緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

高齢者の方のフレイル・プレフレイル(老化)とがん治療

2017年12月24日 | 医療

今年10月に、可決された
第3期がん対策推進基本計画。

「ライフステージに応じた〇〇」が
がん診療のトレンドになってきました。

小児、AYA世代(思春期と若年成人:
この二つは分けてほしいという意見があります)
高齢者といった、それぞれの特徴を加味した
支援体制を持つことが医療者には求められています。

高齢者の支援を考えるときに、
加齢、老化・・はとても
大切なポイントになります。




高齢者の体が思うように動かせないとか、
老化だとかといった言葉で表されるものは、
疾病ではないため、病名はつきません。

ただ、病態名として老衰と言われていたものを
老年症候群、フレイルという状態名でよびます。



フレイルとは

加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像

(鈴木隆雄他.後期高齢者の保健事業のあり方に関する研究 )





フレイルのスクリーニング方法

5項目中、3項目以上該当するとフレイル
1~2項目該当でプレフレイルと判断

1.体重減少    :意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
2.疲れやすい   :何をするのも面倒だと週に3-4日以上感じる
3.歩行速度低下  :<1m/秒
4.握力低下    :男性<26㎏、女性<17㎏
5.身体活動量の低下:軽い運動を定期的に実施
 

これは、Lind Friedの基準を持ちいたもので、
今もよく使われるものですが、
精神・心理、社会的な側面を加味していないことから
さらに、様々な評価尺度が開発されています。

ただ、この尺度は教科書的にも知っておくべきものと
思います。

(Fried LP, J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2001)



愛知県大府市地域在住の65歳以上で、
パーキンソン病、脳血管障害、認知症の
患者を除外した4745名について、
このスクリーニングを実施したところ、
フレイルは11.3%、プレフレイルは32.8%でした。

(Shimada H, et al. J Am Med Dir Assoc. 2013)


年齢別結果は以下のグラフ
(出典;同上)


予想以上に、潜在的なフレイル状態の65歳以上の方は
多いようです。

高齢者の方が、元気そうだからと
抗がん治療を行ったところ、
思っていた以上の副作用が出てしまい、
寝たきりになって、
動けなくなってしまった・・
などということを避けるためには、
事前に、こうしたスクリーニングを実施することは
とても、大切なのではないかと思います。

街を見ても、本当に
元気なお年寄りが増えてきました。
見かけだけではなく、質的なことも見て、
元気に長生きして頂ける支援は
とても、大切です。



主な疾病別にみた年代別受療率(人口10万対)



内閣府;第1章, 第2節, 3 高齢者の健康・福祉.平成29年版高齢社会白書.2017年   
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/zenbun/s1_2_3.html



75歳以上のがん患者さん。
入院はもとより、外来通院治療患者さんも
増えてきました。

ご自分なりの生活を送りながら、
治療継続ができるよう
緩和ケアチームも意識していきたいと思います。


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