功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

迫れ!未公開格闘映画(5)『Sworn to Justice』

2017-10-28 23:16:45 | マーシャルアーツ映画:中(2)
Sworn to Justice
製作:1996年

シンシア・ラスロックの登場は格闘映画にとって革命であり、香港映画界にとっても異例の事態でした。香港におけるアクション女優といえば、その多くが舞踊や京劇を立ち回りのベースにしており、必ずしも純粋な武術家ではありません。
しかしシンシアはバリバリの格闘家であり、空手や演武で数々の栄冠を手に入れています。順応性も非常に高く、香港映画という特異な環境に臆することなく挑み、その有り余るポテンシャルを遺憾なく発揮し続けました。
本作は、そんな超本格派のシンシアがアメリカに渡ってから撮った作品で、注目すべきは主人公と恋仲になる青年役に『シンデレラ・ボーイ』のカート・マッキニー(!)が扮している点にあります。

■ごく普通の心理学者であり、格闘技にも精通していたシンシアは、あるとき自宅を強盗団に襲われてしまう。妹と甥が殺害され、彼女自身も殺されかけるがギリギリで脱出。どうにか九死に一生を得るのだった。
悲しみに暮れる中、警察から妹の遺品であるブローチを返却された彼女は、犯行当時の様子を残留思念から読み取っていく。実はシンシアは格闘技のほかに超能力を会得しており、これを活用して自警活動を行っていたのだ。
 彼女はこの能力を駆使し、妹たちの仇を討とうと立ち上がった。事件を担当する刑事のトニー・ロビアンコ(往年の名優。元ボクサーだったためか劇中でチラっと格闘戦を見せている)は、その行動をいぶかしんでいるようだが…。
その一方で、シンシアは仕事先で知り合ったカートと親密になり、徐々に距離を縮めていた。ところが、仕事で立ち合った裁判で提示された証拠品が、強盗団に関与した物であったことが発覚する。
なおも敵に接近しようとするシンシアと、彼女の孤独な戦いに気付きつつあるカート。やがて自身の上司が謀殺されたことから、怒りに震えるシンシアは敵のアジトへと突入する。果たして敵の正体とは? そして2人の運命は…!?

▲カートは『シンデレラ~』でヴァンダムと激闘を繰り広げたことで知られていますが、残念ながらスターとしては成功せず。その後はTVドラマを中心に活動し、格闘映画への出演も本作のみに留まっています。
とはいえ、共演したシンシアとは思遠影業の擬似アメリカ映画(カートは『シンデレラ~』。シンシアは『レイジング・サンダー』)に主演した仲であり、このコラボは実に興味深いと言えるでしょう。
 また、本作にはかつての格闘スターが結集しており、『ショウダウン』ケン・スコット『キックボクサー2』ヴィンス・マードッコ『デスマッチ』イアン・ジャクリンが参加。この他にもマコ岩松などが脇を固めています。
…しかし、90年代の格闘映画では充実したキャストを使い潰す傾向にあり、本作でもこれらの格闘スターとシンシアはまともに絡んでいませんでした(涙
 まず期待されたシンシアVSカートは一切無く、手合せもジャレつく程度。ヴィンズは強盗団のメンバーですが、彼女と少し殴りあっただけですぐに爆殺され、イアンに至っては普通の修理工(ケンにぶっ飛ばされるだけ)という扱いです。
ケンは強盗団のリーダーとして立ちはだかり、ラストで棍棒を持つシンシアにヌンチャクで勝負を挑みます。ここでようやくまともな勝負が見られるかと思いきや、今度は黒幕が横槍を入れてきて勝負は中断…どこまでガッカリさせるんだよコレ!(号泣

 とはいえ、その後に控えているカートVSケンは“亜流『ベスト・キッド』同士の対決”でもあるし、勝負の内容も充実。全体のアクションもレベルが高く、香港時代を彷彿とさせる俊敏なファイトが見られました。
実は本作のアクション指導には、imdbによるとエリック・リーと共同で元德(ユエン・タク)が参加しているとのこと。同サイトの出演履歴には『Mr.マグー』などのハリウッド作品にもスタントで出演している…と書かれています。
 香港映画っぽい立ち回りもあったため、私は元德の登板というサプライズに驚いていたのですが、情報によると実際に参加したのは元德ではなく孔祥德(香港時代のラスロック出演作でも何度か動作設計を担当)なのだそうです。
彼は後半の修理工場における戦いでも、妙に強いザコ役(こちらも最初は元德だと勘違いしてました・汗)としてシンシアと対決。宙返りを見せ、派手に回転しながら車に激突したりと、メインキャスト以上の軽快な動きで妙に目立っていました。

 …と、なんだかアクションの事ばかり書いてしまいましたが、ストーリーの方はこれといって特筆すべき点はありません。ややサービスシーンに力を入れているようですが、それ以外はごく普通の格闘映画といった感じです。
超能力という奇抜な設定も、作品の雰囲気を壊さない程度の描写となっており、身の丈に合ったジャンルで勝負に出たスタッフの判断は間違っていないと言えるでしょう。まぁ、格闘スターたちの扱いは間違いだらけでしたが…(爆
そんなわけで、ちょっとだけ長めにお送りしてきた今回の特集も、次回でついにクライマックス! 今度は監獄から来た格闘王が挑む、最強最後のビッグマッチに着目します!

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2 コメント

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鼻の穴が見えない (白扇仔)
2017-10-29 21:17:20
こ門様お久しぶりです。

なぁにィ?!ラスロック VS 元徳 だってぇ? と慌てて動画をDLして見ました。
元徳にしては鼻の穴が目立たないし全然似てないんで、Douglas Kung で検索したら件のザコすぐ見つかりました。

孔祥德
http://hkmdb.com/db/people/view.mhtml?id=7666&display_set=big5

でした。こうなってくると『Mr.マグー』のスタント出演ってのも元徳かどうか怪しくなってきますね。

元徳ではないかと書かれていたザコ戦しかちゃんと見てないので、アクションシーン全部見た後でコメントするかもです。

P.S.僕が昔送ったVHSのレビュー早くやってください!
まずは『バトルマスター USAサムライ伝説』からお願いします。
そして、こ門さんのメルアドが変更になる前にメールしなくなったんで、現在のこ門さんのメルアドがわかりません(?)
僕のアドレスはそのままなんで、メールください、ドゾヨロシク。
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返信。 (龍争こ門)
2017-10-30 17:04:02
 白扇仔さんこんにちは、大変お久し振りです。
まず最初に申し上げますが、このたびはご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。
こちらの状況や今後の予定については、後日メールにて返答したいと思います。

>元徳にしては鼻の穴が目立たないし全然似てないんで、Douglas Kung で検索したら件のザコすぐ見つかりました。
 実のところ、私も確証が持てず「元徳のような違うような…」と思っていました。今回は更新に時間が割けず、リサーチ不足を露呈する結果となってしまいました。
該当の箇所は、また後日修正いたします。本日は貴重なご意見をありがとうございました。

>P.S.僕が昔送ったVHSのレビュー早くやってください!
>まずは『バトルマスター USAサムライ伝説』からお願いします。
 こちらについても、長らくお待たせしてしまい失礼致しました。
レビューについては年末まで予定が確定していますが、来月は余裕がありそうなので臨時の更新をしたいと思います。
何度も重複いたしますが、本当にすみませんでした。今後はこのようなトラブルが起きないよう、努めていきたいと思います。
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