試乗車事故で販売員書類送検=スピード超過の指導怠る-警視庁
(2008年8月27日(水)12:30 時事通信)
車試乗の際に適切な指導を怠ったため、事故が起きたとして、警視庁東京湾岸署は27日までに、業務上過失傷害の疑いで、後部座席に乗っていた東京都品川区にあるメルセデスベンツ販売店の男性販売員(38)を書類送検した。試乗車による事故で、販売員が立件されるのは異例という。
調べによると、販売員は6月15日、男性会社員(23)にベンツを試乗させた際、「アクセルを踏むと、すぐにスピードが出るので気を付けて」などの助言をせず、事故を起こさせた疑い。
会社員は同日午後1時40分ごろ、品川区八潮の制限速度50キロの都道を約150キロで走行。前の車を追い越した後、道路左側を走行中の男子大学生(20)=練馬区光が丘=が乗った自転車に追突した。大学生は現在も意識不明の重体という。
時速150kmというのは「アクセルを踏んですぐに」到達する速度ではないので(チューン版のAMG SL-65(受注生産で3000万円する)でも0-100km/h加速で4.2秒かかる(参照、こちらの真中やや下)ので一般道で150km/hに達するには相当意図的にアクセルを踏み続ける必要があります。
試乗した客がそういう常軌を逸した行動をした場合、後部座席にいる販売員は(たとえ助手席にいたといても)口頭で制止するしか方法はないように思います。
だとすると、素人考えでは、業務上過失傷害とするには、過失(上記助言をしなかったこと)と事故との因果関係が弱いのではないかと思います。
ただ、警察も「本線」は販売員がスピードを出すようそそのかしたというところに置いているのかもしれません。
「東京都品川区にあるメルセデスベンツ販売店」はオフィシャルサイトによるとメルセデス・ベンツ品川(株式会社シュテルン品川)だけです。
地図を見ると、販売店は「しながわシーサイド」駅の北側の海岸通り沿い(「海岸通り」の「海」の時のちょっと北)にあり、現場の「品川区八潮」は地図の中央です。このへんは倉庫街なので直線道路が多く、スピードを出しやすくなっています。
なので、そもそも販売店側がスピードを体感できる試乗コースとしてここの道に連れ出したのではないか、またはそれを販売店の売り物にしていたのではないか、と疑うに足りる状況証拠(たとえば頻繁に暴走するベンツが見られるとか)があったのかもしれません。
少なくとも、「意図的にこのコースに連れ出して加速を体感するよう促した」とか「このコースに連れ出せば猛スピードを出す試乗者が多いのに事前に注意しなかった」というようなことでもない限り業務上過失傷害での立件は難しいような感じがします(あくまでも素人考えです)。
これについて産経新聞はに共感的な記事を書いています。
ベンツ試乗事故 安全軽視「販売至上主義」に警鐘
(2008年8月27日(水)08:15 産経新聞)
今回のケースでは、試乗車が排気量6000cc以上という車種だったことが災いした。「こうした車では新車を買いたいという目的以上に、排気量の大きいエンジンを体感したいという欲求が試乗の目的になりかねない」(捜査幹部) アクセルを踏めばすぐにスピードが出る。スピードを出すよう指示してはいないにせよ、ディーラー側は考えられる“暴走の危険”に対し、あまりに無自覚だった。
ここまで言うなら、そもそも日本国内では制限速度は最高で100km/hなので、すべて自動車は120km/hでリミッターをつけるべき、という主張の方が筋が通っていると思います。
今回がそうかどうかはわかりませんが、マスコミは警察の“暴走の危険”に対して自覚的であってほしいものです。