平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

アイシテル ~海容~

2009年04月16日 | ホームドラマ
 期待どおりの作品。名作の予感。

★人物の心情、描き分けが丁寧になされている。
 例えば清貴(佐藤詩音)の死を知らされた小沢家のリアクション。
 聖子(板谷由夏)は「私がランチなんかしてたから」と自分を責めている。
 美帆子(川島海荷)は「キヨタンの食べられない激辛のカレーを作ってやる」と言いながらニンジンを切る。そしてこぼれる涙。
 秀昭(佐野史郎)は冷静に振る舞いながらひとりになるとポロリと涙。

 智也(嘉数一星)が罪を犯したことを知った野口家のリアクションもそう。
 いまだに信じられないさつき(稲森いずみ)。智也のことを信じようと思う。
 和彦(山本太郎)は智也の変化に気がつかなかったさつきを責める。会社をクビになることを気にしている。

 強い人、弱い人……リアクションで人物を描き分ける。
 見事ですね。

 この事態に弱さを見せた和彦の言い分もわかる。
 一生懸命に働いてきた結果が息子の殺人。
 「お前は何を見ていたんだ」と妻に当たりたくもなる。
 それを口に出して言うかどうかは判断の分かれる所だが。
 またその前のキャッチボールでは結構父親らしいことを言っている。
 「心配し過ぎるのが母親なんだ。だから少しは母さんに話してやれよ。そうすれば母さんだってあまり言わなくなる」
 作者は父親・和彦を完全な悪にしていない。
 和彦がああいうのも仕方がないよなと思わせる要素も入れている。

★それにしても平和な日常生活って簡単に壊れてしまうものなんですね。
 平和な日常の中に見え隠れする怖さ。
 塾をさぼった智也に言ったさつきのせりふ。
 「お父さんもお母さんも誰のためにがんばってると思うのよ」
 聖子も清隆が帰って来ない時のイライラから美帆子に言う。
 「何だ美帆子か」
 こういう何気ない言葉が実は他人に突き刺さるんですね。
 そしてこの小さな穴が堤防の決壊につながっていく。

 この作品、これからさらに大きなドラマと感情が描かれそうですね。
 日テレさんは時々こういうドラマを放送してくるから侮れない。
 「14才の母」に涙した僕としては大いに期待。

※追記
 母親・さつきと聖子の描写も見事。 
 「会える日が待ち遠しかった」と言って智也を産んだ日のことを回想するさつき。
 大人になっていく子供に嬉しくもあり悲しくもある感情を抱く聖子はこう語る。
 「7歳のキヨタンを思い切り抱き締めたいの。今の瞬間を大事にしたいの」
 行動の中にも母親の愛情が表れる。
 三軒もまわって清隆のお気に入りのジャガレンジャーの靴を買う聖子。
 塾をさぼった智也を叱りながら、短くなった智也の袖を直さなくちゃとつぶやくさつき。
 本当に丁寧な人物描写です。

※壊れた写真立てを直すさつきも心情を見事に語っていますよね。
 せりふにしなくても幸せな家族を取り戻そうとする彼女の心情がよくわかる。

※こんなモンタージュシーンがある。
 美帆子がメールを打つ。<キヨタンなんか消えちゃえばいいのに>。
 次の瞬間、隣の部屋から「いやーーーーっ!」と言う聖子の叫び声。
 聖子は刑事から清隆が遺体で発見されたことを知ったのだ。
 異質なものをぶつけて通常以上の効果を出すモンタージュの手法がこんな所にも取られています。


コメント
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