Zooey's Diary

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静謐な佳作「ヤコブへの手紙」

2012年01月15日 | 映画

去年、劇場で見逃した単館映画。DVDで観賞。
フィンランド・アカデミー外国語映画賞代表作品。

小さな、静かな作品です。
登場人物はたったの三人。
盲目の老牧師、刑務所から恩赦で釈放された元女囚、そして郵便配達人。
BGMも、雨だれのような静かなピアノ曲のみ。
これだけの材料で、これだけ人の心を打つことができるとは。


1970年代のフィンランドの片田舎。
白樺に囲まれた、雨漏りのする粗末な牧師館。
教会を訪れる人ももはやおらず、日曜日のミサも結婚式もない。
引退した老牧師ヤコブと外界とのつながりは、悩みを持つ人からの手紙だけ。
そこに、手紙の代読と返事の代筆の役目を担ってやってきた元終身犯レイラ。
この女が、呆れるほどにふてぶてしい。
鈍重という言葉がピッタリの体格と態度で、ニコリともしない。
神も信じず人間も信じず、誰にも心を開かない。
たったひとつの仕事すらも嫌がり、牧師に来た手紙をこっそり捨ててしまうほど。
やがて牧師への手紙が届かなくなり…


「人々のために祈ることが使命だと思っていたのに。私はもう必要とされていない。」
とうなだれる牧師に
「だったら祈るのをやめればいい。自分のために祈っていただけでしょ。」
と言い放つレイラ。
なんでももう少し優しくしてあげないの!?と
観ている側には、レイラが憎らしくさえ思えます。
それでも毎日、郵便配達人が来るのを待ち続ける老牧師が悲しい。

そして奇跡が訪れる。
頑なに閉ざされたレイラの心が、ある日静かに溶かされるのです。
手紙などないのに、あるように装って読むふりをするレイラ。
しかし老牧師は、それにすぐ気がついたのでしょう。
静かに席を立とうとするが
その時レイラの口から語りだされた真実とは…

奇跡は、ただ降ってわいたのではない。
牧師ヤコブの真摯さと善良さが、頑なだったレイラの心を溶かしたのです。
そしてそれによって救われたのはレイラだけではなく、
老牧師でもあったという奇跡。
悲しい結末ですが、そこには確かな救いがあります。

低予算でも人を感動させることはできるという
見本のような映画です。

ヤコブへの手紙 http://www.alcine-terran.com/tegami/
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10 コメント

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これも ()
2012-01-16 13:42:09
去年かしら?観損ないました。
単館系映画は、かなり遅れてですが、
横浜のシネマ・ジャック&ベティで観ることにしています。
いわゆる昔の名画座なので、上映期間も短く、時間も限られてしまいます。
なので、うっかりしていて……「あ~あ」となることばかり。

低予算でも良い映画というのは確実に存在しますよね。
この映画も静謐という言葉が本当に合いそうです。

明るいヒマワリの花のごとき映画鑑賞をと思っていたのですが、
やっぱり、なかなかそうもいかない感じです。
今、観たいな~と思っている作品が既にダメ(笑)
Unknown (tona)
2012-01-16 20:00:00
人の好みもありますが、良い映画は良い映画なんですね。
過去いろいろな映画を観てきて、本当に良い映画は限られてきました。
解説が素晴らしいのでとてもよくわかります。
フィンランドの映画なんですね。どこの国にも同じような人がいるものです。
釉さま (zooey)
2012-01-16 21:19:52
丁度去年の今頃やっていたのじゃないかしら?
都内でもごく小さな映画館で
短くひっそりやっていたような気がします。
しかもこういうのってDVDになっても
レンタル屋の何処かに紛れちゃうんですよね。
あるいは取り扱ってなかったり。
私は2~3年前に見損なった「英国王給仕長に乾杯!」というチェコの映画が観たいのですが
近くのTSUTAYAにも置いてないし、
DISCUSでも取り扱ってないようなのです。

>今、観たいな~と思っている作品が既にダメ

私もあるのです、気になっているのが。
もしかしたら同じ作品かもw
tonaさま (zooey)
2012-01-16 21:22:26
はい、良い作品だと思います。
映画にさほど興味のない人にも
クリスチャンでない人にも。

フィンランドには行ったことがないのですが
北欧を訪れた時に味わった冷涼な空気、
木々の葉を揺らす風の音などが伝わってくるような画面でした。
Unknown (慕辺未行)
2012-01-17 22:32:52
こんばんは (^o^)/
森と湖に囲まれたフィンランドの片田舎・・・、そこでのストーリーを想像するだけで、心静かになれそうです。
私は真冬に訪れたのですが、夏だったらこのような風景が広がっているんだろうなぁと、思いを馳せていました。
慕辺未行さま (zooey)
2012-01-18 00:32:53
この映画には
冬のシーンは出てこないのです。
短い夏を惜しむかのようなキラキラした画面ばかり。
寂れた村の荒涼としたシーンもあったのですが
夏でさえこうなのだから
冬になったらどんなに厳しいだろうと思いました。
真冬のフィンランド、さぞ寒かったでしょうね。
Unknown (matsubara)
2012-01-18 07:52:32
フィンランドにも昨年行ったところですし、
是非見たい映画です。
でも多分暇はないので、DVDを借りて見る
ことになるでしょう。
何年かたって・・・
HP見たのですが、なるほど聞いたことのない
特殊な言語ですね。
Unknown (hiro)
2012-01-18 14:06:25
zooeyさん、こんにちは~♪
ホームページで予告編を見ました。
本当に静かで、心が洗われそうな作品ですね。
最後の方でレイラが泣いていましたが、
それはレイラのかたくなな心が溶けたから?
それとももっと悲しい結末?
最近DVDは借りていませんが、見てみたくなりました。
英語の帰りに寄ってみましょう。
matsubaraさま (zooey)
2012-01-19 00:20:15
DVDは最近出ました。
時間も75分だったか、短いし、
非常に分かりやすい映画なのでお勧めです。

スカンジナビアでも
スゥエーデン語やデンマーク語は非常に似ているが
フィンランド語だけは別格なのだと聞いたことがあります。
hiroさま (zooey)
2012-01-19 00:22:49
レイラが泣いた理由は…
是非お確かめ下さいませ。
それを言うと全ネタばれになってしまいますので。
おどろおどろしい映画も多い中で
たまにこういうのを観ると
本当に心が洗われるような気持ちになります。

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