功夫電影専科

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ステイサム罷り通る(3)『SAFE/セイフ』

2017-06-18 22:58:44 | マーシャルアーツ映画:中(2)
「SAFE/セイフ」
原題:Safe
製作:2012年

●かつては凄腕の刑事、今は賭け格闘の選手として燻っていたジェイソン・ステイサムは、負けるはずの八百長試合で誤って勝利してしまう。
これに激怒した雇い主のロシアンマフィアは、ステイサムの妻を殺した上に“親しくなった人間を片っ端から殺害する”と脅迫。かくして四六時中監視される身となった彼は、浮浪者同然の生活を余儀なくされるのだった。
 一方、一度見た数字を完全に記憶する天才少女のキャサリン・チェンは、ジェームズ・ホン率いるチャイニーズ・マフィアに拘束され、アメリカで帳簿代わりに働くよう強いられていた。
彼女も悲惨な境遇に置かれており、唯一の肉親だった母から引き離されたばかりか、その母も程なくして病死。さらに不幸は続き、とある暗号を記憶させられたキャサリンは、その矢先にロシアンマフィアから襲撃を受けてしまった。
 地下鉄の中を必死で逃げ惑う彼女を目撃したステイサムは、眠っていた正義感を揺り動かしてマフィアを一蹴! そのままキャサリンを連れて逃避行を開始する。
だが、彼女の記憶した暗号は3000万ドルと重要な機密の鍵であり、ロシアンマフィアやチャイニーズ・マフィア、さらには悪徳警官までもが少女を狙っていた。四面楚歌な状況の中、孤独な2人はどこへ向かうのだろうか…?

 従来のハリウッドにおけるアクションスターとステイサムには大きな違いがあります。かつてシルベスター・スタローンやシュワルツェネガーは、その強靭な肉体をスクリーンに刻み付け、有無を言わさぬ迫力でハリウッドを席巻しました。
しかし、そのアクションは力強さが第一とされており、香港映画的なスピーディーで流れるような動作とは縁遠いものでした。のちに格闘特化型のヴァンダムやセガールなどが登場しますが、こちらも香港流のアクションとはスタイルが異なっています。
 香港流に対応できるハリウッドのスターと言えば、マーク・ダカスコスのようなB級どころのスターぐらい。そんな風潮が長らくハリウッドに漂っていましたが、『マトリックス』の大ヒットでアクションシーンに対するグローバル化が進み始めます。
その後、ハリウッドでは香港流の立ち回りが一般化し、アクションスターに要求されるスタイルにも変化が生じ始めました。ステイサムはその流れに順応し、あらゆるシチュエーションに対応できる柔軟さを身に付けたのです。

 本作は、そんなステイサムが全編に渡って無骨な殴り合いを繰り広げる、実に彼らしい作品となっていました。前半は彼とキャサリンがとことん追い込まれ、視聴者の焦燥感を煽る展開がこれでもか!と続きます。
そして地下鉄の一戦でステイサムは完全復活し、ここからは3つの巨悪を相手取った丁々発止のバトルが開幕。それまで好き勝手やっていた連中を容赦なくボコっていくステイサムの姿は、まさに期待した通りの勇猛さに溢れています。
 ところが最終的に2つのマフィアは壊滅せず、健在のまま物語は終了します。いくら凄腕とはいえ、たった一人で戦う主人公が巨大組織を潰すのは極めて困難なのでしょうが…あれだけ非道を尽くした連中が生き延びるラストは釈然としません。
特にステイサムの妻を殺し、彼を追い込んだロシアンマフィアの若頭が死ななかったのにはガッカリ。キャサリンを養子にしたレジー・リー(こちらも凄まじいゲス野郎)も、主人公ではなく後半から登場したアンソン・マウントに瞬殺されていました。
たとえマフィアのボスが無理でも、こういう敵キャラはステイサムが直々にガツンとやって欲しかったんだけどなぁ…(やり過ぎて余計な遺恨を残したくない、という主人公の考えも理解できるのですが)。

 もうひとつの問題がアクションにおける格闘シーンの少なさです。本作はアクションが濃厚なので見過ごされがちですが、銃撃戦がやや多めの比率となっており、あまりステイサムと互角に戦える相手もいません。
また、賭け格闘の選手という役どころにも関わらず、試合を行うステイサムの描写は序盤の僅かなカットのみ。ラストではようやくアンソンという強敵らしい相手が現れるも、両者の対戦は腰砕けな決着を迎えます。
 ちなみに本作でファイト・コレオグラファーを務めたのは、キアヌ・リーブスの『ジョン・ウィック』を監督したチャド・スタエルスキーなので、ここはビシッとタイマン勝負で決めて欲しかったですね。
ラストシーンが情緒的ではあるものの、色々と外してしまったポイントのある惜しい作品。私としては、そろそろステイサムがガチなタイマン勝負を決めてる姿を見たいので、次回は夢の対決が実現したリベンジ・アクションを紹介したいと思います!

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