グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

ウミガメ(伊豆大島の動物シリーズ7)

2020年07月07日 | 海の生物
1年以上前になる、ジオガイド養成講座「伊豆大島の動物」の内容を、少しずつ掲載しているこのシリーズ、7回目は「ウミガメ」です。

まずは講師をしてくれた天野氏の講習資料より。
「海棲爬虫類としてはウミガメ類がある。アカウミガメが毎年数個体上陸し産卵するほか、島の周辺海域ではほぼ周年アオウミガメが観察される。また数年に一度アオウミガメの上陸、産卵も確認されている。以前は小笠原諸島が上陸産卵の世界的な北限だったのを更新したことは特筆すべきことであろう。また数は非常に少ないが、亜熱帯海域を主な生息域とするタイマイも目撃例や混獲例がある。
しかし、伊豆大島のウミガメの産卵場所としての問題は多く、砂浜の減少により産卵巣に大波がかかる、また異常な猛暑により卵が死ぬ、孵化しても照明による誘引など無事に孵化して海へ帰れる仔ガメが年々少なくなっており、懸命な保護活動が展開されている。」

以前ブログにも載せましたが、私自身も過去に1回、ウミガメの産卵シーンに出会っています。

(2013年7月13日撮影)

伊豆大島でウミガメの保護活動を25年も継続しているのが「みどりの地球大好き会」のメンバーの皆さんです。(農林水産総合センターに協力しての調査・保護活動とのこと)

(2016年11月24日撮影)

ウミガメの産卵時期には砂浜を巡回し、カメの上陸痕跡を確認すると掘って卵を確認し、また埋め戻して保護柵をします。
子ガメが自力脱出したのを確認すると、その後の調査日に私たちに声をかけてくれます。

なので私たちは、調査の経過を見守り…

(2016年11月3日撮影)

運が良ければ、巣に残っていた子ガメたちががんばって大海原に旅立っていくのを見ることができます。

(2013年9月1日)

今回は、中心となって保護活動をしている成瀬氏からも、文章を寄せてもらいました。

「年により違いがあるが、アカウミガメは、年0〜11、12回、アオウミガメは、年0~5回ほど産卵している。ウミガメは産卵に成功した海岸に再び産卵する習性があり、それが生まれた海岸なのではないかとする母浜回帰説があった。これは、近年の遺伝子などの調査によって、ある地域を選択している個体群があることは分かっているそうだ。広い地域での回帰があるということらしい。
現在、北太平洋でアカウミガメが産卵するのは日本列島だけだという。地球の自転と黒潮の流れる方向が重なり、この列島の位置は海へ泳ぎ出した子亀をより早くより遠くへと拡散させるのに適しているそうだ。」

成瀬氏の文章は続きます。
「伊豆大島の砂浜は、溶岩やスコリアなどが砕けた砂で出来ている。その砂を山から砂浜へ運ぶ役割をしているのが沢である。大島の沢は涸れ沢であり、普段は水の流れが見えない。元町の弘法浜には大金沢があり、湯の浜には八重川と佐久川が、間伏の砂ノ浜には宮の沢がある、というようにどの浜にも沢(川・谷)があり砂を供給して砂浜を造って来た。近年、どの砂浜も砂の減少が顕著であり、沢の上流部の砂防堤などで砂の流れを止め過ぎたことが要因のひとつと考えられる。砂浜を残すには砂の流れを回復させるために砂防堤の改良が望まれる。
 砂浜を波の浸食から防ぐ目的で、筆島海岸と湯の浜(地曵浜)には潜堤(せんてい:水面下の離岸堤)が設置されたが、荒波で砂が潜堤よりも沖に出てしまうと戻って来ず、砂浜の砂が減っていく(上流部で土砂崩れのあった湯の浜では、一時的に砂の増加が見られた)」
 ウミガメの産卵地としては、砂浜を取り巻く背後地の自然の豊かさ、静けさや暗さが大切なこと、人工構造物が少ないこと、波や風によって砂が自然に移動して浜が浄化されていることなど、いろいろな要素がある。大島にはこんなに貴重な自然が残されていることを再認識させてくれる。ウミガメが自然度を測る指標生物といわれる理由でもある。地域の皆さんに砂浜へ出て体感して欲しくて『ウミガメの巣穴しらべ』を公開している」

調査まとめなどは「モニタリングサイト1000」で見られるとのことです。

25年と言う長い年月無償で活動を続けてこられた人々の存在と、ウミガメが産卵できる砂浜がまだ存在することは、伊豆大島の宝だなぁと思います😊

ところで今回のブログをまとめながら、ウミガメが大島の砂浜に卵を産み続けてくれるか気になって、色々調べ始めました。

島以外では砂防が砂浜の減少に関係があるという資料がある一方で、大島の間伏海岸では砂の減少が止まっているという論文もありました。

このことについては、もう少し勉強して、まとめたいと思います。

(かな)
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