道楽ねずみ

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カラヴァッジョ展記念講演会「カラヴァッジョの真実」(国立西洋美術館)

2016年03月12日 | 美術道楽

国立西洋美術館でカラヴァッジョ展が開催されているのに合わせて、成城大学の石鍋真澄先生により「カラヴァッジョの真実 カラヴァッジョとはどんな男だったのか」と題する記念講演会が開催されました。

 

項目としては、

1 カラヴァッジョの犯科帳

2 カラヴァッジョの剣

3 カラヴァッジョのライバル

4 カラヴァッジョの女

5 騎士カラヴァッジョ

6 カラヴァッジョはどんな男だったのか。

といった内容です。

 

最初にカラヴァッジョの年譜や逃亡の軌跡が紹介されました。カラヴァッジョがミラノを出たのは1592年、ローマに到着したのは1595年ということで、ローマに到着した時期は従来考えられていた時期より遅く、ミラノからローマまでの期間は空白の3年間があるということです。

 

1では、カラヴァッジョが殺人で追われることになった事件も含め、カラヴァッジョが関与したとしされている事件が紹介されました。カラヴァッジョは、パトロンの枢機卿を初め、当代一流の知識人と交流を持つ一方、金が入れば夕刻からは遊興仲間とつるんで酒場に繰り出し、売春宿の経営者を初めアンダーグランドの仲間とも交流を持つという両極端の交遊関係を持っていたようです。ただ、カラヴァッジョが人殺しとなった事件は、徒党を組んでの私闘で、カラヴァッジョとしてもあまり罪の意識もなかったのではないかということでした(にもかかわらず、処罰はカラヴァッジョ側に重かったようです。)。

 

カラヴァッジョを語る上で、3つのキーワードがあるそうで、それが剣、ライバル、女ということです。

2の剣に関して言えば、カラヴァッジョは剣が大好きで、相当執着もあったようで、剣の不法所持の記録が複数あるようです。カラヴァッジョの絵の中には、カピトリーニ美術館の《女占い師》、ローマのポポロ教会チェラージ礼拝堂の《聖パウロの回心》、マルタのサン・ジョヴァンニ聖堂にある《洗礼者ヨハネの斬首》のように剣の描かれたものもあるということです。もっとも剣が好きだったのはカラヴァッジョだけではないようで、ライバルのパリオーネも剣が大好きであったようです。

3のライバルということですと、上記のようにパリオーネの名前が上がります。パリオーネとは裁判闘争もしたとか。パリオーネを誹謗する詩というのを紹介されましたが、何だか放送禁止用語もあり、お下劣な感じです。ただし、この詩がカラヴァッジョの作と断定する証拠もないようです。

4の女ということであれば、カラヴァッジョがモデルとしていた娼婦に関心を示した公証人を襲撃したり、これまた娼婦の元締めと私闘の上で殺害したりと、やはりいろいろあるようです。

 

5についていえば、カラヴァッジョはその後マルタ騎士団に入りながらも、再び事件を起こして、収監され、今度は脱獄までしてしまい、騎士としての身分をはく奪されてしまいます。

 

6についていえば、同性愛者としての疑惑についても説明がありましたが、同時にタフな男としてのイメージも伝わってきました。カラヴァッジョは、絵の技法についてうんちくを垂れるような人物ではなく、いい絵であればそれ以上何の説明が必要なのかと言いそうな人物のようです。

 

予定時間を15分もオーバーし、カラヴァッジョの人生と作品をほぼ網羅した講演でした。ちょうどこの講演のあった今日、石鍋先生のカラヴァッジョ伝記集 (平凡社ライブラリー) が刊行され、こちらの本も買いましたので、読んでみたいと思います。

 


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