功夫電影専科

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『炎の大捜査線』

2011-03-03 23:41:00 | 成龍(ジャッキー・チェン)
「炎の大捜査線」
原題:火燒島
英題:Island of Fire
製作:1990年

▼今月は監獄アクション系の作品尽くしでお送りしますが、そのトップバッターを飾るのは香港の著名人たちが結集して作られた本作です。実を言いますと、この『炎の大捜査線』は今回取り上げる作品の中でも問題作中の問題作でして…というか、本作の存在が一番突出していると言うべきでしょうか(汗
ご存知の方も多いと思いますが、本作は『ドラゴン特攻隊』と同じ経緯で作られた作品で、香港と台湾映画界の暗部を象徴するかのようなブラックすぎる代物です(製作背景については割愛)。ただ、ストーリー展開は『ドラゴン特攻隊』と通じる部分があるものの、出演者たちの熱演によって随分と救われている感があります。あまりに暗いストーリーのため、ジャッキーのファンからは厳しい評価を受けていますが、役者たちの気合の入った演技はとても見応えがありました。

■警察官の梁家輝(レオン・カーフェイ)は、警察長官暗殺事件の犯人が死亡した死刑囚だと知り、死刑囚が収監されていた刑務所・火燒島への潜入捜査を試みる事となった。火燒島にはシャバにいる息子へ会おうと脱獄に励むサモハンなど、多種多様な受刑者たちがいる。梁家輝は懲罰房から出てきたジミー先生に目を付けられるが、看守の嫌がらせを庇ったことで2人の間に信頼関係が生まれることとなる。
次にムショ入りしてきたのは、恋人の手術費用を得ようとして人を殺してしまったジャッキーだった。彼が殺した男は黒社会の大物・劉華(アンディ・ラウ)の弟で、劉華の派閥に属していた囚人(筋肉質の男はショウブラ作品にも出演していた楊雄、帽子の男は『ボディガード牙/修羅の黙示録』に出演していた高捷)がジャッキーの命を狙った。この争乱はジミー先生の取り成しで収まったが、サモハンを利用した看守長によってジミー先生は殺されてしまう。
その後、3度目の脱獄に失敗したサモハンは死刑、弟の仇を討つために来た劉華とジャッキーは看守長への暴行により懲罰房送り、梁家輝も相部屋の友人を殺した看守長を殺害した罪で死刑となった…はずだった。だが彼らは生きていた。刑務所署長の柯俊雄(オー・ジョンホン)は、死刑囚をヒットマンとして裏で密かに利用していたのである。彼の命令で梁家輝・ジャッキー・劉華・サモハンの4人は、シンガポールの麻薬王を暗殺する任務に就くのだが…。

▲全体的にちぐはぐなトーンで作られた作品ですが、本作は『ドラゴン特攻隊』にあった荒唐無稽さが排除されていて、個々のエピソードも実に洗練された内容となっています。父親としての悲哀を感じさせるサモハン、恋人を傷つけられ絶望のどん底に沈んでいくジャッキー、弟の仇を土壇場で助けに行ってしまう劉華…ちょっと梁家輝の存在感が薄い気がしますが、それぞれが抱える思いや苦悩など、演技面で見入ってしまう描写が多かった気がします(ジミー先生には別の意味で見入ってしまいました・爆)。
アクションシーンにおける見せ場もきちんと作られていて、なにげにジャッキーVS劉華というドリームマッチが初めて実現したのが本作だったりします。クライマックスはシンガポールでの銃撃戦となりますが、ここでもそれぞれの役割に応じたアクションシーンと演技が振り分けられていました。ところでこの銃撃戦、活躍しているのはジャッキーとサモハンと劉華ばかりで、梁家輝はほとんど出てきません。もしかしてこのシーン、梁家輝の撮影スケジュールが調整できなかったのかな?
全体の感想としては、香港を代表するスターたちの卓越した演技力が見られる反面、『ドラゴン特攻隊』のような笑って許せる面白さが減ったため、見る人を選ぶ作品といった風体の本作。のちに一部のスタッフが本作の流れを引き継いで続編を発表しますが、それについては次回の更新にて!

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