一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

後手後手の感じがします (フジテレビvsライブドア その10)

2005-03-15 | M&A
今度はポニー・キャニオン株の売却というのをぶちあげたようだ。

しかし、会社の資産を不当に安く売ったらニッポン放送の取締役は善管注意義務違反を問われてしまう。
なので、適正価格のストライクゾーン(第三者のFinancial Advisorに数字を作らせるんでしょう。)の中で低めぎりぎりであれば、「企業価値を維持するために必要」として、代表訴訟が起こされたとしても「経営判断の原則」(=企業経営にはリスクが伴うので、取締役には一定の範囲内の裁量権があり、判断自体が著しく不合理でなければ経営判断として善管注意義務を果たしている、という判例理論)を主張できるという考えなのだろう。

本当にそうだろうか?

後思うまず、経営判断の原則の前提には、その判断が株主の利益を目的としている、ことが必要(だったと思う)。
ところが、ニッポン放送の経営陣が言う「企業価値」というのは、発言を聞いているとニッポン放送株主にとっての企業価値をさしているとは思えない、という、仮処分でも「取締役の会社支配目的」と言われたところから一歩も出ていない感じがする。



つぎに、仮に百歩譲って「ニッポン放送の企業価値を守るにはポニーキャニオン株など保有株式をフジテレビに売却するのがbest」というのが正しいとしよう。

これはつまり、ライブドア傘下になったらフジ・サンケイグループとの業務提携が解消されるから、ポニーキャニオン等の会社の価値=ニッポン放送保有株の価値が下がるので、今現金化したほうがいい、ということ。
そうすると、「株式の売却代金(A)+ラジオ局としてのニッポン放送(B)」が残る。

ここで
①[A+B>ニッポン放送の時価総額]の場合
(村上ファンドの買収前はそうだった)、ニッポン放送の営業を誰かに譲渡して(買い手がつかない(B<0)だとするならつぶして)、会社を解散させるのが株主の利益にかなうことになる。

この場合は、(お互いにくやしいかもしれないけど)ホリエモンは利益を得ることが出来るし、フジ・サンケイグループもハッピー。困るのはニッポン放送の従業員だけ。
でも、そこまで高買いすると、フジテレビの株主が文句を言うだろう。

②[A+B<ニッポン放送の時価総額]の場合
Aを安売りしたのか、市場株価が企業価値を過大評価しているのか、という議論になる。
で、ニッポン放送側はライブドアが不当に株価を吊り上げた、と主張するだろう・・・が・・・ちょっと待てよ、そもそも最初にTOBをかけたのはフジテレビだったよね。とすると、フジテレビのTOB価格も高かったということか?それで38%も買っちゃったんだ!ということになる。

つまり、この場合も、フジテレビが「天ツバ」にならないためには、
(フジテレビTOB価格×発行済株式総数)<(A+B)<(時価総額※)
というところにおさまらないといけない。
※ できればホリエモン取得平均単価×発行済株式総数よりも小さければなおよい

本当にそんな絵が描けるのだろうか?


マスコミでは「クラウン・ジュエル」などと麗々しく書かれているが、フジテレビ・ニッポン放送陣営はその実かなり場当たり的な対抗策をとっていて、その乱暴な対抗策を舶来M&A用語でごまかしているだけのような感じがする。

実際はそんなスマートな戦略でなく、後手後手に回ったのでコテコテの対策をとっているだけじゃないのかなぁ(オヤジギャグですね)。


もっとも、アメリカ流M&Aを否定したはずのフジ・サンケイグループがアメリカ流M&Aの手法で救われたとしたら、これは岩井克人「ヴェニスの商人の資本論」の寓意と同じで、それはそれで面白いけど。


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5 コメント

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おはよ~さま (商慣行の変わり目か)
2005-03-15 05:13:39
経済問題は難しくて・・・・

この フジテレビvsライブドア の連載は、時々、拝見してきましたが、コメントが出来ませんでした。



でも、戦国時代の歴史をみているようで、面白いといえば面白いですね。両者の対決は。

たぶん、この出来事、今が、日本の商慣行の変わり目として、歴史に残るような気がします。
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それにしても (nori_992-07)
2005-03-15 05:16:14
いろんな手があるんですね。
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毎度です (go2c>nori)
2005-03-15 07:25:27
確かに、1企業の買収問題がここまで世間的な関心事になったということは、エポックメイキングなできごとですね。

今やワイドショーで「クラウン・ジュエル」ですから。
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クラウン・ジュエル (nori_992-07)
2005-03-18 22:54:08
「クラウン・ジュエル」とは、この記事を拝見してから、検索して、今、はじめて知りました。

あと、パックマン攻撃とかがあるらしいですね。



次は、TOBでフジテレビ狙いのようですね。
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M&A用語辞典 (go2c>nori)
2005-03-19 01:26:03
のようになってますね。

今度はLBOだそうで・・・

でも、普通はM&Aというのはこっそり、または(敵対的の場合は)奇襲攻撃でやるものなのに、ここまでおおっぴらにマスコミに取り上げられているM&A合戦っていうのも妙な感じもします。

反省も踏まえ、最近はライブドア関係の連打は自粛してますが、そろそろまた書いてみようかとおもってます(笑)
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