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「ニンジャ・コマンドー/地獄の戦車軍団」
原題:Ninja in the Killing Field/The Ninja Connection
製作:1987年
●80年代初頭、世界の映画マーケットは混沌とした活気に満ち溢れていました。多くの才人が傑出した作品を生み出し、アクション大作やホラー映画が世界中に氾濫。さらには家庭用ビデオの普及に伴い、レンタルビデオ店がそこかしこに建ち並んだのです。
かくして映画はスクリーンの手を離れ、世に言う“ビデオバブル時代”が到来します。この狂気をはらんだムーブメントは、B級スプラッターやニンジャ映画の流行を作り上げるのですが、それを見逃さなかった恐るべきプロダクションが存在しました。
それが、[登β]格恩(トーマス・タン)と黎幸麟(ジョセフ・ライ)率いる通用影業(AN ASSO ASIA FILM)でした。もともと彼らは韓国産功夫片などの海外配給を手掛けていましたが、ビデオバブルが到来すると便乗作品の製作に着手し始めます。
驚くべきはその製作スタイルで、既存の作品を勝手に使用して新撮シーンを追加。威勢のいい英語タイトルを付け、あたかも新作であるかのように売り叩くという、著作権無法地帯の香港でも類を見ない手法を取っていました。
やがて彼らは禊を分かち、それぞれIFD Film & artsとフィルマークという別々の会社を設立します。しかし両者の製作スタイルは相変わらずのニコイチ体制で、その犠牲となった作品は数知れません。
そんなわけで今回の特集では、このクレイジー極まりない製作陣が何を模倣し、どんなブームに乗ろうとしたのかを検証してみたいと思います。……まぁ、取り上げる作品は全部ダメダメな映画なんですけどね(爆
さてニコイチ映画の華といえば、やはり外せないのがニンジャ映画でしょう。アメリカでショー・コスギが忍者に扮して以降、ニンジャ映画は世界的なブームを巻き起こし、その影響は日本や香港にまで波及しました。
この流れに乗って、IFDとフィルマークは粗悪なニンジャ映画を量産し、莫大な利益を得たといわれています。アメリカはもちろん、ビデオバブルによって突発的なニンジャ映画ブームに襲われていた日本もその餌食となりました。
ちなみに江戸木純氏が某書籍で語った所によると、ニコイチ系ニンジャ映画の悪評は日本のビデオ業界に大きな影を落とし、しばらく邦題に「ニンジャ」という語句が使えなくなったそうです(一部のニンジャ映画が無関係な邦題で発売されたのはこのため)。
この『ニンジャ・コマンドー/地獄の戦車軍団』も典型的なニコイチ系ニンジャ映画のひとつで、タイの俳優であるソラポン・チャトリが主演したアクション映画に、スチュアート・スミス演じるインチキ忍者を捻じ込んだ作品です。
元となった映画は結構な大作のようで、戦闘機や戦車が惜し気もなく登場(冒頭には何故か譚道良(レオン・タン)まで出演!)。さらにはニンジャまで出てくるため、意外と新撮シーンが浮いているようには感じませんでした。
ストーリーはタイ進出を目論むニンジャ一派と、抜け忍であるソラポンの戦いを描いており、ここに警察や軍隊も介入しての死闘が展開されます。こう書くとなんだか楽しそうに思えますが、演出が無味乾燥なのでまったく盛り上がりません。
アクション的にはソラポンの彼女役による立ち回り、新撮シーンでの派手なカースタントに目を引かれます。注目は終盤の戦車部隊VSニンジャの決戦で、新撮と元作品の映像を巧みに編集した失笑必至のスペクタクルが繰り広げられていました。
ところでこの新撮シーン、なんと雑魚ニンジャ役を江島や五毒の孫建(スン・チェン)が演じています。当時はショウブラザースが映画製作から撤退し、所属した俳優たちは四苦八苦しながら活動していましたが、こんな所で彼らを見る事になるとは…(涙
潤いのない内容に打ちのめされ、最後の蛙オチで頭を抱えてしまいそうになる本作。しかし裏を返せば、矛盾とアナーキーさがギュッと凝縮されたニコイチ映画の見本……と言える作品なのではないでしょうか(←言えない)。
なんだか本作の紹介だけで腹一杯になった気分ですが、ニコイチ映画の全容解明はまだまだこれから。次回は『ニンジャ・コマンド~』に続いて、再びフィルマークが仕掛けた恐怖の逸品に迫ります!
原題:Ninja in the Killing Field/The Ninja Connection
製作:1987年
●80年代初頭、世界の映画マーケットは混沌とした活気に満ち溢れていました。多くの才人が傑出した作品を生み出し、アクション大作やホラー映画が世界中に氾濫。さらには家庭用ビデオの普及に伴い、レンタルビデオ店がそこかしこに建ち並んだのです。
かくして映画はスクリーンの手を離れ、世に言う“ビデオバブル時代”が到来します。この狂気をはらんだムーブメントは、B級スプラッターやニンジャ映画の流行を作り上げるのですが、それを見逃さなかった恐るべきプロダクションが存在しました。
それが、[登β]格恩(トーマス・タン)と黎幸麟(ジョセフ・ライ)率いる通用影業(AN ASSO ASIA FILM)でした。もともと彼らは韓国産功夫片などの海外配給を手掛けていましたが、ビデオバブルが到来すると便乗作品の製作に着手し始めます。
驚くべきはその製作スタイルで、既存の作品を勝手に使用して新撮シーンを追加。威勢のいい英語タイトルを付け、あたかも新作であるかのように売り叩くという、著作権無法地帯の香港でも類を見ない手法を取っていました。
やがて彼らは禊を分かち、それぞれIFD Film & artsとフィルマークという別々の会社を設立します。しかし両者の製作スタイルは相変わらずのニコイチ体制で、その犠牲となった作品は数知れません。
そんなわけで今回の特集では、このクレイジー極まりない製作陣が何を模倣し、どんなブームに乗ろうとしたのかを検証してみたいと思います。……まぁ、取り上げる作品は全部ダメダメな映画なんですけどね(爆
さてニコイチ映画の華といえば、やはり外せないのがニンジャ映画でしょう。アメリカでショー・コスギが忍者に扮して以降、ニンジャ映画は世界的なブームを巻き起こし、その影響は日本や香港にまで波及しました。
この流れに乗って、IFDとフィルマークは粗悪なニンジャ映画を量産し、莫大な利益を得たといわれています。アメリカはもちろん、ビデオバブルによって突発的なニンジャ映画ブームに襲われていた日本もその餌食となりました。
ちなみに江戸木純氏が某書籍で語った所によると、ニコイチ系ニンジャ映画の悪評は日本のビデオ業界に大きな影を落とし、しばらく邦題に「ニンジャ」という語句が使えなくなったそうです(一部のニンジャ映画が無関係な邦題で発売されたのはこのため)。
この『ニンジャ・コマンドー/地獄の戦車軍団』も典型的なニコイチ系ニンジャ映画のひとつで、タイの俳優であるソラポン・チャトリが主演したアクション映画に、スチュアート・スミス演じるインチキ忍者を捻じ込んだ作品です。
元となった映画は結構な大作のようで、戦闘機や戦車が惜し気もなく登場(冒頭には何故か譚道良(レオン・タン)まで出演!)。さらにはニンジャまで出てくるため、意外と新撮シーンが浮いているようには感じませんでした。
ストーリーはタイ進出を目論むニンジャ一派と、抜け忍であるソラポンの戦いを描いており、ここに警察や軍隊も介入しての死闘が展開されます。こう書くとなんだか楽しそうに思えますが、演出が無味乾燥なのでまったく盛り上がりません。
アクション的にはソラポンの彼女役による立ち回り、新撮シーンでの派手なカースタントに目を引かれます。注目は終盤の戦車部隊VSニンジャの決戦で、新撮と元作品の映像を巧みに編集した失笑必至のスペクタクルが繰り広げられていました。
ところでこの新撮シーン、なんと雑魚ニンジャ役を江島や五毒の孫建(スン・チェン)が演じています。当時はショウブラザースが映画製作から撤退し、所属した俳優たちは四苦八苦しながら活動していましたが、こんな所で彼らを見る事になるとは…(涙
潤いのない内容に打ちのめされ、最後の蛙オチで頭を抱えてしまいそうになる本作。しかし裏を返せば、矛盾とアナーキーさがギュッと凝縮されたニコイチ映画の見本……と言える作品なのではないでしょうか(←言えない)。
なんだか本作の紹介だけで腹一杯になった気分ですが、ニコイチ映画の全容解明はまだまだこれから。次回は『ニンジャ・コマンド~』に続いて、再びフィルマークが仕掛けた恐怖の逸品に迫ります!
遂に始まりましたね、楽しんでます笑。
ニコイチ映画って観るのが辛いんですが、意外と元々の映画が面白かったり、データベースに記載されてなかったりと、個人的に魅力?を感じてます笑。
本作の元映画での譚道良の出演は驚きましたよね!で、実はなんですが、去年暮れ頃、この元映画がタイ現地でVCD発売されたので、早速購入してみましたが、何とオリジナル版には譚道良が出て来ないんです。
となると、この譚道良出演場面は他作品の可能性大な訳ですが、以前、国内でビデオ発売された譚道良とサム・ジョーンズ共演作『ジャングルヒート』という作品があったのご存知ですか?このタイ公開版では、譚道良ではなくタイのアクション俳優、ソラポン・チャトリが主演なんです。多分、譚道良出演場面はここから『オマケ』として持って来たんじゃないかなと思います...。
ちなみに『ジャングルヒート』の英語圏用に作成された香港版プレスブックが手元にあるんですが、本当ならばベトコンに捕まった譚道良が水攻めを受ける場面があるんですが、そのプレスブックには何とソラポンが水攻めを受ける場面(写真)が写ってます。当然、元々の『ジャングルヒート』にはソラポンは出てませんので...。
IFD、フィルマーク作品は謎が多いですね。長々とすいませんでした!
>この元映画がタイ現地でVCD発売されたので、早速購入してみましたが、何とオリジナル版には譚道良が出て来ないんです。
オリジナル版を入手されたとは驚きです。元作品に譚道良が出ていないとは意外ですが、ソラポンの存在から考えると『ジャングルヒート』(残念ながらこちらは未見…)に何らかのヒントがありそうですね。
ところで『ジャングルヒート』といえば、アジア公開バージョン(『血染風采』)の存在を龍熱氏のブログで拝見した事がありますが、更にタイ公開版までもが存在したとは知りませんでした。
ひょっとすると、今回の特集で紹介した他のニコイチ映画の元作品にも、意外な正体を秘めた代物がある…かもしれませんね。