蛾遊庵徒然草

おこがましくもかの兼好法師にならい、暇にまかせて日頃感じたよしなし事を何方様かのお目に止まればと書きしるしました。

「イスラム国」日本人人質殺害事件に思うよしなし

2015-01-26 23:44:32 | 時事所感
2015.1.26

 「イスラム国」に拘束されていた二人の日本人のうち、先ず湯川遥菜さんが殺された。そしてその湯川さんを助けようとして、イスラム国の支配地域に入っていったフリージャーナリストの後藤健二さんもまた、拘束されその生命がさらされている。
 後藤さんは、自分が助かるためには、日本政府に「ヨルダンで50人もの死傷者をだした爆弾テロの実行犯として逮捕され死刑判決を受け収監中の女囚を釈放するよう」圧力をかけてくれとインターネットの画像で主張している。

 私は、この事件になんともいえない違和感をもつ。
 先ず、第一に、湯川さんは、危険だといわれるシリアだか、イスラム国だかへどうして行ったのか。車の中で、不慣れな手つきで銃を手にして、いささか得意げなポーズの動画を垣間見た。まるで子どもが戦争ごっこでもたのしんでいるかのような表情に、私には見えた。
 
そして案の定、戦闘状況に遭遇し、イスラム国に立ち向かう戦闘員の一人として拘束されたようだ。いわば戦闘の結果、捕虜になったものらしい。
 そうであれば、こんな戦闘には戦争捕虜に関するジュネーブ協定の適用がされるはずも無く、後は殺されるも生かされるも敵側「イスラム国」の思うままということだろう。

他方の後藤さんは、現地でふとしたことから親しくなった、この湯川さんの行方不明の消息を尋ねるべく、敢えて渦中のイスラム国の中へ入っていったのだ。
 後藤さんは、出発前にわざわざ自らの動画を撮影し、その中で、「これから自分がすることは、全部自分の責任である」と明言している。

 そして、日ごろ、行動を共にしている現地人のガイドに同行を求めたが、危険だから無理だと断られ、結果別のガイドを頼んだところ、このガイドに騙されて、イスラム国に拘束される羽目になったようだ。

 出発前には、「これから私の身に起こることは、全て自分の責任である」と明言した彼が、いざ拘束されて自らの命がまな板の上にのせられたとなったら、何故「日本政府に圧力をかけてくれ」なんてことを言うのだろうか…。
 自己責任だというのなら、こんなことは口が避けても云えないはずではないのか…。

 生きた人間の首を、未を殺すかのように喉首を掻っ切るやり方は、平時の社会にあっては残酷きわまりない。だが、戦争、戦闘、殺し合いの場となれば、そこでどんな残酷なことが行われても、それをどう評したところで意味はないのではないか。
 
 先の太平洋戦争での原爆の惨禍はどうだ。とてもナイフの比ではなかったではないか。
 私には、湯川さんの死は、死者に鞭打つようだが、勝手に自ら望んでの運命の死としか思えない。
 そして後藤さんについては、自己責任だと明言したのであれば、最後まで自らの宣言に殉じるべきではと思うのだが…。

 要は個人の自由な意思による行動であっても日本国籍を離脱しないかぎり、紛争地域に自ら望んでいくことは、結局、一旦事が起きれば、その尻拭いを国家にさせることになることを肝に銘じてもらいたいものである。
 
ー追記ー

 上記は、後藤さんのインターネット画像での音声が、後藤さんのものであるらしいとの政府発表を前提に記したものであります。
 万一、本人のものではなく合成された音声等で、本人の意思によらないものであったと判明した場合には、深くお詫びして本文を削除します。

 後藤さんについて報じられている日ごろのご活躍ぶりからは、とてもこのような発言を自らの意思として云われる方ではないようにも拝察されるのですが、事実とすれば真に残念に思います。

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