齋藤真麻理「妖怪たちの秘密基地 つくもがみの時空」読了。
百鬼夜行の本はありそうですが、付喪神に特化した本は珍しいなと手に取ってみました。船岡山が出ている、あそこって付喪神の聖地(?)だったのかと。変わっているのはこの本は妖怪図鑑みたいな本ではなく古文書をもとにどういう物語の伝播があったかを検証しているところです。付喪神の物語を扱いながら当時の人達の教養がうかがい知れます。物語は大まかに二つ系統があって、一蓮上人を下敷きにしたものと、酒呑童子を下敷きにしているものです。一蓮上人版は古道具が捨てられ恨みをはらそうと奮起する中、一蓮上人と思われる数珠の付喪神がさとす話。酒呑童子版は桜の下で優雅に歌を詠む話。玄宗皇帝と楊貴妃の歌が下敷きになっています。内容は殺伐としていますが。
平安時代の船岡山は貴族たちの遊楽地で、正月の最初の子の日には松の若木を引いて長寿を祝う行事があったそうです。狩りを行う地として整備もされたと。しかし平安末期までには都が荒れ、葬送と処刑の場になっています。
都荒れすぎです。穏やかなところに住みたいものです。
「三つの百景 川西英」を見て来ました。
川西英さんは私の好きな版画家です。「神戸百景」「新神戸百景」「兵庫百景」の三つの百景が来ていました。誤解していたのですが三つとも全部木版画だと思っていました。最初の神戸百景は木版画、新神戸百景は水彩画、兵庫百景はポスターカラーでした。新神戸百景は長いこと原画がわからなかったのですが、2017年に神戸ゆかりの美術館が受贈。兵庫百景は神戸新聞の依頼で作成、原画は神戸新聞社が持っていました…ぎゃーっ!1995年の阪神大震災で焼失したとされています。それとは別に愛好家の方が川西英に依頼して描いてもらっていたものがあり神戸市立博物館に寄贈されました。三宮駅前だったので神戸新聞社のビルが崩れていたのは覚えていますよ。映画館もあってスピードの看板がかかっていました。まざまざ。当時は川西英知りませんでしたし。愛好家の方ありがとう。
「神戸百景」に新開地の金魚池が。うるうる。これは版木も来ていました。金魚わらわらの舟が並べてあり脇の壁にも水槽が積んであり、数匹ずつ入った金魚たちが。天国のような絵でした。当時の新開地に行きたいです。残ってくれていてありがとう。