医療マーケティングの片隅から

医療ライター・医療系定性調査インタビューアーとして活動しています。独立30年を機に改題しました。

がんの「再発」を本人に伝えますか?

2015年09月14日 | 「がん」について

長尾和宏医師の著書「抗がん剤10の“やめどき”」から、印象的なメッセージを勝手にご紹介する第2弾です。前回分は→こちら

以下、本文より引用。

 

がん告知を本人に行うことが当たり前になってもう久しいが、再発したことを伝えないでほしいと申し出てくるご家族は意外に多い。

                                     -長尾和宏「「抗がん剤10の『やめどき』」(ブックマン社)→Amazon

 

正直なところ、「へぇ、そうなのか…。」という印象でした。
おそらく、がんの専門病院や大学病院などでは、再発を伝えるのは当たり前に行われていると思うので。
当然、長尾医師も「告知」するというスタンスです。ですが、家族の反対に遭うことが多い、というわけです。

たしかに高齢の親に再発となると伝えるかどうか、家族としてはつらいところですよね。
避けて通れるなら、できれば避けて通りたいと思うと思います。 

ただ、周囲の人が口裏を合わせてすべてウソをついてごまかすのは、どんなに名優ぞろいでもやっぱり会話がかなり不自然なものになるんじゃないかと想像できます。

微妙な空気のなかで本人はうすうす自分の病状をわかっていても、家族の手前本音をいうことができなくなるし、おたがい不幸な関係のように思えます。
がん診療に携わる医療者の取材でも、よかれと思った「隠しごと」から深刻な溝ができることがあるという話をよく耳にします。
長尾医師もそのような観点で、家族に「再発をお父さんに告げた方がいいと思う」と提案しました。ところが、逆上した家族が「もし勝手に本当のことをお父さんに言ったら、私たちは先生を許しません」とか「訴えます!」とか言うわけです。

 

私に暴言を投げかけてくるのは常に患者さんご本人ではなく、ご家族である。それが、愛だと思っている。しかし本人に本当のことを伝えずに、人生の大切な選択肢を隠し通すことが愛と言い切れるのか。(中略)愛とは、本人が知る権利を奪うことなのか。 (-同上)

 

わたしの親だったら、おそらく「知る権利」が奪われるのはとてもつらいことで、後で知ったらむちゃくちゃ怒るだろうと思います。
とはいえ、初発ではなくて「再発」となると、本人も家族も精神的にはきついです。伝えたところで「言いっぱなし」というわけにはいきません。実際のところ、親と同居とか、近くに住んでいて常に精神的サポートができる環境にあるかどうかでも違うと思います。

家族としてどう患者さん(特に親)に向き合えばいいか、改めて考えさせられました。

ところで、長尾医師はこの本のなかで、「再発は抗がん剤のやめどきを考える一つのタイミングかもしれない」と述べておられます。
でも、これは高齢の患者さんに限るならともかく、若年の方も含めてがん患者全体にあてはめるのはちょっと無理があるのではないかと思いました。
がん種にもよるのでしょうが、わたしが取材などでお会いしてきた40~50代の方々には、再発や再再発でもめげずにその都度化学療法をクリアし、職場に復帰して元気に活躍しておられる方がいらっしゃるからです。
「再発」だからといって、すぐにあきらめる必要はないと思います。

 

Photo by 酩酊カメラマン ラクーン関根さん

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★中保の最近の仕事については、有限会社ウエル・ビーのホームページFacebookページをご覧ください。


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