国無形重要文化財に指定されている、遠山郷の霜月祭りが始まりました。
幾つかの神社がそれぞれの形で伝承している湯立て神事です。
星に手が届きそうなくらい明るく瞬いている、静寂で真っ暗な遠山郷の夜
R152号から少し山の中に入った中郷の正八幡神社、
ここだけは明かりが灯り、中から人の声が聞こえています。
(詳しい祭りの内容等については遠山観光協会のホームページ等ご覧ください)
遠山郷とは現飯田市上村と南信濃村を含む赤石山脈と伊那山地に挟まれた中央構造線に沿ってできた峡谷ですが、
この、赤石山脈と伊那山地に挟まれた大鹿村やこの遠山郷などは、
車で行き来できるようになるまでは、それはそれは厳しい生活をしていたのだろうと想像できる地域でもあります。
狭く急峻な土地を開拓し、農耕地を作り、生きて行くために、
自然に逆らうのではなく、自然の中の神からエネルギーをもらって生きる
こうした厚い信仰心が素朴でどこかコミカルで、
村人が一体となれる祭りを作り上げて来たのかもしれない。
この祭りにはいろんな神様が登場します。
そしてこの地で滅びた遠山土佐守一族の霊を鎮める鎮魂の儀式に加えて、
後半には幾つもの面(おもて)が登場します。
この小さい神社の中は、一晩中神事が行われ、
まるで、それは異次元の世界に迷い込んだかのような錯覚を覚えます。
例えば生活圏と違うアルプスに登った時、(こんな世界もあるのだ!)という感動を覚えるような、
時代を越えて受け継がれて来た(こんな祭りがある地域があるのだ!)という感動。
それは大鹿村も同じですが、きっと大きな山脈に挟まれた隔離された地域だったからこそ残されてきた尊い祭りなのだろうと思うのです。
太鼓と笛の音は止むことなく何時間も鳴り響き、
神様を迎えるための神事が滞りなく行われ、
時間を見るともうすぐ明け方の5時になろうとしています。
これから登場する面を付けた人たちの準備が整ったようでした。
「おじいとおばあ」「四面」「遠山の神様」
そして、湯切り、天伯様の登場。
これからがクライマックスです。