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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 647 週間リポート ②

2020年08月05日 | 1976 年 



近鉄バファローズ:目的はプレーオフ観戦だが
来季の戦力アップを目指す近鉄が現役大リーガーの獲得に動き出している。中島スカウト部長は10月4日夕刻、羽田発の日航機で渡米した。表向きは9日から始まる大リーグのプレーオフの観戦・視察となっているが、実際は新外人を探すのが目的とされている。現在はジョーンズ選手とロリッチ選手ともに残留させる方針だが正式には決定していない。中島部長が現地で目星をつけた選手と交渉して獲得の目途がつけばドラフト会議後の11月下旬に再渡米して正式契約をする算段だ。そうなった場合、本塁打王のジョーンズは残留、ロリッチは解雇となる見込みである。

監督契約を延長した西本監督の受諾条件に❶右の強打の外野手 ❷内野の要となる野手 ❸投手陣の強化 が含まれていた。補強の中心はドラフトやトレードだが、不発に終わった場合は外人に頼らざるを得ない。もともと得点力が不足しているうえに小川、伊勢らベテラン選手の衰えが見え始めて特に後期は苦戦を強いられた。そこでジョーンズと並ぶ大砲がなんとしても求められる。しかし昨今の現役大リーガー獲得は以前より厳しくなっている。というのも大リーグは来年から2球団増える為に選手の争奪戦が勃発している。日本で活躍している各球団の外人選手にさえ触手を伸ばしているのだ。

だが山崎球団代表は大リーガー獲得を認めない。「中島スカウトの渡米は前回(6月にも渡米している)のお礼やプレーオフ見学が目的です。外人選手と交渉する予定はありませんし、ジョーンズ選手とロリッチ選手は残留の線で交渉中です。仮に新たな外人を獲得するとしてもウインターミーティング後でしょう」と言うが、この時期に渡米する理由は新外人獲得以外あり得ない。山崎球団代表が本音を明かさないのは前回の渡米で情報が洩れて交渉が上手くいかなったことが原因と思われ、再び獲得に失敗したら責任問題に発展する可能性が高いからだ。球団フロント幹部の一人は「阪神のラインバックやブリーデンみたいな選手が見つかるといいな」とオフレコを条件に話したという。


日本ハムファイターズ:俺の相手じゃ軽すぎたぜ!
大沢親分がまた退場処分された。24日、川崎球場での対ロッテ戦の1回裏のロッテの攻撃中、日ハム先発の新美投手が投じた球の判定を不服として中村球審に抗議をしている際に右手で小突いて中村球審を転倒させてしまい退場となった。大沢監督の退場処分は6月17日の阪急戦(後楽園)に続き二度目。この時は竹村投手のビーンボールまがいの投球に激怒し竹村の頭をポカリと殴り、罰金と7日間の出場停止処分を受けた。1シーズンに監督が二度の退場処分を受けるのは昭和28年の藤本定義監督(大映)以来、23年ぶりの出来事だった。

今回の退場劇の発端は単純そのもの。新美投手がロッテのラフィーバー選手に投じた球をボールと判定されたこと。だが伏線はあった。初回、日ハムの攻撃で一死三塁でウイリアムス選手の時に高目の球をストライクと判定されウイリアムスは不満顔。三塁コーチスボックスにいた大沢監督は何も行動しなかったが、ウイリアムスが打ったサードゴロで飛び出した三塁走者はタッチアウト。更に打者走者のウイリアムスも微妙なタイミングだったがアウトでダブルプレーとなり攻撃終了。大沢監督の抗議は5分間に及んだが判定は変わらずイライラが溜まっていた。「試合開始早々、三度も微妙な判定でしかも全てウチに不利。やってられんよ(大沢監督)」

「手を出した行為は反省するが倒すつもりはなかった。ちょっと押したつもりだったけど、あの人(中村球審)が軽すぎて吹っ飛んじゃったんだ」と弁解するが二度目だけに周囲の声も厳しさを増している。 " 親分 " と呼ばれるくらい血の気が多いのだろうが、面白いのは親分のピンチに選手はあまり奮起せずこの試合を落としてしまった。これには大沢監督も計算外だったようで「三度目は無いよ」と反省しきり。余談になるが大沢監督不在の間は鈴木コーチが監督代行を務め、6月の出場停止期間中を含めて2勝1敗1分けと重責を果たした。


太平洋クラブライオンズ:一振りで決まった首位打者
過保護とか甘やかし過ぎとか周囲からいろいろ言われながらも「首位打者のタイトルをヨシ(吉岡)に獲らせたい」と鬼頭監督は自分自身が首位打者争いの渦中にいるかのような張り切りぶりだ。昨季は同じくライオンズの白選手が江藤前監督の温情?で首位打者をゲットしているが、同じ温情でも白の場合が規定打席数ギリギリの403打席に達した時点で出場しなくなった末に掴んだタイトルだったのに対して吉岡選手は既に20打席も上回っているのだから堂々と胸を張っていい。

それにしても厳しく長い戦いであった。つい10月の初旬までは打率3割を境に3人の選手が僅か1厘2毛差でひしめき合う大激戦だった。なんとか終わりが見え始めたのが前節の近鉄戦2試合を欠場した後の対南海11回戦(平和台)に先発出場した吉岡が2打数1安打で競争相手の門田選手・藤原選手(ともに南海)に水を開けてトップに躍り出た。この試合は既に阪急が前・後期完全優勝を決めた後のいわば消化試合だったが、首位打者争いを見にデーゲームにも拘らず四千五百人もの観衆が詰めかけた。

この試合で鬼頭監督は吉岡を通常の一番から九番に下げた。「相手(門田・藤原)の打席の結果を確認してから打てるから(鬼頭監督)」だそうだが奇策は見事に功を奏した。どうせ吉岡は近鉄戦に続いて出場しないと考えていた門田は動揺したのか一死一・三塁の場面で古賀投手の内角球に中途半端なスイングで併殺打。二打席目も一死満塁の場面でフォークボールに手を出し空振り三振に倒れた。なんとも間の良いことに吉岡に最初の打席が回ってきたのが門田が二度凡退した直後で、気が楽になった吉岡はボールカウント2-2からの5球目を右翼線に二塁打を放った。

「一振りで決まっちゃったね」と試合後の吉岡はウィンクをしてご機嫌だったが、こんな当たりが出たのも鬼頭監督の奇策のお蔭であろう。吉岡は第二打席で右飛に倒れるとお役御免となりベンチに下がった。対する門田は何とか挽回しようとその後も打席に立ち続けたが結果は5打数無安打に終わり、吉岡との差はさらに広がった。門田はその後、大阪球場での試合で安打を放ち何とか首位打者のタイトル奪取を目指すが吉岡とは9厘差の3位、藤原が7厘差の2位だった。優勝や順位争いと関係がなくなったから出来た鬼頭監督の奇策だったが、来年はそんな奇策なしでもタイトルが獲れるよう吉岡には精進してほしい。

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