不穏です。……という言い回しは前々回使ってしまいましたが、
「一触即発」
という程でもなさそうなんです。ともあれ険悪な空気が現場を包みつつあることは事実のようですが。
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前回の冒頭で官民衝突に触れました。確認できるだけで暴動めいたものが3件(河北省定州市、広東省東莞市、広西チワン族自治区南寧市)発生し、このうち定州と東莞で死者が出ました。特に定州の一件は『ワシントン・ポスト』(電子版)を通じて生々しい現場映像が全世界に流れましたから、御存知の方も多いかと思います。
バレちゃあしょうがねーなー、ということで定州市の党・政府部門のトップ(党委員会書記と市長)が早速更迭されましたね。バレていなかったらどうだったことか。中国肺炎(SARS)のときもそうでしたが、どうやら中共政権が唱える「庶民の為の政治」というのは、大規模な被害が出てそれが暴かれたら地元責任者のクビを飛ばす、ということのようです(笑)。
それにしても棍棒を振り回すは銃声が鳴り響くわで、画像はやや不鮮明ながら暴徒の朝駆けに遭って混乱する現地の空気をそのまま伝える物凄い映像でした。撮影者も負傷したそうですが、まさか農民がハンディカムなんかを持っている訳じゃないでしょう。例によって「官」による農地収用(発電所関連)、でも見返りの補償金は雀の涙(農民側の言い分)というお決まりのパターンで、以前から揉めていた問題のようです。
河北省は北京市に隣接していますから、海外プレスの目が届きやすかったのか、それとも法輪功とか民主化活動家、あるいは人権団体の地下ネットワークが捉えた情報なのか。そういえば昨年秋に河南省の田舎で起きた漢族と回族の武力衝突、あれも米メディアが素早く捉えていましたよね。おかげで外交部が会見を開かなければならなくなった。もちろん中国国内には内緒ですけど。
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バレちゃあしょうがねーなー、ということで中国国内メディアも写真付きで報じています。もっとも国営通信社・新華社のウェブサイト「新華網」では目立たない位置に置かれています。参考までに。
http://www.xinhuanet.com/chinanews/2005-06/14/content_4438144.htm
http://www.xinhuanet.com/chinanews/2005-06/15/content_4440210.htm
http://www.xinhuanet.com/chinanews/2005-06/15/content_4440213.htm
http://www.xinhuanet.com/chinanews/2005-06/16/content_4454238.htm
忙しかったせいもあって、私はこの事件をリアルタイムで追い切れなかったのですが、掲載写真からすると、北京の地元紙『新京報』が活躍したようですね。
しかし迷彩服で猟銃まで所持した「私兵」投入とは驚きです。これじゃまるで軍閥ではないですか。中国社会も来るところまで来てしまっていますねえ。まあ、これも「よくある話」のひとつに過ぎなくて、運悪くバレちまった、ということなんでしょうけど。
例えば村のボス(もちろん党幹部兼任)が気に入らない村民を黙らせるため、金で雇った襲撃部隊に相手の自宅を襲わせ、鉄パイプで殴りまくった挙げ句被害者とその妻をそれぞれ匕首でズブリ、という事件も起きています。
http://news.xinhuanet.com/legal/2005-06/16/content_3092815.htm
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まあ、以上は余談です。再び前回の冒頭に話を戻しますと、3件の暴動めいた騒ぎのほか、
「それに騒動に発展しかねない動きが他に2件燻っています。いずれも『官』の不正不義に『民』の側が反発したようなニオイです。」
という燻る2件のうちのひとつについて速報しておきます。今朝の香港紙『蘋果日報』(2005/06/17)の報道に拠っています。
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舞台は黒龍江省寧安市の沙蘭鎮。例の「200年に1度の大洪水」による土石流が6月10日に発生、児童(小学生)を中心に多数の死者が出たところです。はや初七日を迎えました。
問題はこの「多数の死者」なんですが、「新華網」の報道によると昨日の段階で103人ということになっています。
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-06/16/content_3094164.htm
ところが地元住民はそれを信じていない。200名はいる筈だということで遺体が安置されている寧安市立斎場に押し掛けました。が、入れてもらえないのです。完全武装したうえ盾を手にした多数の武装警察が斎場の門前を固めていて、それに遺族など群衆が対峙しているという状況です。遺族の入場を武力で拒むとは、何とも異様ではありませんか。
遺族を遺体安置所に入れないということから、当局が死者数を少なく発表しているという疑惑が流れています。当然でしょう。それに死亡が確認されていなくても、子供が帰って来ていない家庭があるでしょう。200名も荒唐無稽な作り話と一笑に付すことはできません。
という訳で、一触即発というほどではないにせよ、険悪な空気であることは確かです。
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15日にまず16名の遺体が荼毘に付されたのですが、このときも当局は早朝4時から斎場への道路を警官によって封鎖。その遺族といえども、火葬に関する協議書にサインしなければ中には入れてもらえませんでした。
この協議書というのがポイントなのですが、遺族は事故発生後、
●派出所及び地元政府関係者の責任を明らかにせよ。
●遺族に対する補償が薄すぎる(15万元)ため増額せよ。
との要求を出しているのです。
「もし関係者に手抜かりがなければ、上流の洪水情報が沙蘭鎮に達してから実際に土石流に見舞われるまでに、40分以上の時間があった筈だ。その間に児童たちを避難させることは絶対に可能だった」
というのが遺族側の言い分です。手落ちが疑われるような平素の怠慢な勤務ぶりを、地元が周知しているのかも知れません。が、沙蘭鎮救済報道官である王同・牡丹江市党委員会秘書長はこれに対し、
●関係者に手落ちがなかったかどうかは当局が調査に着手しているが、現在はまだ発表する段階にない。
●15万元という補償額は国内の類似ケースを勘案して定めたもので、増額される可能性はない。
と、ピシャリ。協議書へのサインはこれを受け入れることに他なりません。命の値段が15万元というのは、例えば炭坑事故死者の遺族には最低でも20万元が支払われています。相場相応の金額かどうかは私にはわかりません。
で、この「ええい黙れ黙れい」という取りつくシマもない「官」の姿勢に、遺族らは一カ所に集結して道路に座り込み、横断幕やプラカードを掲げたりと不穏です。もっとも「いまサインすれば5000元上積み」という手に軟化してしまった遺族も86名に達したようですが、「死者は200人に達している筈だ」という住民の声は消えません。そして座り込み、斎場の門前は武装警察が固めている。いずれにせよ、被災地に現出する光景とは到底思えない、というのが私の感想ですが、如何でしょうか。
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『読売新聞』(2005/06/17)が中国筋の話として伝えたところでは、「今年4月末、中国の地方メディアは、許可がないかぎり、所在地以外での他地方でのニュース取材を原則として禁止された。」とのことです。
「以前なら、他地域のメディアが被災地に殺到し、現地の情報が大量に速報されたはず。新しい指示が出てから、当局は情報を統制しやすくなった」(消息筋)
要するに体よくまとめられた新華社の原稿をそのまま使え、ということなのでしょう。その警戒網をかいくぐって、「狗仔隊」(パパラッチ)呼ばわりされる香港紙の記者が果敢に現地に潜入しては遺族に接触するなどして、新華社なら絶対伝えないであろう情報を発信している、ということに私は賛辞を惜しみません。だって発覚すればよくて送還、悪くすれば投獄ですから。かの定州暴動の映像を米国メディアに送った仕事にも頭が下がります。
あ、定州の一件は「官」が「民」を襲撃した(嫌疑が濃厚)もので、いずれにせよ襲われたのは現地住民ですから、暴動とはいえませんね。どう表現したらいいのでしょう。暴徒乱入でこの騒ぎですから、農民10万人が蜂起し、武装警察(あるいは武装警察の制服をまとった人民解放軍)2コ師団を投入してこれを鎮圧した昨秋の漢源農民暴動(四川省)の現場はどういう状況だったかと思うと、空恐ろしくなります。
言うまでもないことですが、漢源にせよ今回の定州や東莞や南寧の騒乱、それに水害被災地の険悪な空気は、中国国内メディアが必死にがなり立てている「反日」とはぜーんぜん関係ありません。こういう散発的な、火花を散らす程度の騒ぎで済んでいるから辛うじて社会の安定が保たれているに過ぎないのです。「反日」煽りなんかにかまけてて大丈夫なのかなあと思うのですが、これは余計なお世話でしたね。存分に煽るがよい(笑)。
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死人の話ついでに挙げておきますと、香港の親中紙『香港文匯報』(2005/06/17)が北京発の新華社電として伝えたところによれば、今年1-5月における中国の炭坑事故による死者数は早くも2000人を突破して合計2187人、前年同期比9.7%増だそうです。
http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0506170014&cat=002CH
まあ、そういう国であり、社会ですから。それで半世紀以上やってきている訳ですし、これからもその路線で走り続けるしかないという成長モデルで固まってしまっていますから。ええ、無理に無理を重ねて、目指すは「調和社会」(笑)。いや冗談じゃないそうで。
いずれ破綻が訪れるでしょうけどねえ。
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すいません。ちょっと不謹慎でした。
http://news18.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1119012963/
中国の前国家主席・前軍委主席の江沢民が重病で入院したという情報が、
この二日間インタネット上で流れている。
「黄寺大街(軍のHQである総政治部の所在地)報道」と署名された情報によれば、
江前主席は14日夜に緊急入院したという。
第4総部、軍委、北京軍区などの軍隊の重要リーダーらの動きに、当日夜から異変が見られ、
更に15日に総政治部に集まって会議を開いたという。15日夜9時から、
総政治部所在地近辺の安徳里(エンデリ)北街、黄寺(フアンシ)大街、
青年湖一帯大量の武装警察が増え、午後10時ごろ、
総参謀部、総後勤部(軍隊の供給部門)からの多くの車両が総政治部に入っていった。
総政治部の中では厳戒態勢が敷かれた。午前零時ごろ、総政治部から車両が出てきた。
情報によると、総政治部の厳しい警備態勢は、89年以来のものといわれ、江沢民は重病を患っているようだ。
http://www.epochtimes.jp/jp/2005/06/html/d77127.html
現体制によるテロを「白色テロ」というそうですが、共産国家が白色テロとはこれいかに。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BD%E8%89%B2%E3%83%86%E3%83%AD
ところで2ちゃん東亜ニュース板外電スレで面白い記事を見つけましたので転載。
<中国、青年参考、中文、6、15、日本見聞録> 日本見聞之三 書店里的中国
http://bbs.cyol.com/index2.php?forumname=%C7%E0%C4%EA%B2%CE%BF%BC%C2%DB%CC%B3&forumid=121&job=view&topicid=2638879
どんなデムパが来るかと思いきや、わりとまとも。黄文雄氏の名前まで出てくるし。
最後のほうで爆発していたのは、なんだったのでしょう?
個人的には天安門事件等の大規模な武力闘争以外今までこういう事件が表沙汰になることはあまりなかっただけに、正直状況が変わってきたという雰囲気を強く感じます。
さて、その上で質問なのですが、以前御家人さんが中国分裂の可能性を話題に取り上げていましたが、日本としては中国の統一継続と分裂、どちらが都合良いのですかね?
核兵器分散のリスクを考えたら今の状態で纏まって貰っていた方が何かと都合がよいような気がするのですが。
中国の分裂若しくは内戦状態になった場合(個人的には今でさえ)、核兵器の管理能力不足を追求しこれを放棄させるような状況に追い込みたいですね。もちろんその前段階として国連の抜本的な改革は必ずやらなければならないのは言うまでもありませんが。
中国の幼稚園で『軍艦マーチ』
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kok/20050618/mng_____kok_____003.shtml
「花咲かじいさん」でいいのにね
鶏に乱用、薬が人に無効 鳥インフルエンザで中国
http://www.sankei.co.jp/news/050618/kok078.htm
そこに痺れる、憧れるぅ!」
86 <丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´ )さん New! 2005/06/18(土) 22:10:33 ID:7Tr4EwGY
中国青海省: 鳥インフルエンザで121人死亡 家族集団失踪
http://www.epochtimes.jp/jp/2005/05/html/d37714.html
http://www.epochtimes.jp/jp/2005/06/html/d48211.html
75 <丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´ )さん sage New! 2005/06/18(土) 21:52:12 ID:h5Cp/aXo
中国では、米も遺伝子組み換え品らしいね。
もう、こっそり日本にも入っているかもしれないね。
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2005/06/post_a9a9.html
農薬付け野菜といい、遺伝子組み換えコメといい、中国産は危ねえぞ。
中国の遺伝子組み換えコメ
国内ではベタ扱いだったのが、中国の遺伝子組み換え(GMO:genetically-modified organisms)の
コメについて気になる話がロイターで流れていた。
”Illegal GMO rice spreads across China - Greenpeace”(参照)がそれだ。
http://www.alertnet.org/thenews/newsdesk/PEK13745.htm
中国米をコシヒカリと偽装 福井の業者に業務改善命令
http://www.kahoku.co.jp/news/2005/06/2005061501002613.htm
中国も問題ありが、国内にいるこういうバカが一番ムカつきます。
http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/biz/379206
こういう措置も多少は役に立ちそうですね。
>ただし、いずれもネガティブ表示(不利になるような表示)
>はしていなかったはず。>「○○県の契約栽培農家から直送した
>有機栽培のホウレンソウを使ったサラダ」
>と書いても、「中国産のホウレンソウを使ったサラダ」
>とは、わざわざ書かなかったのではないか?
中国産野菜=ネガティブって、今や常識だけど
記事にしちゃうなんて日経も変わりつつあるのでしょうか。
・二十日から韓国で開催される国際捕鯨委員会(IWC)年次総会を前に、中国メディア
が相次いで日本の捕鯨を強く非難した。中国政府はこれまで、捕鯨をめぐっては
日本の立場に同調してきたが、今回のメディアの論調は中国政府が従来の立場を
一転させる兆候か、と注目を集めている。
中国政府は、これまでIWC総会における投票では日本提案にほぼ賛成してきた。
日中関係筋によると、中国は野生動物の“消費大国”であることもあり、「野生動物の
持続的利用」の観点から日本の考えを支持してきたという。
しかし、今年のIWC総会を前に中国メディアでは日本の捕鯨を強く非難する論調が
目立ち始めた。十五日付英字紙チャイナ・デーリーは一面トップで「日本の捕鯨拡大
計画の阻止を」という見出しの記事を掲載。日本が訴える商業捕鯨再開に関連し、
IWC総会で反対するよう中国政府に求める研究者の意見を伝えた。これに先立ち
国営新華社通信(電子版)は十日、「われわれは鯨保護の呼びかけを強める」とした
うえで、「鯨はいかなる国にも属さず、乱獲は人類共有の海洋資源を破壊する」との
関係官僚の言葉を伝えた。
共産党の青年組織、共産主義青年団機関紙「中国青年報」(十三日付)も「毎年
二千トンの鯨肉をのみ込む日本が、公然と商業捕鯨を吹聴」と、日本を非難した。
国内のインターネットのサイトでも「日本の狂った捕鯨」といった非難の書き込みが
多く、商業捕鯨のノルウェー、調査捕鯨のアイスランドには触れず、日本だけを非難
しているのが特徴だ。
中国外務省の劉建超報道官は十六日の定例会見で、捕鯨に関して「積極的な保護と
合理的な利用が原則」と述べるにとどまった。
最近のメディアの論調と従来の政府の投票行動は明らかに「矛盾」しており、「日中
関係の悪化を背景に、中国政府の強い態度を国内向けに示した」との見方も浮上
しているが、日本の水産庁担当者は「中国は日本に同調してきた立場をひっくり
返すのだろうか。これまでにない中国メディアの非難の激しさは不可解だ」と指摘する。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050620-00000006-san-pol
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/news/20050621k0000m030053000c.html
http://blog.goo.ne.jp/punoisan/e/0d9786a2bdd99b3b9bf6593a45786895
北京五輪で変化 薬物密輸、カナダルート急増
http://www.sankei.co.jp/news/050621/evening/22iti001.htm
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