道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

Das Rheingold(新国立劇場・渋谷区本町)

2015年10月05日 | オペラ道楽

新国立劇場にオペラDas Rheingold(ラインの黄金)を見に行きました。

新国立の指輪といえば、2001年から2004年にかけて上演された演出が有名ですが、今回は新製作の演出です。といいましても、ゲッツ・フリードリッヒが最晩年の1996年にフィンランド国立歌劇場のために製作した演出したプロダクションということす。

 

以下は、大まかな演出の内容です。

序曲が始まる前にアルベリヒは舞台の上に登場します。

そして、ライン河を連想させるような青い光線がいくつも投影される中、幕が上がり、ラインの乙女たちが登場します。ラインの岩には、なぜか大きく人間の顔が描かれています。

最終的にアルベリヒは自己去勢をし(アルベリヒがやにわに股間を押さえる場面があります。)、ラインの黄金を奪いますが、そのラインの黄金は、球体の形をしていました。

 

その後、神々の世界に舞台が移りますが、ヴォータンは、ワルハラ城の設計図を広げて寝入っています。妻のフリッカから、その妹フライアをワルハラ城建設の請負工事の「代金」として支払うことにしたことを責められても、ヴォータンはどこ吹く風で、設計図も無造作に扱い、最初から請負工事の対価を踏み倒すつもりであること、つまり工事業者である巨人族との契約を全く守る気がなかったことがあらわされています。

巨人族が登場すると、フライアはふらふらと巨人族の方に自らの意志で歩いて向かい、巨人族のファーゾルトに対して、好意を持っているとも受け取れるような行動です。また、ドンナーはなぜかボクシングのグローブを身に着け、実際にボクシングの真似をして巨人族に立ち向かうふりをするのがとても滑稽です。

 

ヴォータンは、報酬の支払について、巨人族にラインの黄金の方に関心を向けることに成功しますが、ラインの黄金を支配しているのはアルベリヒのため、智恵の回るローゲと共に地下のニーベルハイムに向かいます。そこは、なんだがハンブルクのレーパーバーンにでもありそうないかがわしい店の受付みたいにも見えます。アルベリヒは、その受付で働いているように見えてしまうのですが・・・これは私の思い過ごしかも知れません。

ともかく、ヴォータンらは、お決まりのようにアルベリヒを騙して蛙に変身させて捕え、地上に連れ帰ります。

 

ヴォータンはアルベリヒを人質にして、身代金としてラインの黄金、隠れ頭巾、指輪の財宝を強奪しますが、その際、ヴォータンは指輪を奪い去られることに難色を示すアルベリヒの手首を槍で切り落とし、手首ごと指輪を強奪します。なんと凶悪な主神でしょう。これは神といえるのでようか。マフィア顔負けの凶悪な犯罪者でしかありません。

 

その後、財宝で人質フライアを釈放してもらいますが、台詞には「穢れのないフライア」とあるのに、ファーゾルとはズボンの股間の部分を直していますし、暗に巨人族の兄弟2人でフライアと十分に楽しんだ後であることが暗に示されています。

我儘なヴォータンがようやく渋々と指輪を渡し、取引が成立して、巨人族同士の内紛の後、ようやく神々はワルハラ城に入ります。神々がワルハラ入場の場面で、妙なダンスをしているのが特徴的です。この場では、ローゲはもうヴォータンに愛想を尽かしたのか、行動を共にしません。そういえば、ヴォータンを含めほかの神々の衣装はすべて白なのに、ローゲだけは黒いスーツに赤のアクセント付きで、衣装も異なっていました。

 

 

基本的な演出は、驚くほど伝統的でした。奇をてらうところがないというのが、今ではかえって新鮮な感じがしました。

歌手は、外国から来日した歌手がもちろん素晴らしかったですし、日本人歌手もファーゾル役の妻屋秀和を初め皆さん素晴らしいと思いました。音楽も、危なげなところも踏みとどまり、問題ないできぶりだったと思います。

ただ、これはもうワーグナーのテキストの問題ですのでどうしようもないのですが、第2場の神々のドタバタの部分がどうしても眠くなります。私も相方ねずみも周囲の観客もどうしてもこの部分はウトウトとしてしまっていたようです。

 

指揮:飯守泰次郎

演出:ゲッツ・フリードリヒ

美術・衣裳:ゴットフリート・ピルツ

照明:キンモ・ルスケラ

演出補:イェレ・エルッキラ

舞台監督:村田健輔

 

ヴォータン:ユッカ・ラジライネン

ドンナー:黒田 博

フロー:片寄純也

ローゲ:ステファン・グールド

ファーゾルト:妻屋秀和

ファフナー:クリスティアン・ヒュープナー

アルベリヒ:トーマス・ガゼリ

ミーメ:アンドレアス・コンラッド

フリッカ:シモーネ・シュレーダー

フライア:安藤赴美子

エルダ:クリスタ・マイヤー

ヴォークリンデ:増田のり子

ヴェルグンデ:池田香織

フロスヒルデ:清水華澄

 

【あらすじ】

ラインの娘たちが川で戯れていると、地下に住むニーベルング族のアルベリヒがやってくる。アルベリヒは娘たちをものにしようと必死に追いかけるが、彼女らは醜い彼をからかって逃げてしまう。激怒したアルベリヒは川底に光るものを見つける。それは娘たちが守るラインの黄金。愛を断念した者だけが黄金から指環を作ることができ、その指環を手にした者には世界を支配できるという。それを聞いたアルベリヒは愛を呪い、黄金を奪う。

神々の長ヴォータンは、巨人族のファーゾルトとファフナーの兄弟にヴァルハル城を建てさせていた。報酬に青春の女神フライアを渡す契約なのだが、ヴォータンは契約を守る気などない。この契約を提案した火の神ローゲを責めると、彼はラインの黄金の指環の話を始める。皆が聴き入り、巨人族兄弟は、報酬は指環でよい、と言い出す。ヴォータンも指環に興味を持ち、フライアを人質として兄弟に渡し、ローゲと共に地下のニーベルハイムへ行く。

地下の世界では指環の力を手に入れたアルベリヒがニーベルング族を支配し、黄金を掘り出させていた。彼はまた、弟ミーメに作らせた「隠れ頭巾」を持っていた。ヴォータンらは「隠れ頭巾」を褒めそやし、彼が蛙に化けた隙に捕まえ、財宝と指環を奪ってしまう。怒ったアルベリヒは、指環を持つものには死が訪れる、と呪いをかける。

ヴォータンは、巨人族兄弟に報酬として黄金を渡すが、彼らは「隠れ頭巾」と指環も要求。指環については渋るヴォータンだが、「指環の呪いから逃れよ。神々の黄昏が近づいている」との智の女神エルダの忠告を聞き、指環を渡す。すると兄弟は指環の奪い合いになり、ファフナーはファーゾルトを撲殺。さっそく指環の呪いがあらわれたのである。そしてヴァルハル城は完成し、神々が入城する。ラインの娘たちの嘆く声が響いている......。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿