功夫電影専科

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追憶:香港映画レーベル(終)『燃えよデブゴン10 友情拳』

2013-11-26 22:45:53 | 洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
「燃えよデブゴン10 友情拳」
原題:贊先生與找錢華
英題:Warriors Two
製作:1978年

▼2000年代の旧作リリースラッシュは非常に意義のあることでした。しかし、ややマニア向けに傾きすぎていた感があり、一般の香港映画ファンには敷居の高いものになってしまった気がします。
その後も、ラインコミュニケーションズから「G1 功夫電影ゴールデンセレクション」が発売されましたが、こちらもマニア向けの域を脱していません(発売された作品自体は面白いんですが…)。
 しかし、2010年代にツインとパラマウントジャパンが打ち出した「Happy the BEST!」は、マニアと一般の香港映画ファンの両方を驚愕せしめるラインナップを展開しました。
このレーベルは香港映画専門ではないのですが、それまでどのメーカーも出し渋っていた初期ジャッキー作品の日本語吹替え版(オリジナル主題歌入り)を、低価格でリリースするという英断に踏み切ったのです。
「Happy the BEST!」はそれだけに留まらず、ショウブラの再販や李小龍(ブルース・リー)の日本語吹替え版を続々と発売!今後がとても楽しみなレーベルの1つと言えるでしょう。

■両替商を隠れ蓑にしている馮克安(フォン・ハックオン)一味は、佛山の町を我が物にしようと企み、町長の暗殺を計画していた。偶然それを知ってしまった[上下]薩伐(カサノヴァ・ウォン)は、一味に命を狙われる事となる。
彼は詠春拳道場の門弟である洪金寶(サモ・ハン)に助けられたが、母親を一味の用心棒たちに殺されてしまう。仇討ちを誓った[上下]薩伐は、洪金寶の取り成しで梁家仁(レオン・カーヤン)に弟子入りし、詠春拳の修行を開始した。
 一方、まんまと計画を遂行した馮克安は、町長の座に収まると邪魔者の排除に乗り出した。梁家仁は罠にはまって殺され、道場も襲撃を受けて壊滅。生き残ったのは[上下]薩伐と洪金寶、梁家仁の姪である張敏庭だけとなった。
3人は手強い用心棒トリオを倒し、その上で馮克安を討とうと計画する。だが、洪金寶のミスや新たな刺客の出現によって張敏庭が討ち死にした。果たして2人の友情拳は、邪悪な馮克安を倒せるのだろうか!?

▲本作はデブゴン系列の中でも傑作と称される作品ですが、なかなかソフト化の機会には恵まれませんでした。しかし「Happy the BEST!」から発売されたことで、ようやく手軽に入手できるようになったのです。
ストーリーは主人公以外が全員死んでしまう陰惨なもので、最終的に馮克安の悪事を公に暴いていない点も気になりますが、『ドラ息子カンフー』『燃えよデブゴン7』のようにフラストレーションの溜まる作風にはなっていません。
 アクション面に関しては詠春拳に関する描写が濃厚で、基本的な動作から点穴の特訓、棒術の修練に至るまでを丹念に描いています。後半では主人公たちが修行の成果を生かし、足技の楊成五・鐵布杉の李海生・槍の楊威、そして蟷螂拳の馮克安と死闘を演じます。
これらの演出からは劉家良(ラウ・カーリョン)作品の影響を感じますが、ちゃんと洪金寶らしいハードな肉弾戦も充実していて、[上下]薩伐が見せる詠春拳と足技のアンサンブルは実に見事。ラストの[上下]薩伐&洪金寶VS馮克安も、素晴らしい出来栄えとなっていました。
 思えば、香港映画レーベルとは日本における香港映画事情の縮図だったのかもしれません。人気の高まりとともにレーベルが頻出し、市場の元気が無くなれば過去を振り返ることで存続する――この流れの中で、様々なレーベルが現れては消えていきました。
現在、現役で稼動している香港映画レーベルは「Happy the BEST!」のみとなっており、近作を扱ったシリーズの登場が待たれます。次にどのようなレーベルが発表され、ファンを楽しませてくれるのか…ほのかな期待を抱きつつ、これにて今回の特集を終えたいと思います。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは。 (ひろき)
2016-01-26 18:56:18
龍争こ門さん、こんばんは。
いつもお世話になります。
よろしくお願い致します。
「燃えよデブゴン10 友情拳」は、「Happy the BEST!」で、初めて、日本版のDVDが、しかも、廉価版価格で、リリースされたときは、とても嬉しかったですね。
欲を言えば、水島祐さんの日本語吹き替え版も、収録して頂ければ、最高なんですけれどね。
「デブゴン」シリーズでは、一二を争そう面白さですからね。サモ・ハン・キンポーとカサノバ・ウォンの掛け合いが絶妙で、サモ・ハンは、お馴染みのユーモアを交えた動きや京劇的な要素を取り入れたリズミカルな拳技&華麗な剣裁きで、楽しませてくれましたし、カサノバ・ウォンは、詠春拳とテコンドー仕込みの多彩な足技で、唸らさてくれましたね。
(カサノバさんって、中井貴一さんにも似ていますが、少し、表情によって、オール巨人さんに似ていると感じました(笑)。)
特に、大回転飛び後ろ廻し蹴りは、もう、技と言うよりも、芸術品だと思います。
それ位に、美しくて、凄い足技でしたね。
ただ、サモ・ハンと石天とのお笑い対決は、ダラダラと、くどく感じて、少し、テンポの良いアクションの妨げになっているようで、少し、ノレませんでした。(個人的な意見ですが。)
ストーリーは、暗目でしたが、レベルの高いアクショが満載で、総合的には大満足の作品で、とても楽しめました♪
それでは、失礼致します。
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返信。 (龍争こ門)
2016-02-03 21:02:27
ひろきさん、改めましてこんばんは。

>特に、大回転飛び後ろ廻し蹴りは、もう、技と言うよりも、芸術品だと思います。
 本作のアクション演出は、本当に飛び抜けた完成度を誇ってますね。これだけの傑作が、なぜ今まで一度も国内でソフト化の機会に恵まれなかったのかが不思議です。
この作品における[上下]薩伐の動きは、恐らく彼にとって五指に入るほどのベストパフォーマンスで、私も例の飛び蹴りシーンを何度も見返していたりします(笑
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