道楽ねずみ

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Werther

2016年04月03日 | オペラ道楽

新国立劇場で上演中のオペラ、ウェルテルを見ました。

ご存じゲーテの「若きウェルテルの悩み」をもとにマスネが作曲したオペラで、実はフランス語オペラです。私も見るのは初めてです。「若きウェルテルの悩み」自体も前半は、ストラスブールで法律学を学び、帝国最高法院(Reichskammergericht )のあるWetzlarに司法修習生(Rechtsreferendar)として来ていたゲーテ自身の人妻への恋の物語がベースになっており、後半はゲーテの友人の話がベースになっているということですが、オペラ・ウェルテルの舞台もWetzlarであります。帝国最高法院は、1495年の設立で、最初はFrankfurt am Main、次にSpeyerにおかれ、しかる後にWetzlarに移っており、いずれもドイツ西部の帝国都市か自由都市にあったことになりますが、これは皇帝の影響力を薄めるべく、意図的にウィーンの宮廷から遠ざけられたことによるようです。

 

オペラのストーリーは、基本的にはゲーテの小説をもとにしていますが、小説よりもストーリーは簡略化されています。シャルロットは結婚後もウェルテルへの愛は変わりませんし、アルベールもとても紳士的です。小説よりもストーリーがそぎ落とされている分、ストーリーはひたすらウェルテルとシャルロットの愛の話ばかりです。オペラでは、シャルロットの妹ゾフィーという役が作られ、ゾフィーはウェルテルのことが好きになるのですが、ゾフィーの出てくる場面くらいしか普通の話はなく、後は悲恋の話ばかりです。

 

とてもいい上演で、主要な役柄の歌手の歌は素晴らしく、オケも良かったので、新国立劇場の上演自体はとても素晴らしいと思います。シャルロットの服が、婚姻前は鮮やかな服であったのが、婚姻後は常に喪服になっていて、シャルロットの気持ちをうまく表現しているなど、演出も興味深く思いました。

ただ、なんといっても話が暗いのです。「トリスタンとイゾルデ」とは違い、最後までウェルテルとシャルロットの恋は誰からも許されないままに終わります。それはそれで当然なのですが、そうであるならどうしてこんな暗い内容のオペラを作ったのであろうかと思ってしまいます。事実、このオペラは作曲されてから、あまりの話の暗さに上演する劇場がなく、しばらくはお蔵入りだったそうです。

 

とてもいい上演であった割には、見た後に疲れが出てしまいました。

 

スタッフ

【指揮】エマニュエル・プラッソン

【演出】ニコラ・ジョエル

【美術】エマニュエル・ファーヴル

【衣裳】カティア・デュフロ

【照明】ヴィニチオ・ケリ

【舞台監督】大仁田雅彦

 

キャスト

【ウェルテル】ディミトリー・コルチャック

【シャルロット】エレーナ・マクシモワ

【アルベール】アドリアン・エレート

【ソフィー】砂川涼子

【大法官】久保田真澄

【シュミット】村上公太

【ジョアン】森口賢二

 

【合唱指揮】三澤洋史

【合唱】新国立劇場合唱団

【児童合唱】TOKYO FM 少年合唱団

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【芸術監督】飯守泰次郎

 

あらすじ

【第1幕】7月。子供たちがクリスマス・キャロルを練習している大法官の家に、詩人ウェルテルがやってくる。彼は、舞踏会で大法官の長女シャルロットの相手を務めるために来たのだ。幼い弟妹たちと、彼らの母親代わりのシャルロットの美しい佇まいに、ウェルテルの胸がときめく。舞踏会から帰宅したウェルテルはたまらずシャルロットに愛を告白する。しかし彼女には、亡くなった母と約束した婚約者アルベールがいた。ウェルテルは絶望する。

【第2幕】9月、牧師の金婚式のため、教会に人が集まっている。結婚して3か月目のシャルロットとアルベールが教会に入る様子を、ウェルテルは遠くから眺めている。教会から出てきたアルベールに明るく振る舞うウェルテルだが、シャルロットには詰め寄り、再び愛を訴える。その思いに応えられないシャルロットは、街を離れることをウェルテルに勧め、クリスマスに再会することを約束する。ウェルテルは永遠に街を出ていくことを決意する。

【第3幕】クリスマス・イヴの夕方。ウェルテルからの手紙を何度も読み返し、彼への思いに揺れるシャルロットの前に、約束通りウェルテルが現れる。部屋にあるオシアンの詩に思いを託して朗読したウェルテルは、激しく愛を告白する。シャルロットは思わず抱かれるが、決然と別れを告げて部屋から去る。アルベールは、ウェルテルから妻宛ての手紙を見て激怒。手紙の中で彼は旅に携行する銃を望んでおり、アルベールは使用人に届けさせる。

【第4幕】シャルロットがウェルテルの家へ向かうと、拳銃自殺を図ったウェルテルが瀕死の状態で横たわっていた。ウェルテルは、君を思って死ねるのは何より幸せだと語り、シャルロットは、初めて会った時から愛していたと告白し、口づけする。子供たちが歌うクリスマス・キャロルが聴こえるなか、ウェルテルは息を引き取る。

 


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