面白き 事も無き世を 面白く
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「シャッター アイランド」<超日本語吹替版>

2010年03月23日 | 映画
不自然さ一掃!「超・吹替版」登場 映画「シャッターアイランド」(産経新聞) - goo ニュース


ボストン沖合に浮かぶ絶海の孤島、「シャッター アイランド」。
四方を海に囲まれ、社会から隔絶されたこの島には、精神を病んだ犯罪者のみを収容するアッシュクリフ病院があった。
1954年9月、連邦捜査官のテディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)は、新しい相棒であるチャック(マーク・ラファロ)と共に、この島へやって来た。
目的は、女性患者レイチェル・ソランドー(エミリー・モーティマー)の失踪事件を捜査するためである。
3人の我が子を溺死させた罪によりこの島へ送り込まれた彼女は、鍵のかかった病室から、誰にも気づかれることなく忽然と煙のように姿を消したという。
部屋には、レイチェルが書いたメモが残されていた。
「4の法則、67は誰?」

病院長ジョン・コーリー(ベン・キングズレー)をはじめとする職員達から事情を聞いたテディとチャックは、自分達と入れ違いに休暇で島を離れたというシーハン医師が事件の鍵を握ると推測した。
失踪当日にレイチェルと接触のあった患者達に対して聞き込みを開始。
その聴取の中でテディは、
「アンドリュー・レディスという患者を知らないか?」
という質問を繰り返した。
失踪事件と無関係な質問であることに気づいたチャックは、怪訝な表情を浮かべる。
「レディスって誰だ?」。
チャックの疑問に答えてテディは、自分がこの島へとやって来たのは、別の目的があったことを語り始める…

物語の舞台は、冷戦による緊迫感の高まっていた1950年代。
本作の背景には、様々なテーマが盛り込まれている。
 ・第二次大戦のトラウマを抱えて生きる人々の苦悩
 ・闇に閉ざされた国家規模の大きな陰謀
 ・人権侵害的な精神病治療に対する論争
 ・人間の精神が持つ途方もない力
中でも、「大きな陰謀」と当時の「精神病治療」の実情の2点について、アッシュクリフ病院に対する疑問が膨らんでいく。
物語が進むほどに、いったい何が真実なのか、病院ではいったい何が起きているのか、謎が解かれるたびに謎が深まる。

人間の脳は、“自分”に都合のいいように物事を解釈するという。
ことに視覚は、あるがままの“真実”が見えているように思っているが、実は脳が勝手に都合のいい“解釈”を施している。
今回体験した「超日本語吹替版」で、字幕を読むという行為から解放され、徹底的にスクリーンの中へと没入した。
そしてテディと同化した自分は、自分の脳ミソにとって“都合のよい”解釈へと導かれ、最後の最後の最後まで“真実”を掴みかね、観終わってもなお、思考のドツボへとハマってしまった(単なるアホ?)。

洋画は字幕版しか観ないという人も、逆に字幕があるから洋画を観ないという人も、従来の翻訳を超え、徹底した「意訳」によってセリフ化された「超日本語吹替版」を体験していただきたい。
物語の中へ、ドップリ浸りきることができること請け合い。
そうすればきっと、自分の脳が面白いと思う方向へと、導かれていくことだろう。

幻惑される面白さを堪能できる、名匠スコセッシ監督によって見事に映像化された上質の“超絶ミステリー”。


シャッター アイランド
2010年4月9日(金)全国拡大ロードショー
2010年/アメリカ  監督:マーティン・スコセッシ  原作:デニス・ルヘイン
出演:レオナルド・ディカプリオ、マーク・ラファロ、ベン・キングズレー