功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

よろしくユン・ピョウ(1)『イースタン・コンドル』

2015-04-04 22:48:45 | 洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
「イースタン・コンドル」
原題:東方禿鷹
英題:Eastern Condors
製作:1987年

▼というわけで始まりました「よろしくユン・ピョウ」ですが、まずは元彪(ユン・ピョウ)が主演の一角を担い、彼の兄貴分である洪金寶(サモ・ハン・キンポー)が監督した本作から紹介してみましょう。
この作品は『ランボー』から始まったコマンド・アクションものの流れを汲んでおり、洪金寶にとっては長期間の海外ロケを行った入魂の一本でもありました(そのため元彪たちが『プロジェクトA2』に出演できなかったエピソードは有名)。
 出演者も豪華で、元彪はやたらと強いベトナムの行商人を好演。元奎(ユン・ケイ)や樓南光(ビリー・ロウ)林正英(ラム・チェンイン)に高麗虹(ジョイス・コウ)と、裏方からスターまで様々なキャストが集められています。
ところが巨費を投じて製作されたにもかかわらず、本作は思ったほどのヒットに恵まれなかったため、ゴールデン・ハーベストから洪金寶が離脱する一因にもなったとのこと。しかし本作は決して悪い作品では無いのです。

■ベトナム戦争終結後、アメリカ軍は撤退のどさくさで残された武器庫を破壊するため、2つの部隊をベトナムに派遣した。1つは作戦を遂行する本隊、もう1つは陽動のために囚人で結成された部隊だ。
ところが本隊が撃墜されたため、囚人部隊を率いる林正英は任務の代行を決意。囚人の洪金寶や樓南光たちに加え、高麗虹らカンボジアのゲリラとともに武器庫を目指した。
 その途中、林正英たちは探していた上司の弟(ハイン・S・ニョール)を救出するが、一緒に着いてきた元彪も同行する事となる。しかし道のりは非常に険しく、度重なる戦いによって仲間たちは次々と死んでいった。
裏切りや死闘の果てに、ようやく武器庫へと辿り着いた囚人部隊一行。しかし思いもよらぬアクシデントが発生し、さらには追ってきたベトコン部隊までもが雪崩れ込んできた。銃弾と硝煙の中、最後に生き残るのは…?

▲息つく間もないストーリー展開、殺伐とした戦場の空気と残酷な現実、そして炸裂するアクションシーンの数々…。本作はこれらが有機的に組み合わさり、上質のコマンド・アクションに仕上がっていました。
繰り広げられる銃撃戦はもとより、肉弾戦においても“殺らなきゃ殺られる”という緊張感に包まれており、特にジャングルで高飛(コー・フェイ)の部隊を迎え撃つシーンはその白眉と言えます。
 しかしこのシリアスな作風こそが、大ヒットに繋がらなかった最大の要因だったのではないでしょうか。昔からサモハンの監督作にはコミカルな要素が付き物で、シリアス系の作品でもその姿勢は貫かれています。
80年代に現代劇が主流になると、サモハンはコメディセンスに磨きをかけて『ピックポケット』や福星シリーズを製作。名実ともに「サモハン監督作=コメディ」の図式が成立し、香港の観客からも支持を集めました。
 ところが本作はギャグ描写が皆無に等しく、血生臭い戦いがこれでもかと続くのです。前年に『上海エクスプレス』で好成績を上げていただけに、観客が戸惑ったことは想像に難しくありません。
監督のやりたかった事と、観客が求めた物の大きなズレ…これこそが本作の大ヒットを阻んだ原因だと思われます(この翌年、サモハンはコメディ路線に立ち返り、『サイクロンZ』で本作の雪辱を晴らします)。

 …なんだか作品分析ばかりで元彪に触れていませんが(爆)、本作の彼は明るくて抜け目のない商人をのびのびと演じており、作品の照明として大いに活躍していました。
ことアクションにおいては、得意のアクロバティックな足技を惜し気もなく披露し、サモハンと共にファイトシーンを盛り上げています。ラストではベトコンの倉田保昭と戦って圧勝しますが、この顔合わせならもっと接戦にして欲しかったなぁ…。
 負けじとサモハンも周比利(ビリー・チョウ)の動きを読み切り、高麗虹は狄威(ディック・ウェイ)と壮絶な死闘を展開。最後のサモハンVS色んな意味でキレてるベトコンの首領・元華(ユン・ワー)に至るまで、ハイレベルなバトルが目白押しでした。
アクション・ドラマともに抜かりなく、まさに隠れた傑作と呼ぶにふさわしい作品。ただし元彪ひとりが目立つ作品ではなかったので、次回は彼の単独主演作でいってみたいと思います。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿