべきものは死に、自力で脱出するものは脱出し終わった段階で調査をする。それが、本来の正確な孵化率・脱出率になるのだが。
 多くの方々に自然環境の大切さ、ウミガメの産卵に静かさや暗さが大切なこと、人工構造物がない貴重さ、もっと言うと、砂が波や風によって自然に移動する大切さ、などなど、実際に砂浜へ来て体感し共有して頂けたらと思う」

成瀬さんの話を聞いていて改めて、亀のことも、砂浜のことも、知らないことがたくさんあると思いました。

地震や噴火が作った安全とは言えない地面の上で、多くの生きものたちが暮らしている日本。人間の暮らしや命を守りながら、できる限り幸せに、他の生物と共に地球の上で生き続けることができるように、私たちは様々な角度から学び続ける必要があると思います。

何度かの討論を重ね最近まとまった『伊豆大島ジオパーク基本計画』には、以下の文章が盛り込まれています。

「伊豆大島ジオパークでは、地球活動をよりよく理解し、私たちが地球上の全ての生きものと共に安全に平和に生き続けることを究極的なテーマとして、活動を行います」

この言葉を皆で共有しながら、進んでいきたいなぁ…と思いました(^_^)

(カナ)
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