緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

ゆく年くる年の孫の救出作戦

2020年01月05日 | 家族
年末。
次男一家に続き、
長男一家にも子どもが生まれる予定でした。

陣痛が始まり、入院。
でも、そこから4日間微弱陣痛が続きました。

異常です。



医師は、異常を感じたら、
なぜ、その現象が起きているか、
病態または病名を念頭に
鑑別診断を行っていきます。

ところが・・
微弱だから、強くすればよいと考えてしまったとしたら・・






私も30年前に長男を出産する際、
頭が下がってこないという経験をしていました。
その時、38週くらいだったでしょうか。
当時の私の外来主治医は
X線計測法で
自然分娩がかなり厳しい可能性があることについて説明し、
帝王切開になる場合について
事前に話し合うことができていました。

近年では、網羅的なX線計測は
帝王切開の症例数が増えてしまって
科学的根拠としては弱いと言われていますが、

何らかの異常、問題が起こった時には、
その後の見通しを立てるためにも
リスク以上のベネフィット(利益)があるものです。

また、分娩が始まった後であれば、
超音波で胎児の頭の位置が確認できます。
止まっている位置、
頭の向きといった情報から
異常の発見につながっていきます。



このような異常の原因探求をすることなく、
むやみに陣痛誘発を行えば、
事故につながってしまう場合があります。

つっかかっているのに、

押しだけを強くしたら・・・・




20年前の留学時代
友人がアメリカで出産した際に、
3日間がかりの出産となり、
赤ちゃんに低酸素脳症から
後遺症を残したという
記憶がありました。

その時、アメリカの病院の主治医は
何度も帝王切開を提案したそうなのですが、
友人は帝王切開はいやだと
言い続けた結果だったと聞きました。
でも、友人は陣痛でへとへとになっていたため、
何を聞かれ、何を判断し伝えたかもわからない状態だったとも
話してくれました。

出産から話が逸れますが、
いくら自己決定が重要といっても、
真なる決定なのか・・
医療者も家族も慎重に共に決定プロセスを歩むべき
という私の信念につながった出来事でもありました。








長男とやり取りをしながら、
そんな過去のことがよみがえりました。

もう、良好な出産の限界と感じ、
そこから、大学病院への転院・・
といっても、お嫁さんの里帰り出産でしたので、
その近くの大学病院への
転院に切り替えてもらえるべく、
働きかけを行っていきました。

大学病院にお願いしたのは、
出産だけではなく、
新生児ケアも想定していたからでした。





入院先の医師の了解のもと、
転院し、
すぐに超音波にて確認され、
回旋異常があり、
それによる遷延分娩であったことがわかりました。



赤ちゃんは生まれてくるときに、
回りながら進んできます。

学生だった時に、
いやというほど、
右手を使いながら、
第4回旋までを覚えます。

握りこぶしをつくって、右手を赤ちゃんの頭に見立てます。
手首が体です。
横向きにおいて、手首を内に曲げるのが第1回旋。
 お腹の中でぐっと顎を胸に近づけます。
まげたまま手首を上に向けて第2回旋。
 産道を下りながら、赤ちゃんは下向きになります。
そのまま手首を背屈させるのが第3回旋。
 産道から頭が出てくるとき、頭を後屈させるのです。
再び手首を横向きにして第4。
 体が出てくるときは、横向きになります。

この児の出産に際しての4つの回旋・・
驚いたことに、
我が家の子ども達が
中学受験をしたいといって購入してみた
四谷大塚の中学受験用小学校5年生の問題集に
掲載されていたことを思い出します。




それまでの経過や身体状態などから、
すぐに帝王切開となりました。



このことから、
何度も反芻しますが、
医師は、異常をキャッチしたら、
その病態の診断行い、
異常状態と予測されるリスクを鑑みて、
速やかに対処することが重要です。

年末の毎日医師が代わってしまう体制、
異常を考え対処する力、
本当に、色々なことを考えさせられました。

世襲医療機関は、人が代わると質が変わることを少なからず経験します。
評判がよい・・のが、かならずしも今の評判ではないこともあります。
医療の教育機関にいるからこそ、
ここは、医師プロフェッショナリズムとして、
心して、学生たちにメッセージを伝えていきたいと思いました。


年末年始、バタバタでしたが、
無事生まれてきてくれて
やっと肩の荷がおりたお正月でした。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ビデオ通話は遠距離を近くし... | トップ | ビタミンは体によいだけ? ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

家族」カテゴリの最新記事