一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

西表島 ユニマット(南西楽園)への訴訟 

2006-03-30 | よしなしごと

西表島リゾート開発、住民側敗訴 「ネット原告」は適格
(2006年03月28日12時56分 朝日新聞)

 沖縄県・西表島でユニマット不動産(東京)が建設したリゾートホテルによって貴重な自然が破壊されるとして、島民や支援者ら463人が同社を相手に開発差し止めや建物撤去などを求めた訴訟の判決が28日、那覇地裁であった。窪木稔裁判長は「原告が侵害されたと主張する人格権(文化的環境享受の利益)は立法のない現時点で肯定できるか疑問」などとして請求を棄却した。
 インターネットでの募集に応じ、国内外から訴訟に参加した支援者らに原告適格が認められるかが争点だったが、判決は原告全員に適格性を認めた。
 判決によると、ホテルは島北部のトゥドゥマリ浜にあり、開発予定の総面積は6万3000平方メートル。04年7月に一部がオープンしている。一帯は国立公園地区に隣接し、国の特別天然記念物カンムリワシなどが生息。原告は「世界的価値のある自然環境を保持したいという心情は精神的人格権として法の保護に値する」と主張していた。

以前ユニマットとリゾート開発について記事にしたところ、継続的にアクセスをいただいておりまして、たどってみるとこの記事が 反対運動のサイトのBBSで引用されていたようで、この問題への関心の広がりを感じていました。
※僕の記事自体は、この前のYUSENに関するものと同様、温故知新(単なるほじくり返し?)風にユニマットの昔の「やんちゃ」についてふれたものです。

新聞記事だけでは今ひとつよくわからなかったので原告団のHPにある 訴状を見てみました。ポイントを抜粋すると

4 本件リゾート開発手続における法規違反
 本件リゾート開発は、その手続上、複数の関係法規に違反しているものと見られるが、少なくとも、森林法に違反するものであることが明らかである

5 西表島及び本件リゾート開発計画土地の自然的、社会的特異性
(1) 概要
ア 西表島は、国内最大級の規模の亜熱帯原生林と、世界的に見ても極めて貴重な生物多様性を保持する生態系を有し、かつ、離島という環境の中で独自性の高い文化・社会的環境を育んできた島である。そこでは、自然環境と、これを守り共存してきた人間の文化とが融合し、これらが有機的に関連して一つの生態系を形成しており、いわば、人類の共有財産として、それ自体、単なる学術的価値を超えた、極めて高い、社会的、文化的、精神的価値を有している。

6 本件リゾート開発による環境破壊ないしそのおそれ
(1) 総説
 第3項(2)記載のとおり、本件リゾート開発計画は、5つのプロジェクトから成り、事業面積13万4849㎡に及ぶ大規模なものである。(中略)
 他方、前項に記載した、西表島の自然、文化、社会環境は、島の大部分が亜熱帯原生林に覆われ、地理的に孤絶した離島という条件下で、大規模な人為的開発が行われることなく、住民が、自然と調和の取れた生活を送ってきたことにより、形成されたものである。(中略)
 したがって、このような環境下において、本件リゾート開発計画のごとき大規模な開発が、自然的、文化的に、特に脆弱性の高い、若しくは高度の保護を必要とする場所において行われるときは、西表島の自然、文化、社会環境に対し、回復不能な、かつ壊滅的な影響を及ぼすおそれがあるとともに、住民の生活環境に対し、極めて深刻な被害をもたらすおそれがあり、現に、本件ホテル建築工事の進行に伴って、かかる被害が現実化しつつある。

7 前記環境破壊による人格権等の侵害ないしそのおそれ
(1) 総説
 前第6項記載のとおり、本件ホテル建築をはじめとする、本件リゾート開発計画が実施されるところとなれば、西表島の自然環境、文化、社会的環境、及び同島住民の生活環境を破壊し、回復不能で、かつ甚大な被害を生じることとなることは、明らかである。これによる権利侵害は、人格権に基づく利益の侵害としては、住民の生活諸利益の直接的な侵害の外、文化的環境を享受する利益の侵害、宗教的心情をみだりに侵されない利益の侵害、同島の自然、文化、社会的環境の破壊のために、学問的活動領域を失うことによる、これを保持すべき利益の侵害や、かかる世界的共有財産ともいうべき価値の高い環境を精神的支えとする人格的利益の侵害等が、それ以外の権利に基づく利益の侵害としては、住民の入会地である浦内川河口域を汚染すること等による入会権の侵害が、同島の自然的、文化的環境を破壊することによる良好な環境を享受する利益の侵害が、それぞれ生ずるのであって、その範囲は、侵害の及ぶ地理的ないし人的な観点から見れば極めて広範囲に、侵害を受ける権利の観点から見れば極めて多岐に及ぶ。

8 結論
 よって、原告らは、前項記載の各側面における人格権並びに入会権、環境権に基づき、被告らに対し、本件リゾート開発並びに本件ホテル建築等の差止を求めて、本訴提起に及ぶものである。

 また、原告弁護団の解説「西表リゾート開発等差止訴訟の訴状について 」を見ると、本件訴訟の解説として

3 請求の根拠の基本的な考え方
人格権・入会権・環境権に基づく妨害排除請求権による、権利侵害行為の差止め
(1)仮処分段階との相違

(ア) 差止請求を基礎付ける権利侵害(被侵害利益)を広く捉える。 仮処分での被侵害利益は、住民の生活上の利益を中心に、副次的に自然環境破壊を主張するものであったが、本訴では、自然環境の破壊を出発点として、島の自然環境・文化環境・社会環境及び住民の生活環境が広く破壊されることによる、日常生活上の諸利益、入会権、宗教的人格権、環境享受権、学問的活動領域保持の利益、環境権等、極めて多様な権利侵害が発生することを主張する。

(イ) 権利侵害を主張する人的範囲を拡張する。 西表島住民の生活上の諸利益を中心とする、同島住民に対する権利侵害が、本訴でも主張の中心となることには変わりないが、精神的人格権としての環境享受権(正確には、自然的・文化的環境を保持する利益)、学問的活動領域保持の利益、環境権を媒介として、地理的限界をなくし、このような人格権・環境権の侵害を主張するすべての個人に原告となる権利があることを主張する。 (中略)

(2)請求を基礎付ける、西表島の特殊性

(1)のような被侵害利益及び権利主張者の人的範囲の拡張が可能となるのは、その基礎に、西表島の環境の特殊性に対する、次のような理解がある。
(ア)自然環境の特異性ないし固有性(省略)
(イ)生態系の有機的一体性(省略)
(ウ)生態系の脆弱性(省略)


(3)地理的制約を設けない権利主張がなぜ可能か
 本件訴訟の、従来にない特色として、西表島の環境破壊を憂慮する個人は、居住地・国籍を問わず、誰でも請求が可能であると主張している点がある。これは、次のような理解に基づく。
 そもそも、人格権は、生命・身体から精神活動に至るまで、人の人格にかかわる利益を総体として捉えたものである。そこには、精神面における、人間としての尊厳の保持の利益が含まれる。(中略)
 このように、人格権、とくに精神的人格権は、新たな権利を生成する母胎として機能を有する。(中略)
 人格権に基づく主張は、損害の事後的回復措置である損害賠償請求に限らず、事前の差止請求まで可能である。これは、いわゆる大阪空港訴訟最高裁大法廷判決以来、確立した法理となっている。このような差止請求の主張は、従来、生命・身体に対する侵害を根拠として主張されてきたが、理論的には、精神的人格権を根拠とすることも可能である。(中略)
 精神的人格権を根拠として主張する場合、理論的には、地理的な制約はあり得ない。(中略)
 本件では、原告らは、西表島の自然的・文化的環境を破壊する行為が、同島の環境を貴重なものと考える個人の精神的人格権を侵害する行為であることを主張している。これは、同島の自然的・文化的環境を保持する利益が、上記のような意味での、精神的人格権の一つとして、法的保護に値するものであるとの理解に基づく。
 このような主張を可能にするのが、(2)で述べた、西表島の環境の特殊性である(中略)

とあります。

 素人の感想としては、原告の「気持ち」が優先していて、何が法的保護を受けるべき権利で、それが具体的にどのように侵害されているかを裁判官に対して法律上の理屈で説得力を持ってまとめきれていないように思いました。
 「西表島の自然的・文化的環境を破壊する行為が、同島の環境を貴重なものと考える個人の精神的人格権を侵害する行為である」という論理は、それが法的利益として認められて、土地所有権を元に建物(=リゾート施設)建設を止めるというのはいかに「権利の行使は公共の福祉のよる」であっても説得力が足りないのではないでしょうか。
 解説を見ても、今回の訴訟の新しさをアピールしているものの、訴訟という手段をとって何を勝ち取りたいかというところが残念ながら伝わってきませんでした。
そもそも憲法上の人格権とか幸福追求権からいきなり損害賠償とか差し止めをするのはハードルが高いわけですから(つまり「わたしはこれが不愉快だ」というだけで幸福追求権の侵害として訴訟をいちいち起こされても司法としてはたまらないわけで、具体的に民法上の所有権とか債権とかが侵害されたという立証が必要なのが通常です)「訴訟をすること」が自己目的ならともかく、本当にリゾート開発をとめようとするための理論構築が足りないように思います。

 また、今回「ネットで集った人々にも訴訟の当事者適格が認められた」ということですが、裁判所としたら「こういう広範囲な訴訟があるならば原告適格は認めてもいいが、結局差し止めのハードルが高くなるよね」という程度の事なのではないでしょうか。


傍からの無責任なコメントですが、本当に訴訟をするなら、(思いつきですが)排水の放流禁止とか、保護林の原状回復というように焦点を絞って相手の非を主張しやすく、かつ、喉に刺さった小骨のように相手に確実にダメージを与えるような戦略を取ったほうがいいのではないかと思います。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 皆既日食 | トップ | 新日鉄の買収防衛策 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

よしなしごと」カテゴリの最新記事