境界性パーソナリティ障害の回復において、
それまでの人生を振り返り、 出来事に どういう意味があったかを、
ひとつの物語として 統合していくことが、 大きな山場となります。
それは 自分をめぐる 家族の歴史全体を 理解する作業にもなります。
語ることや 書く作業を通して、 再統合が進むに従い、
傷や呪縛から 次第に自由になり、 主体性とコントロールを 取り戻していきます。
深刻なケースほど この作業が求められます。
しかし それにはある程度、 自分をコントロールできる 必要があります。
過去に向き合うのは、 パンドラの匣(はこ)を 開けるようなもので、
体験が深刻であるほど 一時的に不安定になり、
自傷や自殺企図を 誘発する危険もあります。
外来治療では リスクや時間的制限のため、
この領域に踏み込むことには 慎重にならざるを得ません。
でもそれは 火種を抱えたまま、
ごまかしてどうにか バランスを取っていることです。
治療だけでなく、 宗教, 社会奉仕, 芸術的自己表現などによって、
それを克服していく人もいます。
どういう方法でも、 自分の人生に 意味を取り戻し、
再統合を成し遂げていくことです。
〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
(次の記事に続く)