最近の食品偽装騒動では、はからずも バナメイエビ と クルマエビ の違いとか、イセエビと「科」は同じだが「属」が違うアフリカミナミイセエビ など魚介類の品種にやたら詳しくなってしまった。
こういう偽装や無知に基づく誤表示がまかり通るのは、 「クルマエビ」や「イセエビ」という品種そのものについては、 その良さをPRしたり偽物から守ったりと積極的に行動するメリットがなく、 「ただ乗り」をしてしまう、いわば「共有地の悲劇」の一形態のように思う。
たとえば「関サバ」「関アジ」であれば佐賀関漁協が積極的にPRし、商標登録をして他人のただ乗り を許さず、ブランドになっている。
そのため同じ豊後水道で獲れても愛媛県側で水揚げされたものよりも 高く売れている。
「大間のまぐろ」もそうで、これに対しては同じ海域で漁をする北海道の戸井では、 処理を迅速にして品質を保つことで「戸井のまぐろ」として対抗している。
ところが「クルマエビ」や「イセエビ」という名称は品種そのものであり、獲れる漁場が限定されているわけでもないのでどこかの漁港の特産というわけではない。
しかも品種の名前だけでは商標登録もできない なので、漁業関係者や食品業界にとっても、コストをかけて積極的に偽物を排除する動機づけが働かない。
これは「和牛」などについても同様。 (もっとも牛肉は狂牛病騒動以降トレーサビリティが徹底しているので、もっぱらレストラン側の問題 ではあるが)
しかし、今回のようにいい加減な表示が横行しているということが明らかになると、市場全体の信頼が損なわれる「レモン市場」問題が起きる。
ブランドや登録商標になっていれば、ただ乗りを排除するために努力する当事者がいるのだが、「何となくいいイメージを持っているもの」のイメージにただ乗り-ただ乗りだけなら問題ないのだが、それをするためにウソを つくこと-を排除するには、供給者側の自主規制や相互監視くらいしか方法がない。
法律的にも景品表示法の優良誤認とか、ひどいものなら刑法の詐欺罪に訴えるしかない。
行政にどうにかしろ、といっても、そんなことに税金を投入するのは無駄であるし、 行政は食品の安全や衛生面を責任を持って見るのが本来の仕事で、 表示については 「銀ムツ(メロ)」 のように広く誤解が生じるようなものを是正すればいいだと思う。
なのでわれわれ消費者としても、「そういうものだ」という前提で、自分が食べるうえで 味と値段が納得するものであればいい、 というくらいのスタンスで臨めばいいと思う。
「素人のキャバクラ嬢」という触れ込みに対するスタンスみたいなもので、 承知で騙されることを楽しむのならいいのだけど、そもそも形容矛盾のイメージに一方的に期待して、 挙句の果てにむかっ腹を立てるのは、みっともないだけでなく、精神衛生上もよろしくない。