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一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『いのちの食べ方』

2009-06-26 | よしなしごと


原題は"Our Daily Bread"
大量生産のために機械化された野菜農場や養鶏場・養豚場・牛舎、そして加工場の様子を、ナレーションなし、BGMなしで淡々と映しています。

それだけに、雑音のなさ、作業員の少なさと会話のなさが際立ちます。

管理可能な状態で育てて機械的かつ迅速に処理するというのは衛生と効率にとっては理想的なわけで、それがここまで徹底しているからこそ、上の「アメリカ産ブロッコリー一束98円」というのが輸送コストをかけても実現するわけです。
映画ではトマトのハウス栽培(野球の室内練習場くらい広い)が出てくるのですが、トマトの苗自体が土に植わっておらず、ビニールで梱包した(多分保水性のある素材の)中に入っていて、上から吊るしたロープを伝って伸びています。
なので片付けるときは根元を切ってビニールのパックを回収して、枝葉は吊るしたロープごとカーテンのようにまとめて片付ければ以上終わり、という簡単さでした。


家畜についても、殺される動物がかわいそうと思うまでもなく、本人が死んだと気がつく前に解体されてパーツにされていた、というくらい効率的に処理されています。
(ちょっとかわいそうだったのは子豚の去勢のシーンでしたが)

近所にある漁港直送の魚屋で聞いた話では、魚は出荷前に活け締めにしないと傷みが早くなるそうで、しかも活け締めは血を抜くだけでなく神経も同時に抜かないと体温が上がってしまうんだそうです(反射運動のせい?)が、映画でサーモンの養殖を見ると、養殖池から大きなポンプで魚ごと吸い上げて一匹ずつベルトコンベアに乗せられると、一気に腸抜き、解体をされてしまいます。
こうなると職人芸の余地はないです。

牛豚鶏も、とてもシステマチックにから解体までなされます。
した牛は後ろ脚をつるしたまま一気に皮をはいでそのあとチェーンソーのようなもので真っ二つに左右に切り分け、そのまま片足から吊るされた半身ごとにラインを流れて加工されていきます。
(これだと脊髄も真っ二つになって問題部位が混ざるとしてBSEのときに問題になりましたね。)


「安全(特に衛生面)」と「安く」という消費者のニーズがこういう生産形態を作り上げたわけで、製作者もナレーションを入れずに観る人に自分で考えてもらおうとしているのだと思います。

大量生産の怖さをアピールするなら、さらに下流の工程、たとえばチキンマックナゲットがどの部位からできるかなどを追えばよかったでしょうし、逆に昔の屠畜場や食肉加工工場の映像を挿入し、天と地ほどの衛生状態の差を印象付けてもよかったわけです。


僕の感想。
安くて衛生的な食品が供給されること自体はいいと思いますが、工場化された生産工程がブラックボックスになってしまうことはないのか。
また、日本の農業は本当に太刀打ちできないのか、また、そうだとすると、より品質がいい、または手のかかっているものをきちんと評価した価格で購入する市場ができないといけない。
それから、趣味の世界で言うと、牛豚は内臓を捨てちゃっていたようなのですが、大量生産になるとホルモンとか新鮮なレバ刺しなど、多様な食生活はちょっと脇に追いやられてしまうのかな、と。


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