平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

どうする家康 第22回「設楽原の戦い」~最強の強者たちの最期を謹んで見届けよ! 武田勝頼、見事なり!

2023年06月12日 | 大河ドラマ・時代劇
 織田・徳川連合軍3万。
 武田軍1万5000。
 織田は馬防柵をめぐらせて動こうとしない。
 前線にいる徳川は気が気ではない。
 武田の騎馬隊が突進して来れば、被害を受けるのは自分たちだからだ。
「織田はこれを徳川のいくさだと考えていて自分の兵を失いたくないのじゃ」
 徳川は長篠城の奥平信昌(白洲迅)も助けなくてはならない。

 戦闘の催促に行く家康(松本潤)。
 しかし、信長(岡田准一)は碁をしている。
 家康はまわりこんで武田の背後の砦を奪うことを提案。
 背後を脅かされれば武田は動かざるを得ない。
 信長はこの提案を是としたが、結局、やらされたのは家康。
 理由は家康が家臣ではないからだ。
 自分の家臣なら守るが、家臣でない徳川を守る必要はない。
 信長は、家康が家臣でないことをこうしてネチネチと弄っている。

 信長は武田と同時に徳川とも駆け引きをしているようだ。
 おそらく信長は家康が武田の後方の砦を攻める提案をしてくるのを待っていたのだろう。
 それに家康はまんまと嵌められてしまった。
 桶狭間の時といい、家康は相変わらず信長の手のひらの上で踊らされている。

 結局、家康は酒井忠次(大森南朋)の決死隊で後方の砦を落とす。
 これで武田は動かざるを得なくなった。
 定石では引く所だが、武田勝頼(真栄田郷敦)はどう判断したか?
 空を見て、
「父の好きな空の色じゃ」
「わが父ならどうすると思う?」
 信玄なら勝ち目のない、いくさをしないと家臣が答えると、
「そのとおりじゃ。だから武田信玄は天下を取れなかった」
「100の小さな勝利より、ひとつの神業じゃ」
「御旗 楯無 ご照覧あれ!」

 勝頼、「信玄超え」宣言である。
 実際、勝頼が言ったことは、一面正しい。
 具体例で言えば信長だ。
 信長は「桶狭間」で「ひとつの神業」を成し遂げて、ここまでのぼりつめた。
 人生には勝負すべき時がある。可能性が少しでもあれば捨て身で勝負すべき時がある。
 勝頼はこう考えた。
 信長はこんな勝頼にかつての自分を見たのだろう。
 撤退しない勝頼を「愚か者」と言いつつ、「あるいは……」と言葉を濁した。

 しかし、信長は勝頼よりはるかに上を行っていた。
 非情でもあった。
「わしが来たのは武田を追い払うためでも長篠を救うためでもない。
 武田を滅ぼしに来たのじゃ!」
 実際、信長は3000丁の鉄砲を用意していた。
 武田の目算では1000丁だったから実に3倍だ。
 この3倍が物を言った。1000丁だったら馬防柵を突破されていたかもしれない。
 次々と倒されていく武田の騎馬隊。
 秀吉(ムロツヨシ)は下品だ。
「面白いように死んでいく」
 信長はそんな秀吉を叱る。
「最強の強者たちの最期を謹んで見届けよ!」
「武田勝頼、見事なり!」

 勝頼にかつての自分を見た信長。
 家康は途中で腰砕けになるが、信長は自分に刃向かってくるものが大好きだ。
 ストレートに感情や意思をぶつけて来る人間の方が信用できる。
 そして主君のために命を捨てる忠実な家臣たち。
 今回で言えば、酒井忠次や山県昌景(橋本さとし)。
 こんな家臣は織田にはいない。
 秀吉を筆頭に信長の家臣たちは打算でついて来ている。
 信長は孤独なのだ。
 心許せる友もいなければ家臣もいない。

 捨て身の勝負と言えば、家康の場合、関ヶ原がそうなのであろう。
 天下分け目の決戦。
 負ければすべてを失う一か八かの大勝負。
 これを経なければ天下は獲れない。
 家康は信長、勝頼を通して、これを学んでいる。
  ……………………………………………………………

 信康(細田佳央太)は壊れつつある。
 信康はもともと虫も殺せないやさしい性格だった。
 だから、設楽原の虐殺を見て、
「これはなぶり殺しじゃ。これがいくさでございますか?」
 武勇が優れているのでいくさ場で見事な働きをするが、少しずつ心を蝕んでいる様子。

 こんな信康を見て、母・瀬名(有村架純)は何を思ったか?
 信長についていくことの危うさを思ったのかもしれない。
 その答えは次回──

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さて本日は、長篠の合戦(設楽原の戦い)!~信長の鉄砲隊と武田の最強騎馬軍団が激突する!

2023年06月11日 | 大河ドラマ・時代劇
 さあ、本日の『どうする家康』は『長篠の合戦(設楽原の戦い)』だ!
 どう描かれるのだろう?
 岡田准一さんの織田信長はいいからな。
 真栄田郷敦さん演じる武田勝頼も智将として描かれている。
 この両者の激突!
 主人公の家康(松本潤)はどう振る舞う?
 鉄砲の三段撃ちはどう描かれる?
 無敵の武田軍団VS信長の鉄砲隊。
 秀吉(ムロツヨシ)は相変わらず下品なのか?
 明智光秀(酒向芳)は相変わらず性悪なのか?
 ……………………………………………………

 以下のは大河ドラマ『風林火山』の川中島の戦いの画像。

 
 武田軍を突破してくる上杉謙信(GACKT)。

 
 迎え撃つ信玄(市川亀治郎=猿之助)。動かざること山の如し。
 どうした、猿之助さん? 自殺なんかするなよ。
 猿之助さんの信玄は素晴らしかったぞ。

 
 剣を振りおろす謙信。

 
 軍配で受けとめる信玄。

 胸が熱くなるシーンだ。
 この大河ドラマ『風林火山』が画期的だったのは、出て来るのがむさ苦しい男ばかりな所!

 ちなみに僕は武田贔屓だ。
 判官贔屓というか、武田の悲劇性は胸を打つ。
 信玄も挫折して、勝頼も挫折した。

 最後はひさしぶりに聞いてみましょう。
 大河ドラマ『風林火山』のオープニング。

 其疾如風: 其の疾きこと風の如ごとく、
 其徐如林: 其の徐かなること林の如く、
 侵掠如火: 侵掠すること火の如く、
 不動如山: 動かざること山の如し、
 中盤の転調が美しい!
 後半で武田菱の『赤』『白』『緑』『黒』の旗が立ち上がる所がカッコイイ!
 むかで衆もしっかり描かれている!
『風林火山』の頃は、いくさのシーンは平原で実際に馬を使って撮影してたんですね。
 一方、『どうする』ではCG。
 さて、どんなCGを見せてくれるか?

 それでは聴いて下さい!
 大河ドラマ『風林火山』のオープニング(YouTube)



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アニメ「推しの子」第8話~アクアが求めているのは星野アイ。有馬かな、黒川あかね、フラれる!

2023年06月09日 | コミック・アニメ・特撮
 アクア(CV大塚剛央)をめぐるふたりのヒロインたち。

 まずは天才女優の黒川あかね(CV石見舞菜香)。
 与えられた役を徹底的に分析、洞察して舞台に立つあかねは星野アイ(CV高橋李依)を演じ切る。
 これに動揺するアクア。
 しかし、アクアは自分はあかねに魅かれているのではなく、
 あかねの演じる「星野アイ」の幻影を見ていることに気づく。
 これに対するあかね。
 恋愛バラエティ『今からガチ恋始めます』の打ち上げで、
「わたしたちの交際って仕事? それとも本当のやつ?」
 とアクアに尋ねる。

 あかねとしては、返事次第では、アクアとガチ恋してもいいと思ってたのだろう。
 この揺れ動く心が魅力的!
 しかし、アクアは「俺は女優として(あかねに)興味を持っている」
 アクアにとって、あかねは星野アイを識るための手段なのだ。
 見事に星野アイを演じ切ったあかねの役者としてのスキル、役へのアプローチの仕方に興味を持っている。

 もうひとりのヒロイン・有馬かな(CV潘めぐみ)。
 かなはアクアとあかりが急接近しているので落ち着かない。
 何だかんだ言ってかなはアクアのことが好きなのだ。
 学校をサボって遊びに行こうと誘われて、
「行く!」
 この一言だけで恋愛感情を表現してしまうCV潘めぐみさん上手すぎる!
「アクアとするのが初めて。一番最初」
 などとドキッとする発言をするが、実はキャッチボールのこと。笑
 有馬かなの心も揺れ動いている。
 だが、アクアはこんなかなのことを
「ウソや打算でなくムダな会話のできる相手」と評した。
 ビミョーですね……。
 つまり友だちってこと?

 というわけで、アクアは黒川あかねも有馬かなもフッてしまったわけだ。
 なぜかというと、アクアの中には星野アイがいるから。
 アクアは星野アイの幻影を捨てられないかぎり前に進めない。
 だから星野アイの本当の姿を追い求めている。

 一方、星野アイの幻影を捨てた時、アクアの心はあかねやかなに傾く可能性がある。
『今ガチ』で告白してキスしたこともあり、現在アクアとあかねはビジネス上の恋人同士だ。
 MEMちょ(CV大久保瑠美)が言うように「ウソが本当になる」こともある。
 有馬かなは「ウソや打算もなくムダな会話のできる友だち」だが、友だちから恋人になることも!

 なんだ、この三角関係!?
 いや、星野アイも入れれば四角関係!
『推しの子』は表面上はミステリー仕立ての芸能ドラマですが、実は恋愛ドラマなんですね。

 次回からMEMちょも加入して、アイドルグループ新生『B小町』も始動しそうだ!


※関連動画
 【推しの子】ノンクレジットオープニング|YOASOBI「アイドル」(YouTube)

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OUT OF 48~『脱・秋元康』ということで期待したが、どんどんマイナスイメージになっていく……

2023年06月07日 | アイドル
 OUT OF 48
 オーディションでAKB48から24名、一般から24名が選ばれて
 新しいグループをつくるプロジェクトだ。

 方向性としては──
①秋元康がプロデュースしない。楽曲にも関わらない。
 プロデューサーはIT企業blowoutのCEO一ノ宮佑貴氏。
 インタビューに拠ると、
「ITビジネスでグローバルに戦っていくことは正直難しいと感じていました。
 一方で、アニメ・マンガ・KPOPを始めとして、アジア発のコンテンツは、まだまだグローバルで戦える可能性があると実感しています」
 という理由で音楽レーベルを立ち上げた。
 これまでのプロデュースは4人組アイドルグループNELN(ネルン)。
 そして、解散したラストアイドルの新章として「新ラストアイドル」のオーディションも開始した。

②グループカラーは「ガーリー・ポップ×ダンスナンバー」
 要はK-POPふうのガールズグループをつくるってことか?
 デモで披露されたデビューの表題曲はまさにK-POP。
 秋元康にK-POPふうの楽曲はつくれないからな……。

③オーディションを通過したAKBの主要メンバーは──
 浅井七海・小栗有以・倉野尾成美・迫由芽実・佐藤綺星・下尾みう・千葉恵里・福岡聖菜・山内瑞葵ら(敬称略)。
 先日、チーム分けがおこなわれ、
 小栗有以、倉野尾成美、迫由芽実、佐藤綺星、下尾みう、山内瑞葵がチームリーダーになった。

④オーディションを通過した一般からのメンバーは──
 古山菜々美、中森美琴、陳佐沙(ちぇん・さしゃ)ら(敬称略)。
 古山菜々美は名門・三重高校ダンス部出身。
 陳佐沙は歌が上手い。
 中森美琴は福岡のリアル双子ユニット「みこおね」のひとり。
 古山菜々美と中森美琴はチームリーダーを務めている。
 ………………………………………………………………………

 さて、どうなる? このプロジェクト?

『脱・秋元康』ということで期待したが、
 ダンスグループ・K-POPラインを目指すという点ではグループカラーが新しくない。
 それならすでにNiziUがいるし、実力ならNiziUがはるかに上を行っている。
 オーディションバトルもNiziUの方がずっとハードだ。
 韓国での6ヶ月のレッスンとテストミッションもあった。
 テストミッションのために豪華なセットも作った。
 豪華なセットを作ったのはメンバーが衣裳を着てパフォーマンスした時にどのようにカメラに映るかをチェックするためだ。
 一方、OUT OF 48はじゃんけんでメンバーを決めたり、結構ゆるい。
 オーディション会場はAKBのレッスンルームだし、衣裳は個人のレッスン着だし……。

 期待したいのは、
・AKBメンバーと一般メンバーが混じり合って、どんな化学反応を起こすか?
・小栗有以、下尾みう、山内瑞葵らがチームリーダとしてどのような真価を発揮するか?
 ずっきー、がんばれ!
・AKBの17期、18期メンバーがどのように頭角をあらわすか?

 ただ現状では、『AKBプラスアルファ』という印象を拭えない。
 実際、千葉恵里や永野芹佳らが辞退を申し出た。
 千葉恵里が抜けたのか……!
 千葉恵里いはく、
「オーディションをやっていく毎に、自分の考えと違う部分が多々あったり、どうしてもOUT OF 48とAKB48での活動でどっちも中途半端になってしまうなと感じてしまったので今回は辞退という形になりました」

 さて、どうなる、OUT OF 48?
 ちなみに確認だが、
 K-POPふうダンスグループを目指すなら、ナマ歌で歌うよね?
 口パクだったら完全に見放されるぞ。
 あとは千葉恵里の辞退コメントで知ったが、
 AKB出身メンバーはAKBを辞めてゼロからスタートするのではなく兼任するらしい。
 何だ、背水の陣じゃないんだ……。

 日が経つにつれ、どんどんマイナスイメージになって来るOUT OF 48。
 オトナたちよ、やるなら、しっかりプロデュースしてくれ。
 おおっ、すごい! と思わせるプロデュースをしてくれ。
 オーディションを受けに来た少女たちは真剣なんだぞ。

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どうする家康 第21回「長篠を救え!」~決めるのはお前だ。さあさあさあ、どうする家康!

2023年06月05日 | 大河ドラマ・時代劇
 逃げてばかりのろくでなしの強右衛門♪
 今回の主役は鳥居強右衛門(岡崎体育)だった。

 田鶴、葉、糸、阿月、万──
 ひとりの人物に着目して歴史を描いていく本作。
 特に今までスポットライトの当たらなかった人物を描いているのがいい。
 強右衛門もまさか2023年の大河ドラマで自分が注目されるとは思っていなかっただろう。

 さて、強右衛門。
 逃げてばかりのろくでなしの男ががんばった。
「来ん! 徳川様は助けに来ん! わしらは見限られた!」
 しかし、最後には自分の良心とプライドに従って──
「ウソじゃ! 徳川様はすぐに参らせる! 織田様の大軍勢といっしょじゃ!
 皆の衆、持ちこたえろ! 持ちこたえるのじゃ!」

 そして殿・奥平信昌(白洲迅)と亀姫(當真あみ)のことが好きだったのだろう。
 磔にされた最期にはこんなことも……。
「殿! 殿! 徳川の姫君様はうるわしい姫君さまじゃ!
 ようごぜえましたな。大事にしなれや!
 そりゃあ、もう本当に素晴らしい姫君様じゃ!」

 奥平信昌も亀姫も強右衛門の手を握ってくれた人だったんですね。
 三人はこんなふうに繋がっている。
 三人の思いがそれぞれに伝わって来て、いいエピソードだった。

 亀姫役の當真あみさんは上手いな。
 席を立つ信長(岡田准一)に
「お怒りをお鎮め下さいませ! 父上、亀はもうわがままを申しません。
 仲直りをして下さいませ! 亀は喜んで奥平殿のもとへ喜んで参ります!」

 當真あみさん、『オールドルーキー』『城塚翡翠』で僕が注目していた若手女優さんだ。
 ……………………………………………

 そして今回のもうひとつの見せ場。

 家康(松本潤)VS 信長。

 最初は謙虚な信長。
 織田と手を切ると家康に言われて馳せ参じ、
「徳川殿、再三の求めにも関わらず遅れた由、心よりお詫びいたす」
 どうした、信長?
 信長のくせに慎ましくしよって!笑←名セリフ!
 謙虚な信長、実に新鮮だ!

 しかし信長がそんなわけないのは明らか。
 清須以来の盟約を打ち切ると言い出し、織田家の家臣になるか、織田の敵になるかを決めろと迫る。
 そして家康VS信長。
「何たる仕打ち! これはあまりにも身勝手な仕打ちぞ!」
「決めるのはお前だ! さあさあさあ、どうする家康!」笑
「お前がちっとも助けを寄こさんから!」
「俺を脅すなど許さんぞ!」

 見応えのあるバトル。芝居合戦だった。
 いくさの合戦シーンもいいが、こういう芝居合戦もいい。

 大河ドラマは通常、録画して消してしまうのだが、
 今回は強右衛門、家康VS信長、當真あみさんの見所三本立て。
 録画を残しておこう。

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「岬にて」 小松左京~この場所は「自分が宇宙の微塵に過ぎないこと」を感じさせてくれる

2023年06月03日 | 小説
 シャドウ群島──
 そこは宇宙に近い場所。人が年をとり、消えていくために来る場所だ。

 そこには中国人、西洋人、ベトナム人などの老人がいる。
 彼らは宇宙を感じるために麻薬を嗜んでいる。
 阿片を吸い、酔生夢死の状態を愉しんでいる。

 彼らはやって来た青年に人類と麻薬(植物性アルカロイド)の歴史を語る。

・酒、煙草、茶、コーヒーなどの嗜好品
・香辛料の軽い中毒症状や習慣性。香辛料を求めて世界を巡ったヨーロッパ人の渇仰。
・農業を始めたとされる中国の伝説の皇帝・炎帝(神農氏)。
 炎帝は山野のありとあらゆる植物を食べて、薬になる何百種類という植物を見つけた。
・日本の奈良に当麻寺(たいまでら)でつくられている陀羅尼助という腹薬。
・神社の神符の中に入っている大麻。
・バラモン教の覚醒剤を使った秘術。
・アメリカのインディアンのきのこ。

 これらから老人たちは青年にこんなことを語る。

「われわれの時代は、理性を過大評価しているのかもしれんな」
「吸い込んだだけで、恍惚となる香りがあることを思うと、これから先は〝古代の知恵〟である、フェロモンや向精神薬のことを、もっと考えなきゃいけないだろう。
 ──人類の幸福のために……」


 死を間近にした老人たちは宇宙を感じるために、宇宙に一番近いこの島に住み、麻薬を嗜んでいる。

「ここにすわって、風と波と、日と月と星にむかっていれば、濁った地上、汚れた人間社会よりずっと宇宙がよく見え、身近に感じられる。
 ……宇宙と、その時の流れが自分の中を貫いていくのが感じられ、自分が宇宙の微塵のひとつに過ぎず、しかも微塵であってなお宇宙の一員として宇宙と同じ変化を生きていることが感じられる……」


「問題となるのは、その中に自分が含まれ、自分の中を貫いて流れていくことを感じさせる宇宙だ。
 人間が、ずっと古代から……まだ文明を築きあげぬころから、野獣や鳥たちと一緒に感じていた、あの宇宙だ……。
 生まれ、生き、人生をきずいた上で、さらにその先に年をとって死んでいくには、宇宙の一番よく見える所で、毎日それを眺め、呼吸しなくてはならん。
 幸福な死に方というものは、次第次第に、地上の存在を消して行き、透明になって宇宙の中へ消えていくことだ……」

 ………………………………………………………

 人は死んで「宇宙の塵」となる。
 というより、人に限らず、地上のあらゆる生物がこの真理の中で生きている。

 ただ、人には理性があり、文明があり、果てしない欲望があるので、この「真理」が見えにくい。
 特に若者は生命力にあふれ、欲望がいっぱいで、人生の時間もあるので、この真理が見えにくい。
 文明社会に住む老人は年をとっても欲望に囚われ、この真理に触れることなく死んでいく。

 小松左京の「岬にて」は、すぐれた「哲学」「人生論」「文明論」「宗教論」である。
 1960年代のベトナム反戦運動の若者やヒッピーたちはLSDを吸い、宇宙を感じようとした。
 それは近代の否定。文明社会の否定。
 古代の思想に学ぶこと。
 おそらく小松左京はここから着想を得て、この作品を書いたのだろう。

 理性の上に築き上げられた文明社会は生きづらい。
 生きづらい所か、愚かな戦争までやっている。
 宇宙を感じて、もっと自然に生きていこう。

 改めて、このメッセージを噛みしめたい。

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邪馬台国はどこにあったのか?~九州から近畿に移動した「東遷説」は結構、有望だと思うのだが

2023年06月01日 | その他
 佐賀県の吉野ヶ里遺跡で「謎のエリア」発見!
 そこには邪馬台国時代のものと思われる石棺があった!
 これで邪馬台国・九州説は確定か!?

 吉野ヶ里遺跡の「謎エリア」で新発見、邪馬台国時代の石棺墓か(yahoo!ニュース)

 というわけで、邪馬台国論争。
 邪馬台国は九州にあったのか? 近畿にあったのか?
 星野之宣さんのコミック『ヤマタイカ』『宗像教授異考録』では「東遷説」が紹介されている。
 東遷説──
「九州にあった邪馬台国が東に近畿に遷都した」という説だ。

 その根拠は、拾いものの画像だが、これ。

 

 九州の地名が紀伊半島と近畿の地名に合致しているのだ。
 たとえば、
 九州の山門(やまと)郡と近畿の大和。
 九州の三潴(みずま)郡と近畿の水間郡。
 鷹取山と高取山。
 笠祇岳と笠置山。
 熊野と熊野市。

 上の図には書かれていないが、もっと細かく地図を見れば、
 阿蘇と奈良では──三輪、朝倉、上山田、池田、田原などの地名が合致する。
 日向と熊野では──高原、大野、日向、熊野、高岡、市木、鵜戸と鵜殿、串間と串本、大森岳と大森山など、これまた合致する。

 既にあるものに模して何かを造る、というのは日本史では多々あることで、
 たとえば、鎌倉の鶴岡八幡宮の源平池や上野の不忍池は「琵琶湖」を模したものだ。

 つまり近畿にやって来た邪馬台国の人々は新天地に故郷と同じ名前をつけた。
 これが「東遷説」の根拠だ。
「東遷説」では、これを『古事記』『日本書紀』に書かれた『神武東征』(=磐余彦尊が日向を発ち、奈良盆地とその周辺を統治していた長髄彦を滅ぼし、はじめて天皇の位について神武天皇になった、という逸話)に結びつけている。

 僕は星野之宣さんの『ヤマタイカ』で、これを知って、なるほど! と思った。
 未読だが、安彦良和さんも『神武』で「東遷説」を描いているらしい。
 …………………………………………………

 古代のロマンですね~。
 個人的なことですが、僕は今、生きている現在があまりもバカバカしくて、くだらなくて、遠い過去や未来のことに関心を持っています。
 だって首相の息子が首相公邸でドンチャン騒ぎですよ。
 これに比べたら、
・地球の生成
・生物の誕生・進化
・神話の時代
・AI、ロボット、量子コンピュータのつくる未来
・宇宙の誕生と消滅
 などを考えた方がよほど楽しいし、有意義。

 現在のことで一喜一憂するのに疲れました……。

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