「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

家族とBPDに関する研究 (2)

2013年10月01日 20時39分59秒 | 「BPD最新ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

○ さらなる説明モデル

 研究論文では、

 幼少期の虐待, 養育放棄, 見捨てられた経験を 重視していますが、

 その大半は 患者自身の記憶による 報告に基づいています。

 それに従うと、 BPDの人の親は

 他の親より 多くの虐待をしていることになります。

 さらに、 虐待への対処機制として解離や、

 ストレスへの過敏さが 生じると考えられます。

 ところが、 BPDの遺伝的素質の存在が 認められています。

 BPDの素質を持つ人が、 通常の養育環境や 罰に対して 例外的に敏感で、

 その結果、 虐待されたという極端な記憶を 持つようになったのかもしれません。

 この傾向を持つ人が 扱いづらい子供であり、

 親が消耗して、 わが子に八つ当たりするのかもしれません。

 子供は 生まれながらにして、

 扱いやすい子, 扱いづらい子, 人を受け入れにくい子の、

 3つの範疇に分かれるとされます。

 扱いづらい子は、 過敏で、

 他の子と異なる 生物学的特性を持っており、 親と頻繁に争いが生じます。

 境界性・ 自己愛性パーソナリティ障害の 素地のある子は、

 他者を操作する能力はもちろん、 非常に欲求が強く、 自己中心的であり、

 人並みはずれた 感受性と反応性を 持っていると言われます。

 自己報告による研究では、

 BPDの人は 養育者に充分な絆を 感じていないといいます。

 BPDの特徴によって、 不安定な愛着と 親の養育が足りないという認識が、

 幼少期の不幸な体験から 説明できないほど強くなることが、 明らかにされました。

 BPD患者の親が、 実際に思いやりがなかったのか、

 それとも 生物学的要因によって、 BPDの人が 親との絆を築きにくかったのか、

 判断するのは困難です。

 彼らの親のほうは 疎外を感じていないと報告されています。

 BPD患者は 他の患者と比べ、

 人との交流で 誤解や誤った記憶を 生じやすいことが明らかにされました。

 破壊的な性的関係に 巻き込まれやすく、

 愛情を求めて 不適切な性的関係や 満たし得ない期待に走り、

 裏切られたと感じるのです。

 これらの記憶が、 性的に虐待されたという 確信を導くのでしょう。

〔 「境界性パーソナリティ障害最新ガイド」 星和書店 (林直樹訳) 〕より
 


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