平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

新参者 眠りの森~夢から覚めて現実を知るのは嫌だから嘘をつき続ける

2014年01月03日 | 推理・サスペンスドラマ
 上手いドラマだと思いました。

<バレーの舞台は、出演者が作り上げる壮大な嘘。
 バレリーナは幕が下りるまで嘘をつき続ける>

 このモチーフが、今回の事件の<隠喩>になっている。
 まだ見ていない方のために詳しくは書きませんが、犯人たちは最後の舞台を終えるまで、真相を隠蔽し、嘘をつき続ける。
 ある人物に最後の舞台を演じさせるために。
 作品中、「夢から覚めて現実を知るのは嫌だから嘘をつき続ける」というせりふがありましたが、これも最後に演じた演目『眠れる森の美女』の隠喩になっている。

 人間、誰しも夢から覚めることはつらいことなんですよね。
 夢から覚めて突きつけられる現実は空虚で、過酷で、残酷で、なかなか直視できない。
 だから嘘の世界に逃げ込む。
 嘘の世界は救いなのかもしれません。

 伏線の張り方も上手かった。
・普段は目立たない女の子なのに、舞台で演じると殺気を感じるほどの迫力を持つバレリーナ・浅岡未緒(石原さとみ)。
・雨の中で倒れる未緒。
・バレリーナとって必要なもの。
・交通事故。
 これらがすべて犯人たちが嘘をついた理由に繋がっている。

 そう言えば、これと同じような真相が『ビブリア古書堂の事件手帖』の中村獅童さんのエピソードでありましたね。
 中村獅童さんの場合は……。
 浅岡未緒の場合は……。

 視聴者を真相から逸らす仕掛けもありました。
 演出家の梶田(平岳大)殺し。
 そして森井靖子(大谷英子)の自殺。
 これはニューヨークで起こった事件に関わってはいるが、本筋からは少し離れた事件。
 物語を難解にするためのミスリード。

 サブエピソードは加賀恭一郎(阿部寛)と父親との葛藤の物語。
 これが今回の相棒・太田大作(柄本明)とのやりとりの中で描かれる。

 阿部寛さんは安定の加賀恭一。
 柄本明さんは猫背で、見事な老練の所轄刑事。
 石原さとみさんは美しく、穏やかで落ちついた名演技。
 贅沢な二時間半でした。


コメント (2)
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