緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

入院前後の問診で必ずたずねておきたいこと

2014年08月11日 | 医療

入院数日後に、せん妄を起こし、
専門医の診断も受けた患者さん。




その治療薬も投与されているのですが、
昼は落ち着いていて、夜がだめなんです。
未だ、寝られていないんです・・・




緩和ケアチームへ依頼を受けている方ではありませんが、
こんな相談がありました。




せん妄の原因は?

脳転移とその照射によるものかと。。




採血データはあまり、問題ありません。
画像を見ると、脳転移は、小脳。
前頭葉だけが、随分委縮しています。
その他、胸椎に転移がありましたが、
椎体骨から脊髄へ浸潤しているほどの画像でもなく、
髄膜炎を疑うほどでもないような・・

前頭葉委縮といえば・・・




アルコールはどの位飲んでいた方?

あ・・聞いてません。






たまたま、そばにいらっしゃったので、
認知のムラと、急に話かけることになったことから、
ユマニチュードスキルを十分使いながら、
声をかけました。

マスクはとって、
目線をしっかり合わせてから、
満面の笑顔で自己紹介。




夜は、眠れますか?

いいえ、全然・・・

眠れないのは、なぜ、なんでしょう。

背中が痛いんです。
起きているときは、いいんですが・・

後ろに回って、
そこを見せていただいてもよろしいでしょうか?

お願いします。





痛みの場所は、
胸椎転移の部位に一致していました。
しっかり、会話もできます。

目線も合わせてくださり、
関係がとれたな・・と思ったところで・・




お酒はいかがですか?

やめました。

どのくらい飲んでいらっしゃったのですか?

まあね・・
そこそこ。

それは、すごいですね、お止めになられたとは!
中々難しいものです。

5合です。

毎日?

はい。

本当に、すごいです。よくおやめになられました。
いつまでお飲みでしたか?

入院する前までです。

たばこはいかがですか?

毎日40本です。

入院の前まで?

そうです。

がんばりましたねえ。

病気ではしょうがないですから。





入院した後のせん妄は、
アルコールとタバコの禁断症状。
すでに、その影響は少なくなっているようでした。
もちろん、脳の器質的なものも影響はあったでしょうが、
それは原因というより後押ししたもの位かと思います。

そして、今の不眠は、疼痛
と、診断しました。

せん妄治療薬の増量の前に、
まずは、疼痛治療が必要ですね・・と
伝えました。

入院時、アルコールとタバコは、
疾病との関連で問診するだけではなく、
入院生活に及ぼす影響や
せん妄に至る可能性をキャッチするために、
大切な情報です。

日頃の診療では、アルコールよりタバコの方が
影響が大きいように感じます。

もし、タバコを沢山吸っていた方なら、
ニコチンパッチを短期間でも使用してもらうことで、
予防していきます。

アルコール・・5合は、中々、厳しいですが、
外来から待機入院となる場合は、
入院に合わせて、減量していくことも、
事前に説明した方がよいように思います。




入院によるアルコールやタバコの中止による影響は少なくありません。
入院加療が必要と判断した患者さんの
アルコールとタバコ歴は、
積極的に聞いていきたいものです。


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