青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

日本の蝶 Ⅲ イチモンジセセリの仲間(その4:前回までのオオチャバネセセリ「上」「下」「補遺」から引き継いで)

2021-07-07 20:24:50 | コロナ、差別問題と民主化運動、蝶



・・・・・・・・・・・

読者の方々に質問です(僕は頭が悪いので、教えて頂ければ幸いです)。

【Ⅰ】
マスクは、なぜ必要なのですか?

【Ⅱ】
「沖縄に対する日本」
「台湾・チベット・ウイグルに対する中国」
の違いを教えて下さい。

*ブログ記事の冒頭に、この質問を繰り返し続けます。

・・・・・・・・・・・

『北米の自然保護区で“人を襲った熊を駆除する”』という記事。

むろん、考慮に考慮を重ねた上での、窮余の策でしょう。そう簡単に「自然保護区は野生生物の側の領域なので人間が立ち入ることが問題」と片付けるわけにはいきません(いろんなニュースの反応コメントを読んでいると大衆の多くがいかに単純思考なのかが分かる)。

アメリカの価値観では、「自然保護区」は、あえて「人々が自由に立ち入ること」を前提として成り立っています。「(特定の人間だけの活動が許可され)一般人の行動を制約することに重きを置く」日本とは違うのです。

それはともかく、、、。こんな↓コメントもありました。まさか、ジョークで言っているわけじゃないのでしょうが。さすが「そうは思わない」という反応多数ですが、「そう思う」もそれなりにあって、、、。

>クマでもワニでもライオンでも世界中で駆除して動物園で飼育すれば良いと思う。
>どんな山奥でも安心して入山出来る環境にするべきです。
>マジで。

現実を正視すれば、このコメントを笑うわけにはいかないと思います(実際に、その通りの方向に進みつつある)。

・・・・・・・・・・・・・

さて、せっかくエヴァンスを引っ張り出した(段ボール箱からでなくパソコンからなのが少し残念ですけれど)ので、セセリチョウの話題を続けましょう。

図鑑の種の並べ方は、それなりのルールみたいなのがありますね。ことに、どの種を最初に置くか、国ごとに異なります。ただし国の如何に関わらず、アゲハチョウ科が最初に来ることは変わらないようです(以下、ちゃんとチェックしたわけではないので思い違いがあるかも知れんですが)。

ヨーロッパは、キアゲハかアポロチョウ。中国も、たぶんアポロチョウ類(アカボシウスバシロチョウ)。アメリカもキアゲハ類だったような、、、。日本はギフチョウでほぼ決まっていますね。

本来ならば、その群全体に於ける(より祖先的形質を多く備えた)側系統群、すなわち蝶の場合はセセリチョウ科から始めるべき(実際図版なしのリストだけならそのような扱いが多い)なのですが、最初に地味なセセリチョウが示されていると、たぶん本の売れ行きが悪くなってしまいます。

最初に本を開いた時に、綺麗で人気がある種が目に入るようにしておく必要があります。したがって、アゲハチョウ科からスタートして、セセリチョウ科を末尾に置く、これが暗黙の了解(MLBで「大差でリードしているチームが盗塁してはならない」みたいなもの、かな?)です。

チョウの愛好家は、もちろんチョウが好きなのですが、「セセリチョウはちょっと、、、」「関心がない」「除外」という人も少なくないようですね。気持ちは分かります。一般人の感覚としては、「蝶」というより「蛾」に近いのではないかと。

ところで、Lepidoptera(通称“レピ”)「旧・鱗翅目」を、今は「チョウ目」あるいは「ガ目」と呼びます。

「膜翅目」とか「双翅目」とか「直翅目」とか、堅苦しい名前は止めて、親しみのある馴染みの名を使うように、ということ(お上?からの通達)で、上の3つで言うと、それぞれ「ハチ目」「ハエ目」「バッタ目」に置き換ったわけです。「鞘翅目」は「コガネムシ目」かな?あるいは「甲虫(コウチュウ)目」と言っているのかも知れません。

しかし、「膜翅目」には、「ハチ」のほかに、「アリ」(両者の関係の説明はパス)がいます。また、「双翅目」には、「ハエ」のほかに、「アブ」や「カ」(これも相互関係説明はパス)がいます。直翅目には、「バッタ」のほかに、「コオロギ」とか「キリギリス」(同上)とかも。

でも、「蟻」よりは「蜂」、「虻」や「蚊」よりは「蠅」、「興梠」や「螽斯」よりは「飛蝗」のほうが、よりポピュラーでメジャーな気がする(今そう書いていて、そうでもないかな?とも思いますが)ので、まあ一応「ハチ目」「ハエ目」「バッタ目」辺りは妥当なところでしょう。

「蜻蛉目」は「トンボ目」で決まり。「半翅目」は難しいところで、「セミ目」なのか「カメムシ目」なのか、、、。そして、最も難しいのが「鱗翅目」ですね。「チョウ目」なのか「ガ目」なのか。

ちなみに、難しいと言えば「霊長目」も同じ。「ヒト目」なのか「サル目」なのか(「ヒト目を採用しているのかな?」)。

以上に挙げたような選択が難しい目の名は、現在でもいくつかが併用されているのだと思います。結局、下手に大衆に忖度したり、基準とかを作ろうとしたりすると、かえってしっちゃかめっちゃかになってしまう、という好例です。
 
鱗翅目を「チョウ目」にするか、「ガ目」にするか、、、現在、どうやら「チョウ目」が主流なようなのですが、さしたる根拠があるわけでもなく、単に語呂が良いからだと推察しています。

さて、「蝶」と「蛾」ですね。

この表現は、実は成り立ちません。

以下に記す様々なことも含めて、このブログで記す内容は「そんなこと誰でも知ってるよ!」と言われそうに思いますが、チョウ愛好家に向けて記事を書いているのではなく、一般の人たちに読んで貰うことに重点を置いています。“(一部の人々にとっては)誰でも知っている”事ではあっても、トータルに見渡せば知らない人のほうが多い、と言う事もあると思うので。

「蝶」と「蛾」の関係は、「東京」と「日本」の関係(「パリ」と「フランス」の関係でもよい)と理解して頂いて良いかと思います。「蝶」は「蛾」の一部なのです。「チョウ」は「ガ」であるけれど、「ガ」は必ずしも(と言うか大半は)「チョウ」とは限らない。

沢山の(無数とも言えそうな)種類から成る「ガ」の中の、ごく一部を「チョウ」と呼んでいます。「科学的な根拠に拠る」と言う事では無く、通例としての無条件選択(僕もそれが悪い事だとは思ってはいません)ですね。

「蝶」に相当する系統分類上のある程度の纏まりはあって(ただしその活用が承認されるなら他の幾つかの「蛾」の任意の纏まった分類群にも、「蝶」同様に「蛾とは違った」名前を付けねばならないわけですが、少なくても日本ではそのような例はありません)、学術上の定義で言えば、「セセリチョウ上科」と「アゲハチョウ上科」を併せた一群が、「蝶」とされているわけです。

前者(セセリチョウ上科)は単独でセセリチョウ科Hesperiidaeから成り、後者(アゲハチョウ上科)は複数の科を包括しています。すなわち、アゲハチョウ科Papilionidae、シロチョウ科Pieridae、タテハチョウ科Nymphalidae(以前は「マダラチョウ科」「ジャノメチョウ科」ほか多くの科に分けられていた、シジミチョウ科Lycaenidaeなどです。

欧米文化圏で「パピヨン」または「バタフライ」と呼ばれるのは、アゲハチョウ上科の種だけで、通常セセリチョウは含まれません(「スキッパーSkipper」と呼びます)。従って、セセリチョウを蝶の概念から除外する人がいても、何ら不思議はないわけです。

ちなみに、“「蝶」とは「セセリチョウ上科」と「アゲハチョウ上科」から構成される「ガ」の一部である「チョウ」という概念の一括りの分類群”と書きましたが、正確にはもう少し補足が必要です。それは、比較的近年になって、「シャクガモドキ」というごく地味な、まあ、いわゆる「ガ」の一群が、系統分類上の「チョウ」(「セセリチョウ上科」と「アゲハチョウ上科」を組み合わせた集合分類群)の中に組み込まれたこと。

いわゆる「ガ」のひとつが「チョウ」の中に加えられたわけですね。

シャクガモドキの存在はさておき(というか、蝶コレクターとかは、その存在を無視する人が多いのではないでしょうか)、蝶は「アゲハチョウ上科」の種と「セセリチョウ上科」の種から成っているわけですが、セセリチョウを(シャクガモドキ共々)切り離して、アゲハチョウ上科だけを“純粋な”「蝶」と見做す人がいても、
なんら問題はないわけです。

ところが、そうもいかない事情も、、、。

「アゲハチョウ上科」と「セセリチョウ上科」と「シャクガモドキ上科」の相互の位置関係については様々な見解があり、最近は、(シャクガモドキ上科の存在はともかくとして)次のような見解もあるわけで。

アゲハチョウ科以外のアゲハチョウ上科に含まれる各科が、アゲハチョウ科よりもセセリチョウ上科に類縁的に近い。

アゲハ(パピリオ、パピヨン)はチョウの代名詞でもあります。一般論としては「アゲハ=チョウ」と言っても大きな間違いではないくらいです。しかし、この見解が正しいとすれば、「アゲハはチョウではない」、ひいては「チョウはチョウではない」ということにも成りかねません。

話を戻します。

「日本の蝶」シリーズをブログで書いて行くに当たり、通例に従ってアゲハチョウ科から始めることにしました。ギフチョウからスタートすべきなのですが、しかしアパート周辺地域には分布していません。それで、通常の日本の図鑑では、ギフチョウの次に紹介されているウスバシロチョウから始めることにしたのです。

それが(別に思惑とか理由とかがあったわけではないのですが単なる成行きで)2回目からセセリチョウ科の種になってしまいました。ある意味では「本来採るベき順番*」に収まったとも言えます。

*もっとも、先に書いたように、アゲハチョウ科を(セセリチョウ科をも含めた)「蝶」の中で異端的な(側系統の)存在と見做すなら、アゲハチョウ科でスタートしてセセリチョウ科をラストに置くという並びも、理に適っていることになります。

いずれにしろ、一般例(=日本でも中国でもヨーロッパでもアメリカでも、通常図鑑のラストはセセリチョウ科で、その末尾はイチモンジセセリやチャバネセセリなどのゲゲネス類)とは逆の、セセリチョウ科から再スタートすることにします。前回にオオチャバネセセリについて述べたので、引き続き同じゲゲネス類の、イチモンジセセリ属、チャバネセセリ属、ユウレイセセリ属について記して行きます。

眠たいので、今日は部屋に帰って寝ます。以下は、明日のブログで。



2005.6.23 雲南省麗江(本文とは無関係)












コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする