面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「死神ターニャ」

2015年09月20日 | 映画
人間の死に際に立ち会うだけの日々に退屈を感じ、笑ったり泣いたり怒ったりする人間が楽しそうで、美味しいものを食べて美味しいと言ってみたい、ハンバーグを食って美味いと言ってみたくなった死神。
死んだばかりで、黄泉の国へとつながる道を歩いている人間に触れるとその肉体に乗り移り、人間になれると仲間(の死神“女子”)に教わった死神は、嫌がる仲間を道連れに、交通事故で死亡した佐々木英雄(芹澤興人)となって人間となる。

死神が乗り移った佐々木は、実は交通事故に遭う直前、強盗仲間から奪った金を持って逃げているところだった。
しかしそんなことは露知らぬまま佐々木となった死神は、人を車で撥ねて死なせてしまったと茫然自失に陥っている谷屋みゆき(小堀友里絵)の前に笑顔で現れる。
ビックリ仰天のみゆきだったが、事故で記憶喪失になったように話しかけてきながら頭から血を流している佐々木を、自分の部屋へと連れて帰る。
佐々木は、自分を死神だと言い、あらぬ方向を見ながら疫病神と話をしているという。
何だかよく分からないが、バイトをクビになったり彼氏から突然別れを告げられたり、最近ロクなことがないみゆきは、その原因が自分に憑りついた疫病神のせいなのだと知らされて納得。
2日以内に涙を流せないと消えてしまうという佐々木@死神に協力することに。

ところがみゆきは、大金を奪われて追ってきた仲間と佐々木のトラブルに巻き込まれることになり、更に災いが拡大。
そこへ、人間の姿になった死神の仲間の“女子”も絡んで、どえらい事態に…!


冒頭、紙兎ロペ風な死神同士の掛け合いが絶妙。
“神さま”もイマドキはこんな感じやろ的なリアル感が面白すぎて、いきなり物語に引きずり込まれる。
人間の死に際に立ち会うだけでつまらないと感じている死神(男)は、人間になってみたいと仲間に言う。
「人間になりたいなんておかしい」と答える死神(女)。
なぜなら、人間より“ランクが上”の神様なのだから、そんな“ランクが下”の人間になってどうするんだ!?と言うのだが、確かにもっともだ。
でも、なんだか人間は楽しそうだ。
面白ければアハハと笑い、美味しいものを食ったら美味いという。
そんな刺激ある体験がしたくて人間になる死神(男)だが、自分だけでなく死神(女)も軽いノリで巻き込んでしまうところがまた、イマドキな少々チャラい神様なればこそ。

王侯貴族の高貴な生まれの“やんごとなき方”が、なんとなく庶民の生活に憧れて庶民に混ざってみるという展開は、洋の東西を問わず昔からあるパターンではあるが、神が人間に憧れるというのはなかなかない(というか自分の記憶にはない)。
しかし死神に限らず、神の日常というものは、案外つまらないものかもしれない。
快楽を求め、面白いことに首を突っ込み、美味いものが食いたいと煩悩にまみれて生きるのは、それはそれは楽しいものだ。
欲望を超越した神の日常とは、良く言えば平穏ではあるが、平々凡々とした刺激のないものではなかろうか。
だからこそ、暇をもてあまして人間のフリをして遊ぶ神々もいるのだろう(「モンスターエンジン」参照)


「神とはなんぞや?」ということを(もしかすると)考えさせてくれる、人間でいることはエエやんと思わせる(はず)、ファンキー・ファンタジック・コメディ♪


死神ターニャ
2013年/日本  監督・脚本:塩出太志
出演:芹澤興人、小堀友里絵、岡田あがさ、竹田尚弘、松本高士、河嶋健太、仁後亜由美、星野祐樹、矢島康美、桜木梨奈、ほりかわひろき 、小田学、萩原正道、香取剛、長岡明美、箱田友紀、大高健二、五十嵐さゆり、下川邊寿美、岡本裕輝


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