「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

プロローグ(1)

2005年11月16日 09時25分16秒 | 「境界に生きた心子」

 <元気ですか? とても寒いね。
  暖めてほしい、あなたの心と体で……いつでも、どこにいても>
 <今電話したけどお留守でした。早く帰って。わがままでゴメンナサイ。
  そばにいてほしいの。逢いたいの。包んで欲しい>
心子(しんこ)からのメールだ。
 <マー君、マー君……辛い時いつもそう呼ぶの。マー君助けて!>

村瀬心子、三十五歳。彼女は身も心もその年齢とは無縁だ。優に十歳以上は若く見える。
 小柄でくりっとした目が愛くるしい。純情でセンチメンタルな童女の風情を漂わせる心子。
 電話で出しぬけにこんなことを言ったこともある。
「お願いがあります。一杯愛して。もうこれ以上いらないっていうくらい、一杯愛して」
 心子は限りなく満たされた、完璧な愛情を熱望している。

(続く)


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