一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

相手の立場になって考えましょう (フジテレビvsライブドア その11)

2005-03-16 | M&A
とりあえず昨日の出来事のまとめ

<その1>
ニッポン放送の経営掌握目前に=ライブドア、村上ファンドと連携で
「ライブドアによる持ち株比率は46%を超えたとみられ、同社と村上ファンドが連携すれば実質的に株式の過半数を押さえることになる」という時事通信の記事ですが、村上ファンドは3.44%なので、微妙なとこですね。
ホリエモン+村上氏の性格から言っても、この時点で過半数を取得していたら、もっとぶち上げるんじゃないでしょうか。

個人的には委任状をとれば勝てるという過半数ギリギリあたりのほうが、ホリエモンの「金の力」でない「人間力」が試されるので興味あるのですが。


<その2>
blogを見るとTOB応じた東電に株主代表訴訟の可能性という記事に拍手を送っている人が多いけど、ちょっと考えて欲しい。

もし自分が株主で、16万株持っているとすると、TOBに応じないことも結構なリスクだ。
TOBに応じない場合のシナリオとしては以下のことが考えられる。

(1)TOB完了まで継続保有
この場合以下の5つのシナリオが考えられる。
① TOBが大成功してフジテレビが過半数の株主になる。
この場合、ホリエモンは1/3超を持ち、にらみあいになるだけで、株を買い進むインセンティブがないので、株価は下がる
② ホリエモンもTOBに応じて手仕舞いする
この場合も株価は下がる
③ TOBでは過半数いかないが、新株予約券発行でフジテレビが2/3超をおさえる
この場合、ニッポン放送株は上場廃止になってしまうので、フジテレビと株式交換でもしない限りは流動性が極めて乏しくなる
④ TOBで過半数いかず、ホリエモンとの市場での株式争奪戦になる
この場合、株価は上昇する。
⑤ TOBが成功せず、ホリエモンが過半数を握る
この場合も株価は落ち着く

つまり、現実に起こった④以外はTOBに応じない場合に損をする可能性があったわけ。

(2) TOB期間中に市場内で売却する
この場合、ホリエモン参入が明らかになった直後を除くとニッポン放送株の出来高は30万株程度であるので、1日に16万株売りに出すのはリスクが高い。
また、村上ファンドの動向も不透明であり、バラバラと売りに出しているうちにいきなり⑤になってしまう可能性もある。

なので、東京電力としては、今回のTOB応募にあたって不合理な経営判断をして株主に損害をかけたとまでは言えない、と思う(経済原理に沿っているなら、取引先に好意を示すこと自体はおかしくはない)。

株式会社の経営者は、利益を得るためには一定のリスクを取らなければならないし、いちいち結果責任を問われると企業経営が萎縮してしまう。したがって、株主代表訴訟においても、取締役の意思決定が会社の利益を目的として、著しく不合理でない限り善管注意義務違反にはならないという「経営判断の原則」が判例となっている。

なので、トヨタ自動車のように、「一方に肩入れするのは企業イメージ上よくない」ということで、株の損得は抜きにして誰にも売らない、という判断も許されると思う。


東京電力の取締役はライブドアのためでなく東京電力の株主の利益ために意思決定をするので、「ホリエモンなら高く買ったのに」というのは根拠のない期待だし、「フジテレビに味方しやがって」というのは言いがかりに過ぎない。

また「電力事業の公共性」を言うなら、「TOB合戦に中立であるべきだ」という立論はおかしくて、そもそもニッポン放送株などという事業と関係のない投資有価証券を持っていること自体を問題にすべき(「こんな株を持っているからつまらない喧嘩に巻き込まれるんだ」)だ。


なので、東電の代表訴訟に喝采を送るのは、贔屓の引き倒しだと思う。


フジテレビ・ニッポン放送のやり方は既存株主を相当軽視していると思うけど、ライブドアに味方する場合にも、一度は相手の立場になって考えないと、フジテレビ側と同じになってしまう。



これだけblogで議論が盛り上がっているわけだけど、これを「便所の落書き」で終わらせてしまうのか、何らかの影響力をもたせることができるのかは、決してそれぞれの専門知識の深さではなく、素人は素人なりに一生懸命考えるかどうかにかかっていると思う。

僕も思いつきをダラダラと書いてはいますが、
せめて
「衆なれど愚ならず」
ではありたいと思っております。
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