道楽ねずみ

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オペラTOSCA(新国立劇場)

2015年11月30日 | オペラ道楽

新国立劇場にオペラ・TOSCAを見に行きました。

この演目は、比較的初心者向けとも言われていますが、実は私は初めて見に行ったのです。

1994年12月にドレスデンのゼンパーオペラで見ようと思っていたのですが、チケット待ちで行列している途中に身体の調子が悪くなり、そのまま帰ってしまったことがありました。

今回、とうとうトスカを見ることができました。

 

新国立劇場がトスカを上演するのは、2000年、2002年に引き続き3回目ということです。既に実績のある演出ですが、なかなか豪華な舞台セットです。今風の演出ですと、スクリーンを多用して、簡素なセットで済ますことも多いような気がしますが、今回は珍しく豪華な舞台です。

第1幕の最後の舞台となる、テ・デウムの行われる教会は、教皇と思わしき人物が出てきますし、ヴァチカンにいるスイス人傭兵(黄色と青色の特徴的な制服でわかります。)まで登場します。教会の祭壇には、通常の90度に交わった十字架ではない、斜めに交わった×型の十字架に張り付けられたキリストの姿も描かれていますし、クーポラまで設けられています(これはだまし絵でしょうか。)。

第2幕の舞台ファルネーゼ宮にも、カヴァラドッシならぬカラヴァッジョの「勝ち誇るキューピッド」(ベルリンのGemäldegalerieにあります。)風の絵まで描かれています。

そして、第3幕は言うまでもなくサンタンジェロ城です。

いずれも安普請のセットではなく、本格的なセットで、今では却って目新しく見えます。

 

そして、このオペラの出来不出来は、なんといってもトスカ役の歌手の歌いに多くの部分を支配されますが、今回の マリア・ホセ・シーリはとても素晴らしかったです。第1幕目のカヴァラドッシの行動に不信を抱き、嫉妬を抱く場面から、第2幕目の有名な「歌に生き、恋に生き」の歌や第3幕目のサンタンジェロ城から身を投げる場面まで、歌も演技もとてもよかったと思います。

新国立劇場の会報誌によれば、第2幕目でこのオペラで最も注目される「歌に行き、恋に行き」を歌い終わった後、たまたまナイフを見つけ、それでスカルピアを衝動的にさしてしまう場面を演じるのは、歌手にとってとても大変で、中距離を全力疾走した後に、休まずに太極拳をするようなものとのこと。

その大変な歌と演技を見事にこなされていたと思います。

憎まれ役のスカルピア役の歌手も、歌も演技もよかったと思います。

 

大満足のオペラでした。11月末のバタバタとした時期に、しかも天候のいい日であったにもかかわらず、日中から暗いオペラハウスに入った甲斐もありました。

2015年最後のオペラ鑑賞にふさわしいいいオペラでした。

 

ただ、オペラ自体はよかったのですが、ブラボーおじさんには閉口しました。

カヴァラドッシ役の歌手の歌いの場面で、まだ歌いきっておらず、余韻も残っているにもかかわらず、我先にブラボーと叫ぶのはやめてもらいたいものです。賞賛を伝えたいのではなく、単に自分が一番先にブラボーと叫びたいだけで、列車が到着すると降りる人も構わずに真っ先に乗り込もうとする子供と変わらないような気がするのですが。

 

【スタッフ】

指揮  エイヴィン・グルベルグ・イェンセン

演出  アントネッロ・マダウ=ディアツ

美術  川口直次

衣裳  ピエール・ルチアーノ・カヴァッロッティ

照明  奥畑康夫

再演演出  田口道子

舞台監督  斉藤美穂

 

【キャスト】

トスカ  マリア・ホセ・シーリ
カヴァラドッシ  ホルヘ・デ・レオン

スカルピア  ロベルト・フロンターリ

アンジェロッティ  大沼 徹

スポレッタ  松浦 健

シャルローネ  大塚博章

堂守  志村文彦

看守  秋本 健

羊飼い  前川依子

合唱指揮  三澤洋史

合唱  新国立劇場合唱団

児童合唱  TOKYO FM 少年合唱団

管弦楽  東京フィルハーモニー交響楽団

芸術監督  飯守 泰次郎

 

【あらすじ】 

(第1幕)

共和政治が崩壊し、旧王制派の警視総監スカルピアの恐怖政治が行われている1800年のローマ。共和派で画家のカヴァラドッシが教会でマリア像を描いていると、捕らえられていた共和派のアンジェロッティが脱獄して逃げてくる。カヴァラドッシは仲間との再会を喜ぶが、恋人のトスカが来るので、慌てて彼を礼拝堂に隠す。話し声に不審がるトスカは、描きかけのマリア像が侯爵夫人にそっくりなことに嫉妬するが、彼の愛がゆるぎないことがわかり、安心して教会を去る。カヴァラドッシらが隠れ家に向うと、スカルピアが教会にやってくる。脱獄犯をかくまった証拠をつかんだスカルピアは、嫉妬深いトスカの性格を利用して2人の行方を突きとめようとする。

(第2幕)

捕らえられたのはカヴァラドッシのみ。アンジェロッティについて白を切る彼は、拷問部屋へ連れていかれる。拷問を受ける彼のうめき声を聞いたトスカは、たまらずアンジェロッティの居場所を白状してしまう。それでもカヴァラドッシは死刑囚として連れられてしまう。彼を助けてほしいとトスカが懇願すると、スカルピアは、代わりにトスカ自身を要求。トスカは泣く泣く受け入れる。スカルピアは、形だけは死刑執行しなければならないので空砲で銃殺刑を行う、と説明する。納得したトスカは出国のための通行証書を要求。書き終えたスカルピアがトスカを抱こうとしたとき、「これがトスカの口づけよ」とトスカはナイフでスカルピアを刺し、部屋を去る。

(第3幕)

牢獄のカヴァラドッシのもとにトスカが面会に行き、これまでと今後のことを説明。そして死刑執行のときを迎える。銃声が鳴り響き、地面に崩れ落ちるカヴァラドッシ。トスカが駆け寄ると、彼の命は尽きていた。そのときスカルピア殺害も発覚。兵士たちに取り囲まれたトスカは、絶望して聖アンジェロ城から身を投げる。

 

新国立劇場の中もクリスマスモードです。

 

 

 

 

こちらはオペラシティです。このクリスマスツリーも恒例です。

 

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