緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

判事補さん、どうしてがん疼痛に麻薬は投与できると思いますか?

2009年03月10日 | 医療
判事補の方にレクチャーをする機会を頂きました。

医療事件に関与されてきた方もいらっしゃいました。
裁判官の方もいらっしゃいました。

「緩和ケアに関連する裁判に関わられた方はいらっしゃいますか?」
と、お尋ねしましたら、
「緩和ケアは、少ないです。がん分野では抗がん剤などの治療がやはり・・・」

なるほど・・やはり・・と思いつつ、
考える為の要素は沢山ありましたので、取りとめもなく、
話題、問題提供をして終わった一時間でした。




例えば・・
「なぜ、強い疼痛には、麻薬が使用できると思いますか?」という問いを
投げかけさせて頂きました。

「痛みが強いから、強い痛み止めで、しびれるような・・ちょうどよいのでは・・」
おお、鋭いです。
しびれさせるというのはちょっと違うのですが、
強い痛みだから強い痛み止めというのは、
いわゆるタイトレーションの考え方と同じです。


で、ドパミンの話をさせて頂きました。
麻薬の耐性・依存症の元凶である陶酔感は、ドパミンの過剰によるもの。
ところが、がん疼痛のような強い疼痛があると、
ドパミンが異常に減少するという脳内の異常事態がおこり、
(医療用)麻薬の投与により、除痛に至るとともに
ドパミンは、正常化する・・・

何となく、??????という表情をされていましたが、

疼痛で、脳の中は異常事態が起こっているという点には
ええ~?そうなんだ って反応してくださったように思います。

痛みは、病変がある場所、体のものだと思われるでしょうが、
脳の中にまで影響が及び異常な状況になるって、不思議ではありませんか?

しかも、(医療用)麻薬がその異常な状況を正常にするって
これも、驚き?! でしょ?!





その他、早期からの緩和ケアの意味や終末期ガイドラインの話、
治療の中止に関連した問題点などを加えました。

以前から、何人もの医療者から、
根本的に法律家と医療者はものの考え方が違うようだと聞いておりました。

一定の法則、線引き、明確化を大切にされるのだなあと感じながら、
緩和医療の個別性というところを伝えきれなかったかもしれないと
後になって、反省・・でした。
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