緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

片隅を見逃さない

2022年01月30日 | 医療
連日、新型コロナ感染症新規患者数が発表されては、
記録が更新されていることが取り上げられています。

5波までは、この増加と院内病床の埋まり方は平行していましたが、
6波は、院内病床はじわじわという感じでした。
それ以上に社会の滞留感が半端ないです。

ここまで、本当に一人一人我慢を重ねてきたのだと思います。
やりたいと思っても、控えたり、諦めたり・・
頑張ろうと思っても、濃厚接触者となってしまったり・・





緩和ケアチームの依頼に加えて、
私たちは病棟ヒアリングを
実施してきました。

緩和ケアチーム看護師が病棟に出向き、
オピオイドの使用状況、
がん患者さんの入院状況や
心理的な状況、
スタッフの困りごとなど
病棟看護師から聞き取りをし、
依頼を受けていない患者さんのことを
掘り起こすことを目的としています。

この病棟ヒアリング。

不用意な濃厚接触を避けるため
一時、リモートで実施してもらっていました。

ところが、報告を聴いていると
どんどん先細ってくるようになりました。

依頼に至っていない患者さん、
つまり、顔の見えない患者さんの
苦痛に関する情報交換は、
直接、病棟に出向き、
スタッフの動きや患者さんの様子を感じながら
質問を繰り替えすことが
とても重要でした。


私達が知らないことを掘り起こすとは、
病棟スタッフが気づいていないことの
気づきから始まります。

見えないことを見える化できること。
これは、大変スキルがいるものです。

対面ヒアリングとしてから、
少し情報も集まってくるようになりました。

第6波としてコロナ感染が急増し、
病棟スタッフにも感染孤発例が
報告されるようになり、
スタッフから病棟ヒアリングは
再度、リモートに戻しては
という話が出てきました。

(チームへ依頼がある患者さんは、
通常通り、対面診療を継続しています)

私は、看護師さん達に言いました。

社会的な閉塞感の中で、がん患者さんにとってはさらに、がんに向き合い、治療を行わなければならず、これは楽な時間ではありません。
どれ程のつらさを抱えて今を過ごされていることか・・想いを馳せましょう。
今だからこそ、サポートチームの手を必要としている人達に私達から歩みよる努力をしませんか。
濃厚接触の予防方法は皆熟知しているはず。
フェイスシールドをして、15分以内に留め、標準予防策はできますね。
がん診療病棟に直接足を運んで、依頼を受けてない患者さんの状況を確認ましょう。
そして、病棟の片隅の辛さを抱えた声なき声に気づくことができる医療にしていきましょう。

こんな話をしながら、
最澄の「一隅を照らす」
という言葉を思い出していました。

そして、すぐにヒアリングに
病棟に向かってくれた看護師さんに
感謝でした。



病棟や地域や、
様々な場所の片隅に、
辛いと声を挙げられないまま
そこにじっとしている人々がいます。

そうした人が、
困ったと声を上げるのを
待つだけではなく、
現場を歩き、耳を傾け、
手を必要としている人達に
気づけるよう
努めたいと思っています。

Grae DickasonによるPixabayからの画像 

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (happiness1207)
2022-01-30 22:59:43
一隅を照らす…胸にジーンと来ました。
素敵な記事をありがとうございます。
明日から頑張れる様な気持ちになれました。
返信する
Unknown (e3693)
2022-01-30 23:34:41
@happiness1207 さん

コメントに心熱くなります。
加えて、明日の活力にしていただけるなんて、心の底から嬉しさが込み上げてきます。
本当にありがとうございました!

aruga
返信する
Unknown ()
2022-01-31 20:17:32
心のこもった記事をありがとうございます!
救われます。
返信する
Unknown (e3693)
2022-01-31 22:04:56
風さん

コメント、ありがとうございます!
励みになります!!

aruga
返信する
Unknown ()
2022-01-31 23:25:54
ガンとの共存は、、
ほぼほぼこれ以上迷惑をかけたくなくて、出来れば人の為になりたい自分でいたい、そのためにはこの目の前のかたの仕事の負担にならないようにしたい、、ああ、2回を1回で済むよう、私にかかわる時間をじぶんより高齢者に。。等々。ついつい自分を押し込めてすごしがちです。
でも、じつはとっても言い出せなくなってしまって、言うタイミングも見うしなって、なげやりになってしまってたりするんです。。
自分がそうでした。
強く意思を持って、きちんとやってほしいことをお伝えするには、、うつの状態になりすぎて知らず知らずにあきらめていました。
でも今日の記事を読んで希望をもらえました!もっと柔軟になれたらいいなぁ。。自分も!と思え、またコメントさせて頂きました。ありがとうございます🙇
返信する
Unknown (e3693)
2022-01-31 23:52:50
風さん

伝えることが、どれ程エネルギーを必要とすることなのか・・改めて、今、立ち止まって感じようとしています。

心の襞を言葉にして、教えてくださったことが、どれ程、患者さんの理解に繋がって行くことか・・本当に、本当にありがとうございました。

aruga
返信する
Unknown (myochan_2006)
2022-03-21 08:41:40
拝読して涙が出ました。
今月、コロナにかかり、回復してきたところです。
私は基礎疾患もなく、家族のサポートもあり、乗り越えられましたが、一人で療養している方の不安や、基礎疾患のある方のさらなる不安を思いました。
子どもの支援をしておりますが、学校に通う子どもも、不登校の子どもも、声なき声がどれだけ沈黙のうちに沈んでいるだろうかと、そのことに考え合わせたら、涙が出ました。
どうぞお身体を労ってお仕事なさってください。
返信する
Unknown (e3693)
2022-03-22 08:39:23
@myochan_2006 さん
温かなコメント、本当にありがとうございます。
子供達の支援、大変大切な役割ですね。
共に、取り組みを続けていきましょう!

aruga
返信する

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