履修不足問題のつづき。
未履修生徒の救済策検討 首相が文科相に指示
(2006年10月28日(土)11:49 共同通信)
安倍首相は27日、官邸で記者団に「子どもたちに原因があるわけではなくて、学校側に原因があり、教育委員会もチェック機能を果たし得なかったことに問題がある」と指摘。その上で「子どもたちの将来に問題が発生しないよう対応すべきだと考えているし、そのように指示している」と強調した。
このように受験時期の生徒の負担や完全履修した生徒との公平を考えて補修の要件の緩和などが検討されているようです。
文部科学省は学習指導要領の法的拘束力にこだわり、今回が「蟻の一穴」になるのではと当初強硬姿勢を打ち出して逆に批判を浴びているようです。
でも、最近の「事前指導型から事後監督型へ」で、授業内容は基本的に自由にして内容を事後的に監視して不適当な学校には認可取り消し等のペナルティを、という方法はコストがかかりすぎるし、その時点の在校生への問題もあると思いますので、難しいところです。
結局今回だけの特例措置、ということになると思います。
ただ、学校への事後的なペナルティはかなり厳しそうですね(文部科学省が恥をかかされた、という反動も含めて)。
「生徒に罪はない」という発言も報道で見られるのですが、高校生ってそんなに無辜なものなんでしょうか、というのが今日の本題。
特に進学校においては、そもそも生徒と学校ってある意味「共犯関係」なんじゃないでしょうか。
以前、会社の若い奴に聞いた話ですが、彼の学校では推薦枠を有効に活用するために受験しても確実に合格する生徒は国立大学を受けさせ、2番手の生徒を推薦する、というようなことをしていたそうです(あ、ここでもレモン(※)がw)。
(※)こちらの記事の末尾参照
生徒の方も、自分より出来る奴を「東大/京大でも大丈夫だよ」などとおだてたり、教師にアピールしたりして、自分は推薦枠を獲得するなどの駆け引きが繰り広げられていたとか。
そして、推薦組には内申の水増しもあったり・・・
なので
履修漏れ、調査書も虚偽 大学は入試でどう判断?
(2006年10月28日09時57分 朝日新聞)
などという記事もありますが、大学側もうすうすは感づいていたのではないかと思います。
その代わり、入学後の成績が悪いと、その学校の推薦枠を減らすことでレベルをコントロールしていたようです(上の彼も大学で単位を落としそうになったら学生課から呼び出しを受けてプレッシャーをかけられたとかw)。
結局、(有名)大学合格者数を増やすという中で生徒も学校も融通を利かせあっていたわけで、生徒も他の学校の生徒と話したりすればわかるけど「ラッキー」くらいに思っていた部分があるのではないかと思います。
また、高校も当然世の中の縮図であって、理想郷の中で保護されているなどとは高校生自身も思ってはいないはずです。
なので
「補習出ない」「学校ふざけるな」 履修漏れ、受験生ら
(2006年10月28日13時47分 朝日新聞)
などというのは、ちょいと調子に乗りすぎか自分の立場がわかっていないですよね。
こういうことを言う奴にはきっちり満額の補習をさせるべきです。
そもそも高校の存在目的が大学受験だけでない以上、進学校のメリットを享受するということは、どこかでデメリットを受ける可能性はあるわけです。
そして、組織が下手をうつと構成員がとばっちりを喰らうというのは、社会に出ればよくある話です。
そのへんの覚悟は若いうちから持っていたほうがいいと思います(日本の若者に必要とされている「企業家精神」もつくんじゃないでしょうか)。
また、何らかの救済措置がとられるようですが、ここでは「事情判決」的な考え方や銀行への公的資金注入をめぐる議論を追体験できるわけです。
ここでドキドキしながらも、何でこうなったんだろうか、とか履修済みの生徒と未履修の生徒の公平についてとか、いろいろ考えることはいい経験になるのではないでしょうか。
高校生なんだから、あまり過保護にせずに、逞しく育ってもらうことを期待したいです(でも"Too big to fail"だといって開き直ることだけ覚えてしまっては困るけどw)。
私の一つ上の世代では、学園紛争で東京大学の入試が取りやめになり、浪人したり希望と違う大学に進学した人たちがいます。
これなんか自分たちのせいではなく、完全に先輩のとばっちりですよね。
※ そういえば、このことで後輩に迷惑をかけたことについてすまない、と言っている人は見たことがないですね
それに比べればなんぼか「まし」じゃないでしょうか。
受験勉強しながら家庭科(世界史だけでなく家庭科の未履修もあったそうです)の補習を受けたなんて、トシを取ってから話の種にもなるし、ね。