朝起きて台所の窓を開けて煙草を吸おうとしたら、右翼の街宣車がオバマが何して何とやら……と叫ぶ声が飛び込んできた。近くにある星条旗通りを走りながらがなっているみたいだけど、何故今頃とボンヤリした頭で思っている内、そうか、オバマが来日しているのかと気づく。来日するということは聞いていたけど、もう来日していたことは知らなかった。この数日間、新聞好きの俺が新聞を読んでない。ポストから新聞を取り出すものの、見出しさえ見ないで、鞄の中に突っ込むか部屋のテーブルの上にツンドク日が続いた。テレビのニュースも見てない。ちょうどつけたテレビの臨時ニュースで俳優の森繁さんが亡くなったことは偶然知ったけど、オバマが来日したことは臨時ニュースにならなかったのか?まぁ、そんなことはどうでもいい。要はこの数日俺は世間とは無関係に生きていたということ。オバマが来日しようと、森繁さんが亡くなろうと、俺は無関係に無関心に芝居のことだけしか考えてなかったということ、何をしていても芝居の台詞が頭から離れず、多分目の前で殺人事件が起きようと通りすぎて行ったことだろう。その芝居が終わった。今日で終わった。9月に再演を企画して台本の大幅な書き直しから始まった『独房、若しくは雑踏』の公演が今日で幕を閉じた。三日間4公演で観客数は180人弱と当初目指していた200人には届かなかったが、チケット代は見には来なかったけど前売り券を五枚、十枚と買ってくれた人たちも含めると目標の60万を限りなく近づいた。これで払える、店の更新料60万が何とか払える……最終公演が終わって挨拶をしている時に俺の脳裏に浮かんでいたのは極めて現実的なことだった。来場して下さった皆さん、見には来なかったけどお金だけ振り込んで下さった皆さん、ホボ日当程度のギャラで力を貸してくれたスタッフの皆さん、これで月曜日に更新料を振り込むことができます。有り難うございました。