Zooey's Diary

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「ダブル・ファンタジー」

2010年01月07日 | 
村山由香といえば、『天使の卵』『天使の梯子』などの切なくみずみずしい青春小説の書き手
というイメージを、私は持っていました。
その彼女の自伝かと思わせるような、性の遍歴を大胆に書いた「ダブル・ファンタジー」は
週刊文春連載中からたまに読んで驚いていましたが…
今回、初めて単行本でまとめて読んで、尚のこと驚いたのでした。

まず、本の装丁から凄い。
全裸の女性の横たわった姿(表紙は足だけですが、裏表紙に繋がっている)。
帯には「史上最強の官能の物語」
「ほかの男と、した?俺のかたちじゃなくなっている。」

作品の内容を、作家の私生活に短絡的に結びつける気はありませんが…
しかし、輪郭はあまりにも似ている。
この人は昔、自分の担当編集者と結婚して、鴨川でのその田園生活の様子が
よく女性雑誌などに写真入で取り上げられていたのです。
陽光溢れる海辺の土地にログハウスのような家を建て、自分の一番の理解者と
畑を耕してナチュラル・ライフを送りながら執筆活動を行うという、
ある意味、女性の憧れの姿として。
ところがこの小説の中では、その元編集者である夫の抑圧に耐えられず、
散々な葛藤の末にその家を飛び出し、次から次へと男を変えていく…
そして、その様子を生々しく克明に描いている。

「女としてまだ間に合う間に、この先どれだけ身も心も燃やし尽くせる相手に
出逢えるだろう。何回、脳みそまで蕩けるセックスができるだろう。
そのためならーそのためにだけでも、誰を裏切ろうが、傷つけようがかまわない。
そのかわり、結果はすべて自分で引き受けてみせる。」
「男は性欲が強いと”絶倫”になるのに、女は”淫乱”と言われて、
恥ずかしいこととされてしまう。どうして女の性欲は罪悪なのか?」

これを、先天性色情女の性の遍歴官能小説として捉えるか、
真摯に己を見つめた文学小説と捉えるか、評価は分かれるところでしょう。
(しかし実際この作品は、2009年中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞を
トリプル受賞している)

私としては、中々面白かった。
500ページ近くがあっという間です。
「書くことによって自分が血みどろになるとわかっていても、それでもなお書かずに
いられないという呪い」によって、文字通り身を削るようにして書いた作家の業のようなものが
感じ取れると思います。
少なくとも、渡辺淳一あたりが書く男の妄想のような女の性よりは、
はるかに身近に、現実のものとして感じられるからです。

この小説、なんと「特設サイト」まで持っている。
こちらで立ち読みができます。
『ダブル・ファンタジー』特設サイト
コメント
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