あと10分で京都に着く。
新幹線のスピードに、
頭の中に張り付いていた、周りを気にする自分が
びゅんびゅん振り落とされていく。
何だか、懐かしい。
あと10分で京都に着く。
新幹線のスピードに、
頭の中に張り付いていた、周りを気にする自分が
びゅんびゅん振り落とされていく。
何だか、懐かしい。
逆流していく。
1時間前に帰った道、
同じ道なのに
1時間後に再び行くこの道は、一人旅の旅路なのだ。
そう、今朝、通勤電車に揺られながら
京都に行くことを決めた。
振替休暇を使うなら、明日だ。
旅に出るタイミングを逃してはいけない。
仕事の期限の隙間
宿や新幹線の費用は安く済むか
今日は定時に上がれるか
旅支度に帰って新幹線に間に合うか
明日の天気
体力
旅に出たい気持ち
これらが揃ったのだ。
行くしかない。
というわけで、今、のぞみに乗って一路京都を目指している。
朝一番に、上司へ明日の振替休暇取得の許可をもらい
昼休みに駅まで行き、明日の帰りの新幹線を「ぷらっとこだま」の安いチケットでとり
とにかく日中は豪速球で今日中にやらねばならない仕事をやり
17時15分頃には会社を出た。
出られるものなのだな、と改めて思った。
私は仕事中に感情が揺れすぎる。
カチンときたことを表に出すのを、今日はやめた。
そんなエネルギーを使う暇はなかった。
いつもなら、引かない場面であっさり引いた。
いつもなら、相手の言い間違いを正すところを流した。
それだけで、一番済ませたいことが時間内に済んだ。
19時前に自宅に着き、着替えてから
携帯の充電器と、化粧道具と、替えの下着をカバンに入れて
夕ご飯を食べて、靴をスニーカーに履き替えて家を出た。
自転車で風を切り走るなだらかな下り坂
自由の風に黒いカーディガンの裾がなびく。
旅立ちにワクワクしながら自転車をこいでいる途中、
もし、今たとえ死んでしまっても
多分後悔しないな、と思った。
…いや、そんなのぜったい嫌だけど。
でも、行きたい時に好きな場所に行く
心のままに動くって、なんて満たされるんだろうと思った。
現実と折り合いをつけながらも
自分の心に素直に生きるのが、幸せのもとなんだと。
好きな人に好きと言い
行きたいところに行き
やりたいことをやって
全てのものに感謝する
そんな人生の旅路をいきたいと思った。
ああ、心に風が吹いている。
自由という名の風が吹いている。
些細なことのようだけど
私が私の為だけに用意した贅沢な時間だ。
心のままに、ありのままに
明日一日だけだけど、
思いつくまま、好きなように過ごそう。