面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「花よりもなほ」

2006年06月18日 | 映画
主人公の仇討ちの映画である。
しかしこの主人公、武士であるにも関わらず、剣の腕が全くイケてない。
何せ近所に住む一般人に、コテンパンにやられるほどである。

時は元禄15年。
父の仇を討つため、信州松本から江戸に出てきた青木宗左衛門(岡田准一)は、今にも朽ち果てそうなボロ長屋で、実家からの仕送りだけを頼りに貧乏生活を送りながら、仇敵である金沢十兵衛(浅野忠信)の所在を探っていた。
故郷を離れて3年。
実家も家計が苦しいらしく、仕送りの額も減ったため、宗左は近所の子どもたちを集めて寺子屋を開いて生計の足しにした。

宗左は、長屋で“庶民”の中で暮らすうち、仇討ちだけが人生か!?という思いにとらわれていく。
それは、ほのかに思いを寄せている、向かいに住む未亡人のおさえ(宮沢りえ)の言葉によって、より強いものとなる。
「お父上の人生が、宗左さんに残したものが『憎しみ』だけだったとしたら、寂しすぎます」
更に、ひょんなことからおさえもまた仇を持つ身の上であることを知り、ますます仇討ちに対する思いが揺らいでいく。
しかし、父の仇討ちは、親族一門の悲願でもあり、今は弟が守る父親から受け継がれた剣術道場の再興にもつながるもの。
今更後には引けない。
仇である金沢十兵衛の居場所もつきとめ、後は討つのみ。
そして遂に、宗左は決心した…。

時代劇によくあるような“ヒーロー”は存在しない。
主人公も軟弱そのもの。
この中には決して強者は出てこない。
でも、皆その生命力は強い。

ボロ長屋の風景と、したたかな庶民の生活。
その中で、ちょっと異彩を放つ武士の存在。
作品全体に江戸落語のテイストが漂っている。
(落語「花見の仇討ち」をモチーフにしたと思える部分もある)
片肘張らない、異色の“癒し系時代劇”。

花よりもなほ
2006年/日本  監督:是枝裕和
出演:岡田准一、宮沢りえ、古田新太、國村準、中村嘉葎雄、浅野忠信、原田芳雄


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