面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「NINE」

2010年03月24日 | 映画
グイド・コンティー二(ダニエル・デイ=ルイス)は、卓越した才能で世界的に名高い映画監督。
彼は、9作目となる映画「ITALIA」の制作に取りかかろうとしていたが、肝心の脚本を1行も書けずにいた。
セットが組まれたイタリアの名門スタジオであるチネチッタで構想を練るも、創造的な作業は何一つ進まず、幻想に包まれるだけ。

クランクインが間近に迫っているにも関わらず、タイトル以外は何も知らされないプロデューサーが業を煮やし、制作発表の記者会見を設定する。
主演には、グイドの作品におけるミューズ的存在の人気女優クラウディア(ニコール・キッドマン)を起用し、「これぞイタリア!」という作品になると大々的に喧伝されるのだが、何も構想ができていないグイドにとって、記者会見は針のむしろ。
それでも、衣装係として長年パートナーを組んできたリリー(ジュディ・デンチ)から、「世界一の嘘つき」と“称賛”された得意の弁舌でノラリクラリと質問をかわしつつ、アメリカンヴォーグ誌の美人記者ステファニー(ケイト・ハドソン)に目をつけたりしていた。
しかし、前作を駄作と評して辛らつな質問が浴びせかけられたグイドは進退窮まり、会見場から逃げ出してしまう。

海辺のホテルへと転がり込んだグイドは、妻ルイザ(マリオン・コティヤール)に助けを求めながら、一方で愛人のカルラ(ペネロペ・クルス)に連絡を取り、自分の元へ呼び寄せた。
人生を彩ってきた女性達の幻想の中へと現実逃避する彼の前に、ママ(ソフィア・ローレン)のまぼろしが現われ、「ひとりの女性を愛しなさい!」と警告する。
どうしようもない混乱の中、プロデューサーに居場所を突き止められたグイドは、再び映画制作の現場へと引きずり込まれて…

2002年のアカデミー賞作品賞に輝いた「シカゴ」のロブ・マーシャル監督が、名だたる女優陣を配して、再び絢爛豪華なミュージカル映画を作り上げた。
オリジナルは、フェデリコ・フェリーニの映画『8 1/2』に着想を得たというブロードウェイミュージカル。

豊かな才能で地位と名声を得ただけでなく、次々と美女の愛情をも手に入れていったグイド。
しかし彼は、誰をも深くは愛せずにいた。
それは、自分自身を受け入れられないのと同じこと。
フワフワと水面を漂う浮き草のように時を過ごしてきた彼が、その才能の輝きを鈍らせ、創作活動が停滞するのは必然だった。
そしてとうとう、彼の拠りどころであるはずの映画を作ることができなくなり、全てを失ったとき、彼に残されていたものは…?

本作一番の見どころは、なんといっても錚々たる女優たちのミュージカル・シーン。
ペネロペ・クルス、ニコール・キッドマン、マリオン・コティヤール、ケイト・ハドソン、そして大女優ソフィア・ローレン。
贅沢極まりなく繰り広げられる“美の競演”に、観客の目はスクリーンに釘付けとなる!
そしてそんな女たちが、ダメ男と知りつつも愛してしまう主人公を、オスカー俳優ダニエル・デイ=ルイスが魅力たっぷりに好演。
子供の頃に教会で歌ったくらいで、歌など歌ったことがないという彼を、ほとんど無理やりに歌わせたロブ・マーシャル監督の慧眼が素晴らしい!

映画好きの自分には堪えられない、温かいラストシーンも魅力の、ミュージカル映画の傑作。


NINE
2009年/アメリカ  監督:ロブ・マーシャル
脚本:アンソニー・ミンゲラ
出演:ダニエル・デイ=ルイス、マリオン・コティヤール、ペネロペ・クルス、ジュディ・デンチ、ケイト・ハドソン、ニコール・キッドマン