平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「木枯らし紋次郎」~あっしにはかかわりのないことでござんす。政治闘争が終わった虚無の時代を表す名台詞!

2023年10月12日 | 大河ドラマ・時代劇
 時代劇の名作『木枯らし紋次郎』 1972年の作品である。

「あっしにはかかわりのないことでござんす」

 この紋次郎の台詞は時代を反映している。
 安保闘争、ベトナム反戦運動──60年代の熱い政治の時代が終わり、
 人々は個人の生活や豊かさを追い求めるようになった。
 社会や世界の問題に背を向け、
「あっしにはかかわりのないことでござんす」
 とつぶやく虚無感は政治闘争を捨て、オトナになった人々の思いであっただろう。

 もっとも紋次郎は「あっしにはかかわりのないこと」と突っぱねるが、
 最終的には関わって敵と戦ってしまうのだが。笑
 これが紋次郎がヒーローたる由縁なのだ。

 作品中、紋次郎はともかく歩きまわる。
 故郷はなく、放浪する。
『紋次郎』より少し前のアメリカ映画に『イージーライダー』や『明日に向かって撃て』(1970年)があるが、アウトローの放浪は当時の創作者たちの重要なモチーフだったのだろう。
 これらの作品の主人公たちに共通するのは
「自由だけどどこか生きづらい」「自分はどこに向かって歩いているのか?」
 という思いだ。
 …………………………………………………………………

 さて映像。

 動画を探したが、「これは!」というものが見つからない。
 戦闘シーンがともかくメチャクチャだったと記憶している。

 紋次郎は走り、転び、泥まみれになって格闘する。
 もみ合い、もつれ会い、ノープラン。
 混沌としていて美しくない。
 時代劇に特有の殺陣がないのだ。
 でも実際の戦闘ってこういうものなんですよね。
 殺陣の形式美の破壊、徹底したリアリズム──これこそが『木枯らし紋次郎』の真骨頂だった。

 総監督は市川崑。
 僕は戦闘シーンのメチャクチャさで、監督は深作欣二だと思っていた。

 オープニングも凝っている。
 紋次郎はともかく歩きまわる。
 さまざまな旅のティールが描かれる。
 時折、フィルムがバッサリ切られ、紋次郎の動きがコマ送りになる。
 これがカッコイイ!

 オープニングの動画はこちら。
「だれかが風の中で」上條恒彦(YouTube)
※「痛みは生きているしるし」「故郷がないと言って泣く奴は誰だ?」「このうえ何が欲しい?」
 後半にいくにつれ、歌詞がどんどん盛り上がっていく。
 紋次郎は「居場所」や「安息の地」など求めていないのだ。


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