いま、季節は木の芽時だとするのが至当だけれど、色彩の残滓がそこかしこに残っているのである。
南天の葉である。
だんだら模様になっているけれど紛れも無い南天である。
難を転ずるのである。
ぼくらが子どもの頃は、便所(あえてトイレと書かないで便所である)の窓から見える位置に植えられていたものである。
赤き葉の悲しき定めに
赤き葉の一片に心ざわめく時もある
泡立つようなきみの素肌に
触れることも無く
赤き葉の孤独にきみは
ざわめかないというのか
きみの隙間に
少しだけでも場所をくれないか
失ってきた時間と時空を
必ず取り返してあげるから
赤き葉の色合いがそう言っている
日差しの和らぐ午後の孤独よ
傾く地軸のままに
磁力の移動などはありえないという
極致にあってきみは磁場を感じ
磁場を踏み倒していくというのだろうか
赤き葉の一片は
いつまでも失わないという
きみの純情の孤独だというのか
磁場と地軸の関係が
きみのすべてであると確信させたまえ
ヒイラギの赤い葉である。
縁の棘々を痛々しく思える寒さがあって、寒波が関東にまで下りて来ているのを知覚出来るのである。
これが寒さの体感である。
いっそ、潔い寒さである。
空に蹲(うずくま)るような雲があった。
その雲の周囲が、強く寒い風でぼかされたように散っている。
どこからともなくチンチョウゲの香りが漂ってきた。
蕾がひらき、香りを放っているのだ。
目を瞑(つむ)ると、きみが網膜に像を結んだ。
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荒野人
南天の葉である。
だんだら模様になっているけれど紛れも無い南天である。
難を転ずるのである。
ぼくらが子どもの頃は、便所(あえてトイレと書かないで便所である)の窓から見える位置に植えられていたものである。
赤き葉の悲しき定めに
赤き葉の一片に心ざわめく時もある
泡立つようなきみの素肌に
触れることも無く
赤き葉の孤独にきみは
ざわめかないというのか
きみの隙間に
少しだけでも場所をくれないか
失ってきた時間と時空を
必ず取り返してあげるから
赤き葉の色合いがそう言っている
日差しの和らぐ午後の孤独よ
傾く地軸のままに
磁力の移動などはありえないという
極致にあってきみは磁場を感じ
磁場を踏み倒していくというのだろうか
赤き葉の一片は
いつまでも失わないという
きみの純情の孤独だというのか
磁場と地軸の関係が
きみのすべてであると確信させたまえ
ヒイラギの赤い葉である。
縁の棘々を痛々しく思える寒さがあって、寒波が関東にまで下りて来ているのを知覚出来るのである。
これが寒さの体感である。
いっそ、潔い寒さである。
空に蹲(うずくま)るような雲があった。
その雲の周囲が、強く寒い風でぼかされたように散っている。
どこからともなくチンチョウゲの香りが漂ってきた。
蕾がひらき、香りを放っているのだ。
目を瞑(つむ)ると、きみが網膜に像を結んだ。
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荒野人
red leaves
fall again
fallは、落ちると秋を掛けたものです。
うまいですねえ。